キーボードプログレ特集
〜70年代から現在までの鍵盤プログレ33選〜



ギターがいなくてもキーボードがあればロックになる!というまさしくプログレ的な発想は、
EL&Pの成功をへて、その後、世界各国へキーボードサウンドの重要性を拡散させていった。
オーケストラの代用として開発された幻想的なメロトロン、やわらかな音色と攻撃性をかねそろえたオルガン、
そして電子的なきらびやかさを放つムーグシンセ…時代を超えてもなお、そうしたヴィンテージなシンセ音は愛され続け、
とりわけプログレッシブロックにおいては、現在においてもバンドの色を決定付けるほどの重要な要素となっている。
ここではあらためて、それらのシンセ群をたっぷりと使用した鍵盤プログレの傑作を紹介したい。



EMERSON,LAKE & PALMER 「Tarkus」
エマーソン・レイク・アンド・パーマーの2nd。1971年作
アルマジロ戦車こと「タルカス」組曲はELPの最高傑作である。
LPでいうA面すべてを費やした7パートに分かれた20分の長大な組曲は、
エマーソンのキーボードワークが縦横無尽に炸裂し、リズム面での緩急のつけ方や
ドラマティックな構成力が前作以上にプログレッシブロックとしての美学を感じさせる。
ムーグシンセを導入したことで、ハモンド、ピアノというそれぞれの異なる音を使い分け、
サウンドの幅が大きく広がっている。冒頭の組曲が凄すぎて2曲目以降の印象が弱いのだが、
後半もじっくりと聴けばクラシカルで優雅な味わいとともに、絶品の鍵盤さばきを堪能できる。
なんにしてもこのアルバムで聴ける世紀のキーボード大曲は、時代を超えて輝き続けている。
クラシカル度・・8 プログレ度・・9 キーボー度・・9 総合・・8.5
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Refugee
イギリスのプログレバンド、レフュジーの1974年作
後にYESに加入するパトリック・モラーツと元NICEのメンバーによる唯一のアルバム。
きらびやかなモラーツのシンセワークを中心にした、NICEやELPを思わせるクラシカルな鍵盤プログレ。
いくぶんドタドタとしたドラムに、強引なまでにムーグシンセで押しまくりつつ、オルガンやピアノも鳴り響き
ときに歌もので盛り上げたりもするサウンドは、オランダのTRACEをやや粗削りにしたという雰囲気もある。
とくに長い組曲の出来が白眉で、クラシカルな優雅さと暑苦しい濃密さが同居した傑作である。
クラシカル度・・8 プログレ度・・8 キーボー度・・8 総合・・8
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RICK WAKEMAN 「Retro」
YESの鍵盤奏者として知られる、リック・ウェイクマンの2006年作
ウェイクマンといえば、70年代の文芸三部作が代表作とされているが、本作はタイトル通り、
ハモンドやムーグ、クラヴィネット、メロトロンなど、ヴィンデージな機材を使いまくった、
レトロなプログレアルバムとなっている。まるで70年代に戻ったかのような作風に思わずにやにや、
かつての名作「アーサー王」あたりで聴いたようなフレーズなども顔を覗かせ、
ヴォーカルにかつての盟友、アシュレー・ホルトが参加している点も大きいですね。
懐古主義と言われればそれまでですが、この古き良きサウンドはやっぱ心地いいんです。
クラシカル度・・8 古き良き度・・9 キーボー度・・9 総合・・8
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IL BALLETTO DI BRONZO 「Ys」
イタリアのプログレバンド、バレット・ディ・ブロンゾの2nd。1972年作
イタリアンロックの中でもシンセをメインにしたヘヴィプログレとしては筆頭の名作。
妖しい女性スキャットとクラシカルなオルガンの音色からして、すでに引き込まれるが
5つの楽章に分かれた組曲方式で展開される緻密な楽曲は、ELPなどとはまた違った
イタリア独自の濃密な薄暗さに包まれていて、神秘的なまでに妖しく、そして美しい。
ジャンニ・レオーネのシンセプレイは日本のARSNOVAなどにも大きな影響を与えている。
ドラマティック度・・8 キーボー度・・8 イタリア度・・9 総合・・8.5
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METAMORFOSI 「INFERNO」
イタリアのプログレバンド、メタモルフォーシの2nd。1973年作
ダンテの「神曲・地獄編」をコンセプトにしたアルバムで、イタリアンキーボードロックの名作とされる。
現在のデジタルシンセよりもぐっと暖かみのある、ムーグ、ハモンドなどの古き良きシンセ群が鳴り響き、
