イタリアンプログレ入門
〜叙情と芸術、濃密なるイタリアンロックの世界へ〜
かつて、PFMと出会ったときから、私のイタリアンロックへの旅、そしてユーロロックへの真の探求が始まった。
あのときのワクワクとする気持ち…世界には多くのプログレバンドがおり、これから多くの作品との出会いがあるのだという…
あの新鮮な航海にでも乗り出すような気持ちの高ぶりは、いまなおその情熱の続きとなって、わが胸に存在している。
ここでは、私が気に入るイタプロの傑作57枚をセレクトしてみた。イタリアンロック初心者の方にも参考になれば幸いです。
2022.1 緑川とうせい
■まずはPFMとバンコから!
PFM「Storia di un Minuto」
イタリアのプログレバンド、PFMことプレミアータ・フォルネリア・マルコーニの1972年作/邦題「幻想物語」
PFMの記念すべきデビュー作であり、のちの作品のように洗練されきれていない素朴さが魅力。
イントロに続く2曲めの“9月の情景”は、後に“甦る世界”としてリメイクされる名曲で、
イタリア語の歌声による叙情美とシンセによる印象的なメロディがじつに耳心地良い。
3曲めの“E' Festa”は、“Celebration”として「Photos of Ghosts」に収録される彼らの代表曲。
間奏部のフルートを含めて、より祝祭の情景が感じられるこちらのイタリア語版が好み。
クラシカルな美しさの“Dove...Quando...”イタリアらしい混沌とした雰囲気の“ハンスの馬車”、
どれもがイタリアからしか出て来ないプログレサウンドという点で、非常に個性的なアルバムです。
叙情度・・9 プログレ度・・8 イタリア度・・10 総合・・8.5
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PFM「Per Un Amico」
イタリアのプログレバンド、PFMの1972年作
「友よ」のタイトルで知られるPFMの2作目にして初期の最高傑作。ともかく1曲め“Appena Un Po'”の美しさ。
のちに“River of Life”としてリメイクされるのだが、原曲のこちらの方がイタリア語の情感とともに、
はるかに叙情的に迫ってくる。繊細なフルートの音色、艶やかなヴァイオリン、アコースティカルでありつつ
ダイナミックな広がりも備えたPFM最高の名曲のひとつだ。テクニカルなリズムの上にピアノとヴァイオリンが鳴る
“生誕”は“MR. 9 `TIL 5”として「Photos of Ghosts」にてリメイクされる佳曲。間奏部のフルートが楽しい。
しっとりと叙情的な“友よ”、牧歌的でありながら展開に富んだ“晩餐会”、ラストの“ゼラニウム”まで全5曲35分弱であるが、
クラシカルな楽曲の美しさ、卓越した演奏力、どこをとっても質が高く、まさしく「甦る世界」と並ぶ彼らの代表作である。
叙情度・・10 プログレ度・・8 イタリア度・・10 総合・・9
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PFM「Photos of Ghosts」
PFMの1973年作
本作は3作目で、英語による世界デビュー盤。個人的にも一番最初に耳にしたイタリアの作品で、
美しい点描のジャケと、「幻の映像」という日本タイトルにはひどく胸をときめかせたものだ。
まずはなんといっても、1曲目の“River of Life”が素晴らしい。やわらかなフルートとシンセが合わさり
ゆるやかに盛り上がってゆくこの美しさは筆舌に尽くしがたい。続く2曲目の“Celebration”のコミカルなキャッチーさ、
たおやかなピアノで始まる“Old Rain”の優しい情緒、マウロ・パガーニのヴァイオリンにアコースティカルな素朴さと
クラシカルな感触で聴かせる大曲“Il Banchetto”、テクニカルな演奏が見事な“Mr.9'til5”など、どの曲もじつに味わい深い。
叙情度・・9 プログレ度・・9 イタリア度・・9 総合・・9
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PFM「The World Became The World」
プレミアータ・フォルネリア・マルコーニの1974年作
「甦る世界」のタイトルで知られる本作は、まさに絶頂期の傑作だ。緑色のジャケがイタリア語盤で、この青ジャケは英語盤である。
PFMの作品では自分は基本的にイタリア語のものが好きなのだが、本作に関してはこの英語版もお気に入り。
壮大な混声コーラスで幕を開ける“The Mountain”のダイナミズムにまず感動。リマスターによる音も素晴らしく、
ドラマティックに展開する楽曲にぐいぐいと惹きつけられる。イタリア語盤未収録のタイトル曲は美しいメロディに泣きまくり、
そして、本作ハイライト“Four Holes in the Ground”は、躍動する5拍子のリズムとメロディが合わさった名曲中の名曲
イタリアらしさはやや薄れたが、素晴らしい演奏テクニックとダイナミズム、そして叙情が同居した、まさに歴史的な名盤である。
ドラマティック度・・9 プログレ度・・9 イタリア度・・8 総合・・9
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PFM「CHOCOLATE KINGS」
プレミアータ・フォルネリア・マルコーニの1975年作
