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 水晶剣伝説 Y セルムラードの女王


W

 いったい、なにが起こったというのだろう。
 世界が不意に、ぴたりとその動きをとめたようだった。
 無意識の動きで短剣を抜いていたレークにも、なにが起きたのか分からなかった。
 狼は……狼たちは、動かない。
 凶暴な唸り声は消え、あたりは夜の静寂に包まれていた。
 そして、
 山狼のボス……その銀色の毛皮の巨体が、そこにうずくまっている。
「な、なにが……」
 短剣を手にしたレークが振り返ると、馬上のクリミナは、その顔を蒼白にしてはいたが意識ははっきりとしているようだった。
「あ……ああ」
 くたくたとラズロが崩れ落ちた。
「おい、ラズロ……」
「あ、ああ……はい」
 呼びかけると、腰を抜かしてはいるようだったが、ラズロは無事であった。
「こりゃあ……どういうこった」
 おそるおそる、レークはそこにうずくまったまま動かない、山狼を覗き込んだ。
 狼に傷を負った様子はない。ただ、まるで従順の姿勢をとるようしてに、地面に体を伏せているのだ。
 手にしていた短剣が月明かりにきらめいた。
「まさか……こいつか」
 この剣の魔力が、もしかしたら狼たちを従わせているというのだろうか。
「そんなことが。だがそういや、これは……」
 アドから受け取った短剣の柄の部分には、妖しげな青紫の玉石がはめ込まれ、月明かりを受けて鈍く輝きを放っている。
「水晶の短剣の力、なのか……」
「レ、レークどの。いったい、なにが……」
 やっと少し落ち着いてきたのか、地面に腰をついたままラズロがこちらを見上げた。
「狼はもう動かないようですが……」
「ああ。大丈夫そうだ。ラズロ、立てよ」
「は、はい……」
 ラズロがおそるおそる立ち上がると、伏せていた山狼の顔がぴくりと動いた。眠っているわけではないらしい。
「わ、わっ……」
「大丈夫だ。声を出すな」
 それから思い切って、レークは山狼の前に短剣をかざしてみた。すると狼はなにかを感じ取ったのか、その赤い目をきらりと光らせ、レークの手にする短剣をじっと見つめた。
「やっぱり。こいつは……」
 水晶剣の魔力……それを、この狼は確かに感じ取っているのだ。
「レーク。大丈夫なの?」
 馬上からクリミナが心配そうに囁く。
「ああ、たぶんな」
 短剣を月明かりに照らすようにかざすと、レークはそれをまた、ゆっくりと山狼の顔に近づけた。
(前にアレンから聞いたことがあった。水晶剣の短剣は、昼間の太陽よりも、月明かりのもとでこそ、よりその魔力を発揮すると)
(それから……人間はもちろんだが、むしろ、その他のものたち、月の属性をもつ野生の生き物の方が、その力の影響を受けやすいと)
 水晶剣の魔力については、これまでにもアレンのそばにいて、どのようなことができるのか分かっていたし、短剣の使い方も、見よう見まねで覚えてはいた。
「……」
 レークは心の中で強い念を送りながら、山狼の目の前に短剣をかざした。
 地面に伏せていた山狼が、ぴくりと動いた。
 その毛皮が一瞬、銀色に輝いたと思うと、狼はすっと立ち上がった。そして、吠えた。
 ウオオオオォーン
 夜闇にこだまして遠吠えが響きわたる。
 すると、どうだろう……ずっと周囲を取り囲んでいた狼たちが動きだした。彼らはひとつところに集まるように列をなしてゆく。
「……」
 あっけにとられるレークとラズロの前で、山狼のボスは、くるりとその場をひと回りして見せると、それからこちらに尻尾を向け歩きだした。山狼の群れは、そのまま森の暗がりへと消えていった。
「なんだか、わからねえが、どうやら助かったようだな……」
「ええ……」
 ラズロの方は、まだいくぶん恐怖を残した青ざめた顔でうなずいた。
「いったい狼たちは、どうしたというんでしょう」
「ああ……」
 レークはこの短剣のことを話すべきかと一瞬悩んだが、水晶の魔力などといっても、にわかには信じられないだろうと言葉をつぐんだ。
「おっ……あれを見ろ」
 レークは森の先を指さした。
 やや離れた木々の間から、あの山狼のボスがこちらを振り返っていた。
「あいつ、まるで、あそこでオレたちを待っているみたいだな」
「まさか」
 ラズロは笑ったが、山狼はそこに立ち止まったままじっと動かない。その赤く光る目が闇の中からこちらを見つめている。
「ねえレーク。あの狼は、なんだか私たちに、こっちに来いと言っているみたい」