オペラティック男ヴォーカルはやや暑苦しいながらも、サウンドに重々しい世界観を付加している。
バンコやバレット・ディ・ブロンゾにも通じる、実にイタリアらしいキーボードロックだ。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 キーボー度・・9 総合・・7.5
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TRACE 「BIRDS」
オランダのプログレバンド、トレースの2nd。1975年作
Ekseptionでも活躍したシンセ奏者、リック・ヴァン・ダー・リンデン率いるバンドで、
モロにクラシック的な1stの路線から、バンドとしてのアンサンブルが強化され、
より躍動感に満ちた鍵盤プログレが楽しめる傑作。バッハのカヴァーで始まりつつ
楽曲はよりスタイリッシュになり、EKSEPTION時代を含めてより熟成されている。
鳴り響くオルガン、クラシカルなチェンバロ、ときにジャズタッチのピアノまで、
リック・ヴァン・ダー・リンデンの怒濤の鍵盤さばきがたっぷり楽しめます。
そして22分におよぶ組曲はまさに圧巻。バンドは続く「ホワイト・レディース」を最後に解散。
クラシカル度・・8 プログレ度・・8 キーボー度・・9 総合・・8.5
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TRIUMVIRAT 「ILLUSION ON A DOUBLE DIMPLE 」
ドイツのプログレバンド、トリアンヴィラートの2nd。1973年作
ELP的を思わせるキーボード弾きまくりのなかにも、独特のポップ感があり聴き疲れしないのが特徴。
この2ndアルバムは23分と21分の大曲2曲という構成で、歌メロはたまに顔を出すがほぼインストメイン。
たたみかけるキーボードパートとクラシカルで典雅な部分のバランスが見事で、
キーボードロック好きには必聴のバンドのひとつ。代表作としてはこの2nd〜4thまで。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 キーボー度・・9 総合・・8
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TRITONUS 「Tritonus/Between The Universes」
ドイツのプログレバンド、トライトナスの1st、2ndカップリング。1975/1976年作
ドイツのELPなどとも言われたバンドであるが、こちらはもっとスペイシーな感じのシンフォニックロックで
ムーグやオルガンを鳴り響かせながら、キャッチーなヴォーカルで聴かせるサウンド。
1stはややドタバタとしたクラシカルプログレで悪くないが、2ndになるとややソフトな感じになり
10分前後の大曲も、テクニカルな緊張感よりは、ゆったりとした叙情的な作風である。
TRIUMVIRATなどに比べると、スタイリッシュな構築センスの点ではやや聴き劣りするが、
70年代ドイツのマイナーシーンおいては、クオリティの高い部類であったと思われる。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 キーボー度・・8 総合・・8
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Epidaurus 「Earthly Paradise」
ドイツのシンフォニックロック、エピダウラスの1977年作
自主制作のアルバムながら、これがなかなか素晴らしい叙情派シンフォの傑作。
オルガンやメロトロン、ムーグといった多彩なキーボードが鳴り響き、
そこに美しい女性ヴォーカルの歌声が重なると、もううっとりするほどに優美なサウンドになる。
キーボードの奏でる旋律は、我々日本人が好むメロディアスさで、随所にフルートの音色も入るなど
その繊細な美意識は素晴らしい。Anyone's Daughterにも引けをとらないシンフォニック作品です。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 キーボー度・・9 総合・・8
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TRILOGY 「Here It Is」
ドイツのプログレバンド、トリロジーの1979年作
オルガンを含むツインシンセ編成で、やわらかな叙情を聴かせるシンフォニックロック。
オールインストであるが、Triumviratからの流れを引き継ぐような優雅なメロディと展開美で、
とても耳心地がよい軽やかなサウンドだ。メンバーにはギター奏者もいるのだが、