「甦る世界」までの初期の4枚に比べ、人気がいまひとつであるようだが内容的にはまったく劣らない。
むしろで最もテクニカルな一枚といってもいいだろう。かつてのUK盤ジャケが太ったマリリン・モンローであったように、
巨大化するアメリカを揶揄した作品で、1曲目の“FROM UNDER”から、その見事な演奏に引き込まれる。
ダイナミックなアンサンブルにマウロ・パガーニのたおやかなフルートとヴァイオリンが加わって、
これまで以上に音の厚みと静と動のメリハリがついたサウンドは、バンドとしてのひとつの頂点というべき輝きに満ちている。
もちろん、テクニックだけでなく、メロディにはしっかりイタリアの情緒と地中海的な優しさが残っていて、
歌ごころを忘れない楽曲作りには敬服するばかり。テクニカルさとメロディと叙情のバランスがとれた傑作アルバム。
メロディアス度・・8 プログレ度・・9 イタリア度・・7 総合・・9
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BANCO DEL MUTUO SOCCORSO
イタリアのプログレバンド、バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソの1st。通称「バンコの壺」1972年作
イタリアの1971〜1973年あたりは数多くの「名作」が生まれた数年間だが、このアルバムもそのひとつ。
キーボードをメインにしたプログレという点では、EL&Pなどとともに後のバンド達に多くの影響を与えた。
炸裂するクラシカルなキーボードに、70年代なのに妙に熱いギター、そして一転、リリカルなパートでは
たおやかなフルートに、素敵なジャコモさんのオペラティックなヴォーカルでしっとりと聴かせる。
ちなみにバンド名の意味は「共済銀行」。LPは壺型のジャケでも話題になった。
クラシカル度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・10 総合・・8
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BANCO DEL MUTUO SOCCORSO「Darwin!」
バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソの2nd。1972年作/「ダーウィン」
1st〜3rdはどれも甲乙つけがたい出来なのだがもっともイタリア的な濃密さで聴かせるのが本作。
個人的にもバンコの最高作だと思う。クラシカルなピアノの響きにイタリア語の歌声。
いかにもイタリア然とした混沌とした空気とジャコモ氏の存在感ある歌唱が合わさって、
唯一無二の世界観を描き出している。イタリア臭さの点では、OSANNAの名作「パレポリ」と双璧。
クラシカル度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・10 総合・・8.5
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BANCO「BANCO」
バンコの1975年作/邦題は「イタリアの輝き〜バンコ登場」
PFMに続き世界進出を狙った英語版アルバムで、新曲と過去の曲のリメイクからなっている。
バンコの場合、イタリア特有の癖の強さが魅力であるとも思うが、この英語盤では、それがやや薄れており、
いい意味で聴きやすい音になっている。この曲調に英語歌詞が合うかどうかはともかく、
リメイク曲もよりシンフォニックになって音のきらめきが心地よく伝わってくるという点で素晴らしい作品だと思う。
時期的には3rd「自由への扉」の後のアルバムで、キャッチーさとプログレ度のバランスも良く
従来よりもギターが活躍しており、ロックとしてのダイナミズムもUPしているように感じられる。
ラスト曲のキーボードなど、まるでJAP'sプログレのようにロマンティックな味わいだ。バンコ入門用にもぜひ。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・8 イタリア度・・7 総合・・8.5
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■壮麗なるストリングス
NEW TROLLS「CONCERTO GROSSO PER T」
イタリアンロックバンド、ニュー トロルスの1971年作
オーケストラのチューニング音から始まるこの作品は、クラシックとロックが華麗に融合した奇跡の一枚である。
とにかく、この美しすぎるストリングの音色!この泣きの旋律の前には言葉を失う。
バンドの演奏パートが無骨に思えてしまうほどに美しい…映画用のサントラとして作られたとはいえ、
この作品がバンドの名をイタリアンロックを語る上で一段引き上げたことは確かだろう。
バロックとロックの合体。これを聴かずしてクラシカルロックを語るなかれ。
旧B面のヘヴィなインプロ曲も、これはこれでしっかりプログレしているので案外悪くない。
クラシカル度・・9 美麗ストリングス度・・10 後半ヘヴィ度・・8 総合・・8
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I POOH「Alessandra」
イタリアンロックバンド、プーの5th。 1972年作