「ううむ。なんとも奇妙なこったが……よし、ちょっと試してみるか」
 馬上のクリミナにうなずきかけると、レークは山狼の方に近づいていってみた。
 すると、狼はそれを待っていたように、また森の先へと歩きだしたのである。レークが立ち止まると、すぐに狼も立ち止まって、またじっとこちらを振り返った。
「こいつは……どうも、本当にオレたちにこっちに来いっていうことのようだぜ」
 夜闇に包まれた森の中で、狼が自分たちをどこかへ案内しようとしている。それは、なんとも奇妙な、そして物語めいた話であった。
「さて、どうしたものかな」
「しかし、レークどの。さっきの狼たちの群れが待ち伏せしているということもありえますよ」
「まあ、そういうこともあるかもな」
「ここは引き返して、なんとか道を見つけて村を目指しましょう」
 ラズロの言うことはもっともであった。それが正しい判断であることは間違いない。
「……」
 闇の中で、今もまだこちらを振り返り、「ついて来い」とばかりに森の先にたたずんでいる山狼の姿を、レークは目を凝らしてじっと見つめた。
「なあ。なぜかはわからねえが……あの狼は、オレたちをどこかへ案内しているように思えるんだ」
「そんな馬鹿な。いったいどこへ?」
「それはわからねえが。だが、やつらはオレたちをここで餌食にすることもできたんだぜ。そうしなかったのはどうしてだ」
「しかし、このまま夜の森に入って迷ってしまったら、狼にやられるまでもなく野垂れ死にですよ」
「分かってる。でも……なにか、感じるんだよ」
 手にした短剣に目をやると、柄の部分にはめ込まれた宝石が、月明かりに照らされて妖しく光っている。
(この剣の魔力が本物なら……)
 水晶剣の魔力が、月と、あの狼との間でどのように関係し、作用したのかまでは分からなかったが、レークには何故だが、直感めいた確信のようなものがあった。ただ、それをラズロやクリミナにうまく説明はできなかったが。
「レーク。見て。狼が」
 クリミナが指をさす。見ると、立ち止まっていた山狼は、しびれををきらしたように、くるりと向こうを向き、また森の奥へと歩きだしたところだった。
「くそ、どうするか」
 引き返すべきか、それとも……
 レークは一瞬で決断した。
「ここは、オレに命を預けてくれ」
「分かりました」
 ラズロがうなずく。馬上のクリミナも穏やかな顔で言った。
「あなたの思うように。私はついていきます」
「ああ。じゃあ、行こう」
 狼のあとを追って、三人は森の奥へと歩きだした。
 木々に覆われた森の中に分け入ってゆくと、暗がりの中に赤く光る目があった。やはり、あの狼はこちらを待っていたのである。
「どうやら、本当にあいつはオレたちを案内するつもりらしい」
 月明かりの届かない森の暗闇を進むのは、ひどく心もとないものだったが、あの山狼はどこへゆくのだろうという好奇心が、彼らの不安を包み込んだ。
「なんてえか、すげえ奇妙な気分だな。夜の森の中を、どこへゆくともなく、狼についてゆくってのはさ」
 レークはクリミナの乗る馬の手綱をとって先頭を歩き、ラズロは馬の後ろについた。少なくとも前と後ろに用心しておけば、なにかが起きてもすぐに対処できる。
 前をゆく山狼は、ときおりこちらを振り返りつつ、森を進んでゆく。暗がりに狼が見えなくなると、レークは慌てて歩を早めた。だが狼はこちらを待つようにして、決まってその少し先で立ち止まっているのだった。
 そうして、つかず離れずの距離を保ちながら、三人は山狼について森の奥へ、奥へと入り込んでいった。もはや、ここがどのあたりなのかも、いったい自分たちがどちらの方角へ向かっているのかも分からない。ときおり、木々の間から星空が覗いて、月の位置からなんとなくの方角を推測できるが、それとても定かではない。それよりも、前をゆく狼を見失ってしまっては、もう森の中で迷う他はない。レークは銀色の毛皮を見失わないように目を凝らしながら、木々の間を歩いていった。
 森の中の勾配は少しきつくなり、山を上るような感覚になったかと思うと、またいったん下りになった。そうやって、いくつもの小さな丘を上ったり下りたりする感じであった。どちらかというと上りの方が多かったかもしれない。少しずつ高地になってきているのか、しだい空気はひんやりとしてくるようだった。
 途中、どうあっても馬では進めなさそうな、ごつごつとした狭い岩場を下る場所があり、クリミナは馬から降りた。レークは悩んだすえ、馬をここに置いてゆくことにした。この先、馬なしでどこまで歩いてゆけるのかという不安もあったが、どのみちもうここまで来てしまえば引き返せない。あとはただ、前をゆく山狼に行き先をまかせてついてゆくしかないのだ。