あくまで主旋律を奏でるのはシンセがメイン。9分、12分という大曲を構築するセンスもあり、
70年代ドイツのキーボードプログレの隠れた傑作といってもよい出来だろう。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 キーボー度・・8 総合・・8
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STARDRIVE
アメリカのシンセ奏者、ロバート・メイスン率いるスタードライヴの1974年作
メイスン氏は独自のムーグシンセを開発した人物でもあり、CDジャケ裏の大がかりな装置がそれらしい。
確かに、時代を考えればこの多彩なシンセサウンドはなかなか立派なもので、
スペイシーに弾き鳴らされるムーグの音色は、録音のショボさを差し引いても聴く価値がある。
曲調の方はギター入りのものは普通の70年代ロック風なのだが、間断なく鳴っているシンセのおかげで
とてもけたたましくカラフルな印象だ。むしろシンセのみによるスペイシーな演奏の方が雰囲気がある。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 シンセ度・・9 総合・・7.5
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TODD RUNDGREN'S Utopia
トッド・ラングレンが70年代に立ち上げたバンド、ユートピアの1974年作
今でこそポップサイドやプロデューサーとして有名な彼だが、本作はそのトッドがもっともプログレに接近した作品として
70年代アメリカプログレの傑作としても名高い。トリプルキーボードを駆使したそのサウンドは、
この時代の音楽としてはとても音が厚く、ライブ録音の1曲目からして、きらびやかなシンセの渦に引き込まれる。
キーボードに絡むトッドのギターは奔放で、ときにダイナミックにロックしているが、
ヴォーカルパートにおいてはそのポップでキャッチーなセンスを垣間見せている。
全4曲で、それぞれ14分、10分、4分、30分という作りもいかにもプログレ的だが、
一方では、これが彼の引き出しのひとつにすぎなかったという事実にも驚嘆させられる。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 キーボー度・・8 総合・・8
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STERN MEISSEN 「REISE ZUM MITTELPUNKT DES MENSCHEN」
旧東ドイツのプログレバンド、シュテルン・マイセンの4th。1981年作
ひとことでいうと、初期のELPを壮大にしたような、スペイシーに乱舞するキーボードを中心にしたサウンド。
東欧らしいアカデミックさに彩られた見事な楽曲は、ダブルキーボードによる多重録音など
アレンジにも細やかな気遣いが感じられて非常に高品質である。
楽曲、演奏力ともに、ポーランドのSBBなどと同様、躍動感がありしかも緻密かつソリッド。
キーボードメインのシンフォニックロックアルバムとしては文句なく名盤といっていいだろう。
シンフォニック度・・8 キーボー度・・10 演奏・・9 総合・・8
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BLEZQI ZATSAZ (FAVIO RIBEIRO) 「RISE AND FALL OF PASSIONAL SANITY」
ブラジルのシンフォニックロックバンド、V MILENIOのキーボード奏者、ファビオ・リベイロのソロ作。1990年作
トレ・ミレニオ自体も濃密かつシアトリカルなシンフォニックサウンドであるが、
本作はそれ以上に大仰かつドラマティックなキーボードシンフォニックが全開。
きらびやかなシンセの重なりでオーケストラルな華麗さを描き出しつつ、怒濤のように盛り上げてゆく様は、
まさにラテン系の熱き魂か。キーボードシンフォとしては世界最高レベルの派手さ。こりゃすごいです。
メロディアス度・・9 シンフォニック度・・10 ドラマティック度・・9 総合・・8.5
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Quaterna Requiem 「Quasimodo」
ブラジルのシンフォニックロックバンド、カテルナ・レクイエムの2nd。1994年作
1st「Velha Gravura」はヴァイオリン、フルート入りのシンフォニックロック力作であったが、
続く本作は、なんと38分の組曲入りというド級のシンフォ大作となった。イントロの荘厳さからしてすでに