イタリアを代表する国民的な人気バンド。「ミラノの映像」の邦題で知られる本作は、
間違いなく初期の最高傑作である。艶やかなストリングスに導かれて、ゆるやかな叙情が舞い降りる。
繊細でありながらも情熱的なイタリア語の歌声が響きわたり、壮麗かつ雄大なオーケストレーションが一体となって、
哀愁のロマンが波のように押し寄せて、涙腺を刺激する。イタリアからしか出て来ない泣きの叙情美に胸震わせろ。
オーケストラ度・・9 泣きの叙情度・・10 イタリア度・・10 総合・・9
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I POOH「Un Po'del Nostro Tempo Migliore」
プーの7th。1975年作
初期の代表作となるのが、5作目「ミラノの映像」、6作目「パルシファル」、そしてこの「ロマン組曲」だ。
ゆるやかなオーケストラに導かれて…聴き手は、ジャケットのイメージのようなロマンとノスタルジーの世界へと引き込まれてゆく。
キャッチーですらある歌メロに艶やかなストリングスアレンジが加わり、ドラマティックかつ優美に盛り上げてゆく、
優雅なサウンド構成が素晴らしい。あくまで歌心を中心にした楽曲には難解さはなく、プログレ、ラブロックうんぬんを抜きにして、
純粋に音楽として耳に優しく、心地よいのだ。ラストの10分を超える大曲の雄大さも聴きどころ。
メロディアス度・・9 しっとり優美度・・10 イタリア度・・10 総合・・9
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IL ROVESCIO DELLA MEDAGLIA 「Contaminazione」
イタリアのプログレバンド、RDMことロベッショ・デッラ・メダーリャの1973年作
「汚染された世界」と題された本作は、このバンドのキャリアの中でも異色ともいうべき壮麗なクラシカル作品となっている。
ルイス・エンリケス・バカロフをプロデューサーに迎えバッハの曲をモチーフに、オーケストラを大胆に取り入れたサウンドは
華麗にして濃厚。きらびやかなシンセに典雅に鳴り響くチェンバロ、躍動するリズムと泣きのストリングス、
イタリア語の歌唱が濃密に合わさり、感動的に盛り上げてゆく。イタリアからしか出て来ないバロックな美学を貫いた傑作。
クラシカル度・・9 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・9
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QUELLA VECCHIA LOCANDA「Il Tempo Della Gio」
イタリアンロックバンド、クエラ・ヴェッキア・ロカンダの2nd。1974年作。
「歓喜の時」の邦題で知られる本作は、「泣きのストリングスを聴くにはこの作品」と言われてきたほどの名作だ。
イントロのクラシカルなピアノからして美しいのだが、続いて入って来るアコースティックギターと
泣きのヴァイオリンの絡みはまさに絶品。そして盛り上がりでのストリングスによる大叙情にはただもううっとりだ。
ここまで泣きの叙情を聴かせてくれるヴァイオリン入りのロックはそうあるものではない。
やや粗削りだった1stに比べて音自体が洗練されたことで、バンドとしてのアンサンブルも向上している。
ラストのヘヴィな大曲2曲も聴きどころ。NEW TROLLSの「コンチェルト・グロッソ」に匹敵する名作である。
クラシカル度・・9 イタリア度・・8 泣きのヴァイオリン度・・10 総合・・8.5
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Caterina Caselli 「Primavera」
イタリアの女性シンガー、カテリーナ・カセッリの1974年作
イタリアを代表するカンタウトリーチェとして知られる存在で、60年代の作品はポップな作風であったのが
「組曲・春」と題された本作は、壮麗なオーケストラをバックにしたシンフォニックかつ優美なアレンジで、
プログレファンから人気の高いアルバムとなっている。美しいストリングスをバックに優しく響き渡る、
イタリア語による彼女の歌声には何度聴いてもうっとりである。優雅なクラシカル性に包まれた気品と、
艶めいた表現力の女性ヴォーカルが合わさった、絶品のオーケストラ・シンフォニックロックが味わえる。
シンフォニック度・・9 クラシカル度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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ALICE(Visconti)「La Mia Poca Grande Eta'」
イタリアの女性シンガー、アリーチェ・ヴィスコンティの1st。1975年作
邦題「夢の中の少女」と題されたこの作品は、美しいジャケの通りにサウンドも素晴らしく
クラシカルなピアノの音色に、瑞々しい彼女の歌声…そしてイタリア語の響きもじつに美しい。
I POOHの協力もあったということで、バックのストリングスの優雅な響きに包まれて
絶品のメロディと幻想的な雰囲気が合わさった、シンフォニック性も有した傑作だ。
感動的な5曲目あたりの歌メロにぐっとこない日本人はいまい。女性Voファンは必聴。