 山狼は相変わらず三人と一定の距離を保ちながら前をゆき、彼らが遅れると少し先で待っていた。レークたちが追いついてゆくと、またさっと足を早めて木々の向こうへどんどん進んでゆくのであった。
 どのくらいそうして歩いたのか。
 夜はとっぷりと更け、漆黒の闇はますます濃くなるばかりだった。しかし、不思議なことに暗い森の中でも、前をゆく山狼の姿を彼らが完全に見失うようなことはなかった。たとえ、いったんはその姿が見えなくなっても、たぶんそちらの方だろうと進んでゆくと、その通り、銀色の輝くような毛皮をした狼は姿を現し、再び三人の迷い人を森の奥深くへと誘ってゆくのであった。
 あとをゆくレークにも、何故かは知らないが、ここで迷ってしまい森の中で野垂れ死にするというような不安は、まったく感じられなかった。ときどき例の短剣を取り出すと、そこにはめられた青紫の玉石がまるで彼を勇気づけるかのようにうっすらと輝き、そうするとこれもまた不思議なことに、このままゆくべきだという確信めいたものが、心の中に浮かんでくるのだった。
 他の二人……クリミナとラズロにも、あるいは内心での不安はあったかもしれないが、彼らは文句も不安も口にすることなく、レークについていった。正確には、狼のあとをついてゆくレークに、ついていったのであるが。
 しかし、それはなんとも不思議な旅であった。
 黒々とした夜の森の中、ほんのかすかにときおり現れる月の明かりになぐさめられながら、銀色の毛皮の大きな狼の案内で、どこへゆくともなく導かれてゆくというのは。まるで吟遊詩人の歌う、放浪の旅人イルヴェンの物語のように。彼らは自分たちがどこへゆくのか、はたしてどこへ辿り着けるのかを知りもしなかった。そのうちに、この狼は、しだいに凶暴な獣ではなく、彼らには運命の神ジュスティニアの使いでもあるかのように感じられはじめていた。
 森の空気はひんやりと湿り気を帯び、あたりには霧がたちこめているようだった。どこかで夜泣き鳥の声が聞こえる他には、しんとした静けさに包まれた森の中を、苔むした土を踏みしめて進んでゆく。そんな幻想的な雰囲気が、恐怖ではなく、むしろ夢の中にいるかのような、ふわふわとした不思議な気分と好奇心とを彼らにもたらすようだった。
「いったい、いつまでこうして森の中をゆくのでしょう。そろそろ夜が明けてもいいくらいには歩いた気がしますが」
 さすがに歩き通しで、その顔にやや疲れの色を覗かせながらラズロが言った。
「さあてな。あの狼さんに聞いてくれ。あのどのくらいで着きますかねってな」
 冗談まじりにレークは答えた。
「それに、夜明けか……もしかしたら、オレたちはもう、夜明けの永遠に来ない森に迷い込んでいるのかもしれんぞ」
「まさか。でも、こんなに森の奥まで来てしまっては、迷わない方が不思議だわ」
 そう言うクリミナも、疲れてはいるのだろうが、さすが心身ともに鍛えた女騎士である。少なくとも、弱音や泣き言を口にしてレークをうんざりさせることはない。
「あの森狼さんが、いったいオレたちをどこへ連れてゆこうとしているのかは知らねえが、なんとなく、オレには方向はこれでいいって気がしてるんだ」
「方向って、どこへの?」
「さあな。具体的にってよりは、つまりさ、この旅自体の方角ってこった」
「まあ、なんだか詩人みたいなことを言うのね」
 クリミナはくすりと笑った。
「この旅の方角……じゃあ、いったい私たちは、これからどこへ向かうのかしら」
「どこへ向かうにしろ……ずっと一緒さ」
「……ずっと?」
「ま、まあ……しばらくは、ずっとな」
 やや照れたようにレークは言い直した。
 なだらかだった勾配が、少しずつまた急になってきた。前をゆく山狼は、さっきよりもいくぶん歩を早めているようだった。
「また丘を上るのか」
「今度のはどうも、一番上りがきついですね」
「ああ。だが見ろ、この丘の向こうに空が見えないか。星が出ている」
 木々の間に見える夜空をレークが指さした。
「きっとこの丘を上りきれば次は下りですね。それで森を抜けられればいいのですが」
「たぶん、もうちょい行けば分かるさ」
 山狼はこちらを振り返ることもなく、どんどんと身軽に丘を上ってゆく。それに遅れじと、三人も最後の気力を振り絞って歩を進めた。