ドラマティックなプレリュードというように胸踊る。今作にはヴァイオリン奏者は参加していないが、
まるで南米のPAR LINDHかというようにクラシカルに弾きまくる女性シンセ奏者を中心に、
壮麗きわまりないコテコテのクラシカル・シンフォニックロックを展開。そしてラストの大曲は
グレゴリアンチャントまで入った悶絶級の出来。90年代の南米シンフォを代表する濃密傑作だ。
シンフォニック度・・9 クラシカル度・・8 キーボー度・・9 総合・・9
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AFTER CRYING 「FOLD ES EG」
ハンガリーのシンフォニックロックバンド、アフター・クライングの3rd。1994年作
前作のクラシカルナチェンバーロック路線から変わって、本作ではEL&Pを思わせるキーボードを前に出した、
ぐっとプログレ寄りのスタイルとなっている。しかしながら、壮大かつアカデミックな印象で聴かせるサウンドは、
やはりクラシックルーツのバンドならはの緊張感に包まれている。90年台の東欧圏のバンドとしては非常に出来の良い、
シリアスなクラシカル系キーボードプログレが堪能できる好作品であろう。
クラシカル度・・8 シンフォニック度・・8 ピアノ&キーボー度・・8 総合・・8
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Rumblin' Orchestra 「Spartacus」
ハンガリーのシンフォニックロック、ランブリン・オーケストラの1998年作
RICK WAKEMANあたりを思わせるクラシカルなシンセワークを中心に、フルート、オーボエ、ヴァイオリン、チェロ、といった
室内楽の要素が加わった華麗なシンフォニックロック。ときに男女混声ヴォーカルの歌声も含みつつ、
オーケストラルな優雅さはENIDのような聴き心地で、それをさらにキャッチーに仕上げたというセンスの良さが光る。
東欧らしい隙のないクオリティが、新たなクラシカルシンフォのマスターピースを作り出した。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・8 壮大華麗度・・9 総合・・8.5
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PAR LINDH PROJECT 「MUNDUS INCOMPERTUS」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、パル・リンダー・プロジェクトの2nd。1998年作
1st「Gothic Impressions」は管弦楽、チャーチオルガン、合唱隊などを配したド級のシンフォニック作であったが、
本作では女性ヴォーカルを含む5人編成でのバンドサウンドとなって、前作の壮麗さに加えて
よりロックとしての躍動感がそなわった作品となった。メロディはクラシカルでありながらもキャッチーで
音に難解なところがなく、聴いた瞬間から濃密なシンフォニックロックとして完全に楽しめるという点も魅力。
楽曲を彩る女性ヴォーカルの歌声や、メタルドラマー並に手数の多いツーバスドラムも聴きどころ。
26分の圧巻の組曲を含めて、1990年代を代表するシンフォニックアルバムのマスターピースのひとつである。
シンフォニック度・・9 ダイナミック度・・9 キーボー度・・9 総合・・8.5
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CAIRO 「CONFLICT AND DREAMS」
アメリカのハード・プログレバンド、カイロの2nd。1998年作
1stの時点ではあまりにもYES/ELP色が強すぎたが、本作は楽曲に独自の色が出始めた傑作となった。
ヴォーカルの歌唱には今だYES臭さがのこるし、シンセのいかにもELP的な色も顕著に表れているが、
なにより曲が良くなった。同レーベルの先輩でSHADOW GALLERYにも通じるメタリックなアレンジが功を奏し、
長い曲でも決してだれることなく緊張感と叙情を展開の中で保たせることに成功している。
以前はシンセに隠れて目立たなかったギターのフレーズも本作では効果的に聴かれ、
メロディアスにシンセと絡みながらいっそうシンフォニックに音の厚みを加えている。
70年代的プログレの香りを受け継ぐテクニカル・ハードプログレ作。3rd「TIME OF LEGENDS」も素晴らしい。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 キーボー度・・9 総合・・8.5
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TOMAS BODIN 「PINUP GURU」
スウェーデンのキーボード奏者、トマス・ボディーンのソロ。2002年作
THE FLOWER KINGSのシンセ奏者であり、ソロ第2作となる今作も、オルガンやムーグを含むキーボードを駆使した
優美なシンフォニックロック作品となっている。ヨナス・レインゴールド、ソルタン・チョースというフラキン組のリズム隊も素晴らしく、
適度にテクニカルな感触を楽曲に付加している。いうなればギター抜きのフラワー・キングスといった感じもあるが、
トマスの繊細なキーボードワークがたっぷりと堪能できるのが嬉しい。優雅なクラシカル性と
ときに軽妙なジャズロック風味もあったりと、オールインストであるが、シンフォニックロックとしての魅力は十分だ。
シンフォニック度・・8 繊細度・・8 キーボー度・・9 総合・・8
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NATHAN MAHL 「HERETIK VOLUME V」
カナダのテクニカルプログレバンド、ネイサン・マールの5作目。2002年作
「HERETIK」シリーズ三部作の完結編は、なんと全一曲54分という気合の入った構成となった。
今回もほぼオールインストで、変拍子リズム込みの軽快でテクニカルな演奏を全編で堪能出来る。
HAPPY THE MANにも通じる切れ味に加え、EL&Pばりに弾きまくりのキーボードによる楽曲は
あきれる程にコテコテでありながらも、この手のプログレ好きには当然のように受けることだろう。
ちゃんと聴き込む時間と体力があるリスナーにとっては、テクニカルシンフォとしては必聴クラスの力作だ。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 コッテリ50分1曲度・・10 総合・・8
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DAEMONIA 「DARIO ARGENTO TIBUTE」
GOBLINクラウディオ・シモネッティを中心にした、ダリオ・アルジェント作品のトリビュートバンド、デモニアの2000年作
アルジェントの作品といえば、「サスペリア」などホラー映画でおなじみだが、
このアルバムはそれらのセルフカヴァーを含む、サントラ曲をバンドで録音したもので、
音のほうはシモネッティのキーボードをメインにしたダイナミックでハードな作風。
サントラうんぬんを別にしても、「ハードめのキーボードプログレ」として鑑賞に足る出来だ。
荘厳な女性スキャットや、ホラー的なゴシック調のメロディなど、ダークでありながらロックとしての躍動感がある。
メロディアス度・・8 ロック度・・8 キーボー度・・8 総合・・8
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TONY CARNEVALE 「LIVE ROCK SYMPHONIC CONCERT」
イタリアの作曲家でキーボーディスト、トニー・カルネヴァーレのライブアルバム。2003年作
そのクラシカルでバロックな音楽性はロバート・ジョン・ゴドフレイ(ENID)かパル・リンダーかというほど。
このライブ作では1995年作のソロ2作目「LA VITA CHE GRIDA」からの曲を中心にしつつも、
のっけから「展覧会の絵」で攻めてくるあたりが、いかにもプログレを意識した構成でよいですな。
優雅でクラシカルなスタジオ版の音に比べ、このライブではギターやドラムもかなりロックしており、
オルガンやムーグなどのシンセワークとともに、イタリア然とした躍動感に満ちた熱い演奏が繰り広げられている。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・8 熱情度・・9 総合・・8
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JAIME ROSAS CUARTETO 「CRECIENDO」
アルゼンチンのKey奏者、ハイメ・ロサス率いるユニットの2005年作
ENTRANCEのシンセ奏者としても知られるが、そのエントランス自体がハードな濃密シンフォであったのだが、
本作では、ギター、ベース、ドラムを含む4人編成で、ますます濃密なシンフォプログレを聴かせてくれる。
厚みを増した演奏とともにロックとしての躍動感も加わって、ハイメ・ロサスのクラシカルなシンセフレーズもますます冴え渡る。
まるでこれは日本のDEJA-VU(桜庭統)か?という、美麗なきらきらキーボード弾きまくりのシンフォニックロック快作!