 辺りはごつごつとした岩場が多くなり、それとともに木々の間から見える夜空が大きくなってきていた。ずっと暗い森の中をさまよってきた彼らには、月と星の出ている夜空はとてもありがたかった。
 大きな岩場では互いに手を貸し合い、三人は丘を上った。
「もうじきだ。もうじき丘のてっぺんだ」
 見上げると、真正面の空に月が見えた。
 丘のてっぺんの岩場に、あの山狼が立っていた。
 満月を背後に、彼はまるで、満足げにこちらを見下ろすようにしてじっと立っている。
「……」
 その赤い目がレークを見つめていた。
 銀色の毛皮を月明かりに輝かせて、まるで、早くこちらへ来いとでもいうように、山狼は胸をそらしていた。
 三人は引き寄せられるようにして、丘のてっぺんへと歩を早めた。
 風が吹いた。
 月は、ゆるやかに消えかけ、星々は暗くなった夜空に隠れはじめていた。世界は、もうじき暁のときを迎える準備をするかのように、いったんその闇を深く濃くしていた。
 丘の上の岩場に三人が辿り着くと、狼の姿は消えていた。
 気配もない。もうその役目を終えたというのか、彼はその姿を消していた。
 どこか離れた森の奥から、かすかな遠吠えが聞こえた。それが別れの挨拶であるのだと、レークは知った。
「……」
 三人はしばらく、そこに呆然と立っていた。
 東の空が白みはじめていた。
「レーク、夜が明けるわ」
一条の光が山の間から差し込み、しだいに空は明るみをましてゆく。
「ああ、アヴァリスのおでましだ」
「長い夜でしたね」
 ほっとしたようにラズロが言う。暗い森の中を一晩さまよい続けたのだ。待ち望んでいた朝の訪れに、三人は疲れた顔をほころばせてうなずきあった。
 丘の上の岩場に立ち、三人は陽光によって照らし出される、眼下の光景に目を向けた。
 目の前に広がるのは、山々に囲まれた広大な森林であった。
 四方を小高い丘と山に囲まれ、盆地のように広がる森……それは、うっそうとした不気味な森ではなく、木々の間にきらきらと光る川が流れる、美しい森であった。
「あれは、なんだ」
 川の向こうに見える、盛り上がった小山のような丘をレークは指さした。
 輝きを増してゆくアヴァリスが森を照らしだすと、それがただの丘ではないのが、はっきりと分かった。
 森に囲まれたその丘の上には、城壁やいくつもの尖塔が見えた。
「なんてこった。あれは……都市だ!」
 それは確かに、丘の上に建てられた空中都市だった。
「おお、あれがドレーヴェです」
「なんだと、あれが……」
 セルムラードの首都、謎に包まれた都市、ドレーヴェ……彼らはそれを、いま初めてその目に見ていた。
「こんな山と森に囲まれたところにあったのか」
「ええ。絵で見たことがあります。あの丘の上の都市……この光景そのままの、美しく、なんとも不思議な都市の絵でした。まさか、本当にその通りの姿をしているとは」
 ラズロもレークも、そしてクリミナも、魅せられたように、緑の森に囲まれた丘の上の都市の、その神秘的な姿を見つめていた。
「なんて、不思議な町なのかしら。山々に囲まれた森の奥の、そのまた丘の上にある空中の王国……」
 うっとりとクリミナがつぶやく。
「もしかして、あの狼は、オレたちをドレーヴェまで案内してくれたってことか」
「まさか……でも、そうかもしれない」
 不思議の念に打たれたように、クリミナも、ラズロもうなずいた。
 思えば確かに、この森の中をゆく近道でなければ、一晩でここまでは辿り着けなかったかもしれない。いったんはユドキアの村に立ち寄って、翌朝になってからドレーヴェへ向けて出発するという予定であったのだが、それよりも半日以上早く目的地に着いたことになる。
「見ろ。この丘を降りると、川の向こうまで道が続いているぞ」
「本当。あれは、きっとカイル川ね。あれの川を下るとアングランドのマイエまで続いているのだわ。こんなに山の上に上流があったのね」
「よし。行こう。川を渡れば、ドレーヴェはすぐそこだ」
 美しい空中都市の姿に心を高ぶらせて、彼らは歩き出した。
 太陽が上るにしたがって、森の中にも陽光が差し込み、夜の不気味さとはうってかわって、辺りは爽やかな気配に包まれていた。鳥たちの鳴き声を聞き、湿りけのあるひんやりとした空気をいっぱいに吸い込みながら、三人は丘をおりていった。
 丘を降りきってしばらく歩くと、さきほど上から見つけた道に出た。さすがに舗装はされてはいないが、しっかりと土が固められて、馬車が行き交えるくらいの幅がある。
「なかなかちゃんとした道じゃねえか」
「ええ。たぶん、ここを進めば、ドレーヴェまで通じているはずです」