シンフォニック度・・8 きらきら度・・9 キーボー度・・9 総合・・8
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LITTLE TRAGEDIES 「RETURN」
ロシアのシンフォニックロックバンド、リトル・トラジェディーズの3rd。2003年作
デビュー時から濃密かつ優雅なコテコテのシンフォニックロックをやっているこのバンド。
今回もELPばりに派手なキーボードを中心に、壮麗かつこけおどし感抜群なサウンドで
弾きまくりと盛り上がりまくりの楽曲には、思わずにやにやとしてしまう。
ともかく、全編にわたってのテンションの高さ、元気の良さというのは相当のもので、
かつてのRUMBLIN' ORCHESTRAあたりを思わせるほどの勢いだ。一応しっとりとした歌もの系曲もあり、
押すだけでないところも聴かせる。ともかく、派手系の弾きまくりシンフォが好きな方は必聴である。
シンフォニック度・・9 ハイテンション度・・10 キーボー度・・9 総合・・8
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TRESPASS 「Morning Lights
イスラエルのプログレバンド、トレスパスの2nd。2006年作
驚愕のクオリティの傑作であった前作「IN HAZE OF TIME」に続く期待の2作目。
NICETRACEかという、素晴らしいキーボードロックサウンドはそのままで、
国名を知らずに聴けば、あるいは英国あたりのバンドかと思われそうなほど。
メロディには古典的なバロックの香りが感じられ、リズム面を含めての確かな演奏力に加え、
西洋的センスのアレンジ力も見事で、総じて音には気品と優雅さとが漂っている。フルートの音色なども美しく、
上品な叙情とクラシカルなエッセンスが満喫できる、これぞキーボードプログレの大傑作だ。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・9 キーボー度・・9 総合・・8.5
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◆日本のキーボードプログレ

中島優貴 「大予言」
元ヘヴィメタル・アーミー〜イースタン・オービットのシンセ奏者、中島優貴のソロ。1982年作
ノストラダムスの大予言をテーマにしたコンセプトアルバムで、シンセをメインにした壮麗なサウンド。
元四人囃子の佐久間正英がベースで、ヘヴィ・メタル・アーミーの宮永英一がドラムで参加、
アルバムを通して描かれるドラマティックで壮大な世界観は、シンセ奏者、サウンドクリエイターとしての
センスが遺憾なく発揮されている。ヘヴィ・メタル・アーミーのJJが歌を乗せる三部構成の大作“ファチマ組曲”や、
VOW WOWの山本恭司、ラウドネスの樋口宗孝らが参加したハードプログレナンバー、“グランドクロス”など聴きどころの多い好作品だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 シンセ度・・9 総合・・8
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難波弘之 「真幻魔大戦イメージアルバム」
日本を代表するシンセ奏者、難波弘之による平井和正のSF小説のイメージアルバム。1984年作
もともとSFに素養のある文学肌のミュージシャンである難波氏であるから、
この手のイメージアルバムというのはお手の物。これでもかとシンセを鳴り響かせつつ、
ドラマティックな展開美に変拍子も入りまくった立派なプログレ作品に仕上がっている。
厚見麗(玲衣)も参加して、まさに鍵盤祭りというようなキーボードプログレっぷりは爽快で、
歌ものロック的な曲やクラシカルな小曲も含みながら、小説作品の世界観を描き出してゆく。
しっかりとバンドサウンドにもなっていて、これぞ難波弘之のプログレ最高傑作というべき出来である。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 シンセ度・・9 総合・・8
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DEJA VU 「BAROQUE IN THE FUTURE」
日本のプログレバンド、デジャ・ヴの1988年作
いまやゲームミュージック界においてその地位を確立する桜庭統率いるバンドの唯一の作品