 一晩中、闇夜の森をさまよい歩いて、心身ともに疲れてはいたが、目指す町はもうすぐとばかりに、三人は足どりを軽くした。森の中での遭難を覚悟したことを思えば、ここまで来られたことが奇跡のようにも思える。いまとなっては、あの山狼に感謝したいくらいであった。
 林の中の道を進んでゆくと、涼やかな水音とともに、にわかにふっと視界が開けた。
「おお、川だ」
 林の中をぬうようにして流れる、陽光にきらめく水面……カイル川であった。
 橋のかけられた川幅はそう広くはなく、水を覗き込んでみると、深さもさほどでもない。流れはそれなりに速かったが、橋を使わずとも渡れそうなくらいの小川であった。
「へえ、これがカイル川か。オレはアングランドにも行ったことはあるが、もっと大きな川だったがな」
「ここは、カイル川でも、きっとだいぶ上流の方なのね」
 クリミナは川の水を手ですくい、それを口にした。
「わ、すごく冷たい。それにとってもきれいな水だわ」
「どれどれ」
 レークとラズロも、透き通ったカイル川の水をすくって飲んだ。冷たく清涼な水が喉をうるおすと、生き返るような心地だった。
「水も美味いし、空気も美味い。いいところだなセルムラードってのは」
 冷たい水で顔を洗い、すっきりとした気分になると、三人は橋を渡って、また林の間の道を歩きだした。
 しばらくゆくと、道はやがてゆるやかな上りになった。
 木々の向こうには、丘の上にそびえる都市の姿が見え始めている。もはや彼らをさえぎるものはなにもなく、森の中で迷う心配もない。目的地である空中都市を視界に入れながら緑に包まれた道を歩いてゆくのは、なかなか楽しいものだった。
 梢では鳥たちがさえずり、ふと木々の向こうを見ると、鹿の親子が草をはんでいる。高地特有のひんやりとした朝の空気が心地よい。山々の向こうから流れてくる雲は、手の届きそうなくらいの高さで、その形を変えながら、また頭上をゆるやかに流れてゆく。
「なんだか、そのへんの草の上に寝そべって、ひと寝入りしたいくらいだな」
「そうですねえ。そうしましょうか」
「まあ、二人とも。私たちはとても大切な任務をウィルラースさまから任されたのだということを忘れてはダメよ」
 そう言うクリミナにしても、この美しい森と清涼な空気の中をゆくのは、とても楽しそうであった。トレミリアを出発したときよりも、今の彼女はずっと輝いていたし、まるで自身が鹿であるように、生き生きとした目で周囲の景色を見渡していた。
 さらに進むと、ゆるやかな上りの道はしだいに広くなってきた。土の上には馬車の車輪あとが見え始め、人間のいる気配が感じられるようになった。いよいよ都市へと続く丘が近づいてきたとみて、三人が歩を早めたとき。
 背後から馬蹄の音が聞こえてきた。
 振り返ると、彼らが通ってきた道の先に、いくつもの馬影が現れた。
「ありゃ、なんだ?」
「どうも兵士のようですね。腰に剣を差している」
 ラズロは眉を寄せた。
「どうします。隠れますか?」
「いや。もう遅いな。向こうはオレたちに気づいているようだ」
「レーク」
 不安そうにクリミナがそばに寄ってきた。
「まあ大丈夫だろう。少なくとも、ジャリア兵ではないことは確かだしな」
 そう言っている間にも、騎馬の一隊はすぐそこまで迫ってきていた。馬蹄の響きとともに、一隊が彼らの目の前に来たとき、別の意味で三人は驚くことになった。
「ありゃあ……」
 レークは思わず声を上げていた。
「こ、こいつらはいったい……」
 ラズロは目を丸くして、近づいてきた馬上の兵士を見つめた。
 騎馬の一隊が三人を取り囲んだ。全部で六騎。みな剣を腰に差した騎士である。
 そのうちの一人が馬上から声をかけてきた。
「お前たち。このあたりのものではないな?ここでなにをしている」
「……」
 レークはごくりとつばを飲み込んだ。
 この騎士たちがいったいどんな立場のものなのか、ここをどう切り抜けたらいいのか、それもそうだが……それよりも、ただあっけにとられていた。
「どうした。口がきけぬのか」
「いや……なんというか」
 レークは口ごもりながら、周りを取り囲んだ騎士たちを見回した。
「あんたらは、その……」
 騎士たちが身につけているのは革の胸当てと、おそらくそれも革でできている短いスカート……それだけであった。手足はむき出しで、それぞれが腕輪をしたりサンダルを履いたりはしているが、基本的には胸元から上は白い肌が見え、それがひどくなまめいた様子だった。そう、その騎士たちは全員が女性であった!