クラシカルな鍵盤さばきと構築センスという点では、日本のキーボードプログレ最高峰の一枚である。
変拍子リズムをたっぷり織り込みつつ、優雅にメロディを紡いでゆく作風は、この時点で
すでに桜庭節というべきスタイルが確立している。正直、ヴォーカルに関しては苦言を呈したくなるので、
楽曲のオマケ程度に思って鑑賞した。なんにしても本作は現在の桜庭氏を語る上でも外せない作品であろう。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 キーボー度・・9 総合・・8
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SOCIAL TENSION 「IT REMAINS ME OF MACBETHIA」
日本のプログレバンド、ソシアル・テンションの1989/90年作
1889年作「マクベシア組曲」、1990年作「リメインズ」と2枚のアルバムを残した
日本のキーボードプログレバンド、本作はその2作を合わせた、フランスMUSEAからの再発版。
エマーソンに影響されたとおぼしき、オルガンにムーグシンセをたっぷりと使ったキーボードロックで、
お世辞にも上手いとはいえないヴォーカルに耐えられたならば、ドラマティックな鍵盤プログレが楽しめる。
80年代に最盛期を迎えていた、いかにもジャパニーズプログレらしいロマン溢れる雰囲気の詰まった好作品だ。
メロディアス度・・8 キーボー度・・9 歌はアレですが度・・9 総合・・7.5
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桜庭統 「Gikyokuonsou/戯曲音創
日本のプログレキーボーディスト、さくらば・もといのソロ。1991年作
解散後の初ソロアルバムで、のちにゲーム音楽業界で名をはせることになる
その原点というべきインストサウンドが詰まっている。変則リズムに乗せるピアノ、オルガンなどの
クラシカルな優雅さとテクニカルな軽妙さは桜庭節そのもので、華麗な鍵盤さばきがたっぷり味わえる。
古き良きプログレらしさと、日本的な繊細な情緒を融合させたような、桜庭サウンドが確立した一枚だ。
クラシカル度・・8 プログレ度・・8 キーボー度・・9 総合・・8
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ARS NOVA 「The Goddess of Darkness
日本のプログレバンド、アルス・ノヴァの3rd。1996年作
女性によるキーボードトリオとして活動していたバンドの初期の代表作と言われるアルバム。
オールインストながらメロディアスな聴きやすさとともに、その世界観には女性特有の耽美な色気を感じさせる。
9分、10分、11分という大曲が多いことからも、バンドとしての脂が乗った時期の作品だろうし、
1stの頃よりもメロディにはゴージャスな質感が加わっていて音の説得力も増している。
たたみかける変拍子リズムのいかにもプログレ然とした部分がメインだが、
クラシカルでゴシック、そしてややダークに聴かせる場面にもこのバンドの魅力がある。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 キーボー度・・9 総合・・8
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GERARD 「Meridian
日本のプログレバンド、ジェラルドの1998年作
本作は過去の楽曲を新編成で再アレンジ、録音しなおしたもので、
初期GERARDのメロディアスなサウンドがたっぷり楽しめるベスト盤でもある。
テクニカルなリズムの上を縦横無尽に駆け巡る永川氏のシンセワークを中心に、
サウンドはきらびやかな爽快感と、これぞキーボードプログレという勢いに満ちている。
これからGERARDを聴くという方や、初期のアルバムしか知らないという方は必携だ。
なお、画像左のフランス盤は一部曲が異なり、以前のミニアルバムから“Evidence of True Love”を収録。
シンフォニック度・・8 テクニカル度・・9 キーボー度・・9 総合・・8.5
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*オルガンロック/プログレ傑作選
*クラシカルなプログレ/シンフォニックロック特集
上記特集ページも併せてご覧ください


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