「女……女の騎士」
 目のやり場に困りながらつぶやいたレークに、この隊のリーダー格らしいその一人が、せせら笑うように言った。
「ふん。それがどうした」
 それぞれ銀色の髪のものや、薄い金髪のものもいたが、みな肌は雪のように白く、そして誰もが、ややきつめの顔だちの美女であった。緑色の宝石が入ったベルトに細身の剣を吊り下げて、馬上で落ち着き払ったその様子、巧みな手綱さばきなどから、彼女たちがちゃんと訓練の行き届いた騎士たちであることが察せられた。
「こちらが女だと思っていると、お前たちごときは、あっと言うまに死ぬことになるぞ」
 隊長らしきその女騎士だけは、銀の兜をかぶり、その顔は見えなかった。ただ、すらりと長い手足や、背中に流れる銀色の髪から想像するに、他の女騎士たちと同様に美しいのだろう。
「な、なんつうか……たまげたな」
 あっけにとられるレークに、馬上から指を突きつけ、女騎士は言った。
「名乗らぬのならこの場で縄をかけ、そのまま馬で引いてゆくが、それでもかまわぬか」
「待って」
 騎士たちの前に進み出たのはクリミナだった。
「私たちは、さる任務のために、セルムラードの首都であるドレーヴェを目指してきたものです」
 馬上の女騎士たちを前に、彼女は毅然と声を発した。
「決して怪しいものではない。ここを通してください」
「ならば、名を名乗るがよいだろう」
「それは……」
 ここで自分たちの任務と、正体を明かしてしまっていいものかと、彼女は判断しかねるように口ごもった。
「名乗れないのなら、ひとまず三人とも縛らせてもらうぞ。ガーシャ、ネル」
「はい」
 名を呼ばれた二人の女騎士がさっと馬から降りる。
「まずそいつらの武器を取り上げてから、尻馬に縛りつけろ」
「わかりました」
 二人の女騎士がすらりと剣を引き抜いた。
「さあ、お前たち。おとなしくこちらに武器をよこせ」
「ちぇっ、分かったよ」
 剣を突きつけられては仕方ない。レークは腰のものを差し出した。
「二人とも、ここは、言う通りにしておこうぜ」
 ラズロとクリミナも腰の剣を地面に投げた。
「さあ、おとなしく縄につけ」
「まったく、可愛い顔をしてんのに、こわいねえ」
 女騎士にじろりと鋭く睨まれると、レークは閉口した。
「おや、お前。まだ武器をもっているな。それもよこせ」
「あ、いや、これは……」
 慌てて短剣を懐に隠そうとしたが、遅かった。女騎士は剣を突きつけ、レークの手から短剣をもぎとった。
「これは、奇妙な短剣だな」
「ちょっと待て、それは武器じゃなくて」
 アドからもらった水晶の短剣である。これを失ってしまうのはまずいと、レークは焦って言い訳をした。
「そ、それは、友人から預かった大切な短剣なんだ。ほら、見た通りの飾り剣で、実際には戦いには役に立たないんだ。なあ、返してくれよ」
「ふむ。確かに……戦闘用にしては小さいな。それに、柄のところに宝石が入っている」
 女騎士が短剣を顔の前に持ち上げると、
「その剣を見せろ!」
 馬上から声が飛んだ。
「は、これがなにか……」
「それは……その剣は、もしや」
 隊長騎士は馬から飛び下りると、かぶっていた兜を脱ぎ捨てた。
「まさか……そんな」
 喘ぐようにつぶやきながら、こちらにやってくる。
「……」
 レークは息をのんで、その女騎士を見つめていた。
 兜の下から現れたのは、銀色の滝のように輝く髪と、雪のように白い肌をした、世にも稀なほどの美女だった。
「その短剣……それをどこで?」
 そばにきた女騎士とレークの目が合わさった。
 ほっそりとした顔だちに、泉のように澄んだ青い瞳とつり上がった細い眉、それは完璧というほどに整った美貌で、同時にどこか中性的な匂いがする。
 それはレークに誰かを思い出させた。
「アド……」
「なに……なんといった」
 レークのつぶやきに、女騎士はその目を見開いた。
「アド、いまアドといったのか?」
「あ、ああ……」
 女騎士の白い頬がいくぶん紅潮していた。それまで表情のなかった顔に、とまどいと驚きの色が浮かび、その目がきらきらと輝きだしていた。
「やはり。では、やはり、これはアドの剣なのか」
「あんたは、アドを知っているのか?」
 レークは驚いて訊いた。
「知っているもなにも……ああ」
 まるで胸が苦しいとでもいうように、女騎士は小さく呻いた。
「ああ、ではアドは、アドは無事でいるのか?彼女は元気なのか?……どうして、お前がその剣を」
「ああ……」
 いくぶんあっけにとられながらレークはうなずいた。
「彼女は元気でやっているよ。ウィルラースさんと一緒に」
「そうか。そうか!おお……」
 とたんに、女騎士の顔に歓喜の笑みが浮かんだ。
「よかった。アド……ああ」
「じゃあ、あんたは、アドの友達なんだな?」
「友達?」
 サファイアのようなその瞳を輝かせながら、女騎士は言った。
「いやそれ以上だ。彼女はそう……私の妹のようなものだから」
 今やすっかりレークたちを縛り上げることなど忘れたように、嬉しそうにその顔をほころばせる。
「ウィルラース卿のもとで元気に……そうか。よかった」
「それで、あんたらはさ」
 隊長の命令を待っている周りの女騎士たちを見回して、レークは言った。
「俺たちを捕まえるのか、捕まえないのか、どっちなんだよ」
「ああ、そうだったな」
 さっきまでとはすっかり女騎士の口調が変わっていた。そこには少し興奮したような、かすかな親しみの響きが感じ取れた。
「アドから剣を受け取ったということは、お前たちはあの、ウィルラース卿の使者ということなのだな」
「そうさ。オレはレーク・ドップ。こっちは連れの……クリミナとラズロだ」
「そうか。私はリジェ。セルムラードの王女殿下に仕える遊撃隊の隊長だ」
 女騎士は誇らしげに胸をそらした。
「ここにいるのは私の部下……というか、みな妹のようなものさ。ガーシャ、ネル、ローリ、カレア、マルタ」
「遊撃隊……そういえば噂には聞いたことがある。本当に女騎士だけの隊なんだな」
 すらりと伸びた足をあらわに、腰には勇ましく長剣を吊り下げた、そのいずれ劣らぬ美女たちを見回して、レークは感心しながらうなずいた。
「なんつうか、こう、女に囲まれると目のやり場に困るというか……なあラズロ」
「そ、そうですね」
 ラズロのはこの成り行きにあっけにとられながら、どうやら女騎士たちが敵ではないと分かって、ほっとした様子だった。クリミナの方は、なにを思ってかじっと黙ったまま、リジェと名乗ったこの女騎士たちのリーダーをじっと見つめている。
「さて、では仕方ない。縛って馬で引きずるのはなしにしようか」
 隊長のリジェが冗談めかして言った。
「ウィルラースどのの使いというからには、女王陛下のもとまで、丁重に案内せねばならないな。よし、ガーシャ、ネル。その二人を後ろに乗せてやれ」
「はい、リジェ姉」
「レーク・ドップ、だったな。お前は私の馬に。もっとアドの話を聞かせてくれ」
 彼女はひらりと馬にまたがると、「後ろに来い」とレークにあごをしゃくった。
「いくぞ。しっかりつかまっていろ」
 リジェとレークの乗る馬を先頭にして、女騎士たちの馬が一列になって歩きだした。
 道を進んで丘の手前までくると、そこは広場のようになっていて、村というほどのものでもなかったが、ちょっとした集落があった。道の両側には簡素な造りの家が並び、それらは主に宿屋や酒場などであるようだ。
「ここは、ようするに関の宿みたいなものさ」
 手綱をとりながらリジェが説明した。
「ドレーヴェはほら、この丘の上にあるからね。そこまでの通行証を持たないものや、あるいは都市の城門が閉じる頃に着いたものが、ここで一夜を過ごしたりする。もちろん、食べ物や、旅に必要な道具、服やマント、馬なんかもここで買ったりできる」
 通りの店店は、まだ早朝とあって多くは閉まっていたが、いくつかの宿や店はそろそろ開き始めているようで、起き出してきた店の人々が、通りをゆく女騎士たちに気づいて会釈をしてくる。遊撃隊の女騎士といえば、この国では知らぬものはいないのだろう。
 集落の終わりには関所の門があり、そこを通り抜けると、いよいよ都市へと続く丘を上る道になる。関所にいた門兵は、女騎士の姿を見るや、無条件で門を開けさせた。
 丘を上るこの道は、遠くから見ていたときよりも実際には案外にゆるやかで、丘をぐるりと回る、いわば塔を上る螺旋階段のようになっていた。これならば馬車などでも上り下りができそうであった。ときおり都市から下りてきた農夫の引く荷車がすれ違ってゆく。
「丘の周囲の林には農作地があるのさ。都市の農民たちは朝になると、ああして丘を下って作業しにゆくんだ」
「なるほど。ご苦労なこったな」
「このあたりの土はとても滋養があって、作物もよく育つ。林にはブタが放し飼いにされていて、ドングリをたっぷりと食べて丸々と太った、それは美味いブタになるんだよ。いい森といい土、そして、きれいな水と空気がこのドレーヴェの自慢なのさ」
 女騎士がそう言う間にも、また別の農民たちの列が丘の道をすれ違ってゆく。彼らは女騎士たちを見ると、みなうやうやしくおじぎをしてゆくが、その顔には恐れるような様子はない。農作業を手伝うのだろう、元気そうな子どもがこちらに手を振ってくると、女騎士たちも、まるで家族のようにそれに手を振り返す。
「ドレーヴェの人口自体はそう多くはない。たぶんトレミリアのフェスーンの半分もいないだろうね。だから、たいていの人々は私らの顔を知っているし、私らも知っている人間がほとんどなのさ」
「なるほど。あんたらは人気ものなんだな。まあこれだけ美人の騎士隊なら、当たり前かもしれんが」
「ははは。ありがとう。しかし、別に美人だから騎士に選んでいるわけではない。みな、それは厳しい訓練を通じて、ちゃんと実力を認められたものたちさ。さあ、ところでアドのことだが」
「ああ」
「私のよく知るあのアドが、自分の大切な宝剣を渡すというのだからな、お前はきっとただ者ではないはずだ」
「そりゃあまあな」
 ぬけぬけとレークは言った。
「だって、オレさまはハンサムな上に、とんでもない剣の達人ときているからな。ただ者であるはずはないけどよ」
「それはまた、たいした自信だ。しかし、その剣はエルセイナ様から授かったものだとアドから聞いている。彼女の任務の役に立つだろうということでな」
「エルセイナ……たしか、セルムラードの宰相だな」
「そうさ。エルセイナ・クリスティさま。女王フィリアン陛下の片腕であり、我がセルムラードの頭脳ともいうべきお方だ」
「ああ、聞いたことがある。たいそうな切れ者らしいな。まあ、そういう人間がいなくちゃ、女王一人で大国をきりもりしてはいけねえんだろうが。オライア公からもっとよく聞いておくんだったな。まさか、セルムラードに来ることになるとは思わなかったから」
「オライア公……するとやはり、お前はトレミリアから来たのだな」
「あれ、言わなかったっけか」
「やはりそうか」
 女騎士は得心したように、肩ごしに後ろをついて来る馬を振り返った。
「では、あれはトレミリアの宮廷騎士、クリミナどのなのだな。私は一度、フェスーンに行ったことがある。さっきは普通の服を着ているから気づかなかったが。すると、お前もトレミリアの騎士なのか。そのわりにはどうも……」
「ハンサムすぎるか?」
「ふふ。いや、気品がないということだ」
「そりゃひでえ。これでも一応は宮廷騎士の身なんだぜ」
「それはすまなかった」
 くすりと笑ってリジェは言った。
「宮廷騎士か。とてもそうは見えない」
「ごもっとも。ところで、あのアドも、この遊撃隊の一員だったのかい?」
「そうだ。剣の腕前では、隊でも一、二を争う実力だったよ」
「なるほどね。たしかに、あの曲刀さばきはたいしたもんだ。へたすりゃオレよりも早いかもしれない」
「なんだと。アドの剣の早業を、お前などが……」
 女騎士はむっとしたように言いかけたが、
「そういえば……レーク・ドップといったな」
「ああ」
「もしや……お前は、あのトレミリアの剣技会で優勝したという浪剣士なのか?」
「ああ、そうだよ」
「なんと……お前が」
 女騎士は驚きの声を上げた。
「噂には聞いていた。我がセルムラードからも大会に参加していた騎士がいたからな。名もない一人の浪剣士が、兜もつけぬままにトレミリアの名だたる名士たちを打ち負かしていったという。その神業のような剣技の話を聞かされて、とても興奮したものだ。まさか、お前がそうだったとは……」
「照れるねえ。こんな山の上の国にまで、オレの勇名は轟いていたんだな」
 リジェの腰につかまりながら、レークは気をよくして言った。

 女騎士たちの馬は、丘を上る道をぐるりと周りながら、都市の入り口へ近づいていった。
「このあたりまで来ると、だいぶ登ってきた感じだろう。見てみろ。いい眺めだ」
 リジェが後ろに合図をして馬をとめる。
「おお、こりゃあ確かに」
 そこから見渡せるのは、まさに絶景であった。
 丘の四方は美しい緑の森に囲まれ、その向こうに青い山々の稜線が空の色と混ざり合いながら続いている。森の中を蛇行しながら続いてゆく青い流れはカイル川だろう。
 晴れ渡った空にゆったりと流れる雲が、森や丘の上に複雑な影を描き、太陽の光がまた木々や川の流れを照らしだす。澄みきった空気と、涼やかな風を頬に心地よく感じながら、レークはその美しい景色を見渡していた。
「セルムラードでも、ドレーヴェはもっとも高地にあり、そして、もっとも美しい場所なのさ。ここは森の神に守られた王国なんだ」
 リジェの言葉には、この国と、この土地を自分たちの手で守るのだという、誇らしさが込められていた。
 そこからまた少し道を上ると、彼らの目の前に見事な城壁が広がった。
 丘の上に建てられたとはとても思えない、石造りの精巧な城壁が都市を囲むようにしてぐるりとはりめぐらされ、丘の周囲を見下ろすように物見の塔がいくつもそびえている。
 森と山に囲まれた空中都市、ドレーヴェ……不思議な狼に案内され、恐ろしい夜の森を月明かりを頼りにさまよい続け、ついに辿り着いたのだ。


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