彼女はこのデビュー当時21歳。内ジャケ写真のあまりの美女ぶりにもうっとりです。
メロディアス度・・8 クラシカル度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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IL GIARDINO DEI SEMPLICE
イタリアンロックバンド、ジャルディーノ・デイ・センプリーチの1st。1975年作
美しいストリングスとピアノの響きに、イタリア語による甘い歌声、女性コーラなどスも含んだ優雅さと
哀愁を漂わせたサウンドは、I Poohなどと並ぶ、イタリアンラブロックの傑作といえるだろう。
キャッチーであるがロックとしてのダイナミズムもしっかりとあり、やわらかな叙情性に聞き入れる。
オルガンを含んだシンセやストリングスのアレンジも見事だ。ロマン溢れるサウンドが好きな方へ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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■イタリアの濃密&幻想系
MUSEO ROSENBACH「ZARATHUSTRA」
イタリアのプログレバンド、ムゼオ・ローゼンバッハの1973年作/邦題
70年代に彼らが残したこの唯一のアルバムは、イタリアンヘヴィプログレの名盤として語られている。
ニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」をテーマにした、哲学的かつ壮大な内容で、
メロトロンとギターによる重厚なサウンドは、プログレ好きのメタラーなどにも聴きやすいだろう。
かく言う筆者も、この作品とオザンナ「パレポリ」によってイタリアンロックの深みにどっぷりとハマったのである。
タイトル組曲の完成度はもちろんのこと、音自体に内包されたミステリアスな雰囲気が素晴らしい。
プログレを聴く人間であれば、PFMの「友よ」と、オザンナの「パレポリ」、そして本作はチェックすべきだろう。
シンフォニック度・・8 重厚度・・8 完成度・・9 総合・・8.5
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OSANNA「PALEPOLI」
イタリアのプログレバンド、オザンナの3rd。1973年作/「パレポリ」
70年代イタリアンプログレの中でも、CERVELLOの「MELOS」と並んで、もっとも幻想的であり、
完成度の高いアルバムがこれだ。妖しい鈴の音とともに太古の儀式を思わせるような雰囲気から、
フルートが鳴りだし、うねるようなギターとメロトロンが合わさって、祝祭めいたサウンドが作られると
やがて幻想都市パレアポリスが目に浮かぶ。アコースティックギターやイタリア語の歌声による叙情性を含んだ、
メリハリある展開力とともに、濃密な空気がかもしだす特有の迫力は、このバンドならではのものだろう。
吹き鳴らされるフルート、荒々しいギター、フェリーニの映画のような混沌と呪術的な幻想性…
すべてにおいてイタリアからしか出て来得ない奇跡的な傑作である。
ドラマティック度・・8 濃密度・・9 イタリア度・・10 総合・・8.5
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CERVELLO「Melos」
イタリアンロックの名作、チェルヴェッロの1973年作
のっけから神秘的なスキャットコーラスとアコースティックギターの調べで、不思議な幻想世界へといざなわれる。
キーボードがいないというのが信じられないほど、バンドの音には広がりがあり
アコースティックギターに絡む、エフェクトされたサックス、フルート、ヴィヴラフォンなどが
ときにやわらかく、ときに刺激的に鳴らされ、ときに爆発し、独自のサウンドを形成しています。
神秘的で呪術的…神話をモチーフにした歌詞も文学的で、ある種、崇高さと毒気を併せ持っています。
絶品の演奏力と情景描写力をもったこの作品は、イタリアンロックに生まれた芸術とさえ言えるでしょう。
メロディアス度・・7 イタリア度・・9 神秘性度・・10 総合・・9
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RACCOMANDATA RICEVUTA RITORNO「Per... Un Mondo Di Cristallo」
イタリアのプログレバンド、ラコマンダータ・リチェヴータ・リトルノの1972年作
「水晶の世界」と題された本作は70年代に発表されたバンド唯一の作品。
神秘的なオルガンが鳴り響き、しっとりとしたフルートとアコースティックギターによる繊細さと
OSANNAにも通じるような妖しい祝祭を思わせる世界観、ぐっと耳を惹きつける。
いかにもイタリア然とした芸術性と、頽廃と混沌、そして幻想的な叙情美…奇跡的な一枚という点では、
CERVELLOの「MELOS」と並ぶ傑作である。バンド名の意味は「到着返信書留郵便」だそう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・8.5
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楽曲は5分前後と当時のイタリアンロックにしてはまとまっていて、案外聴きやすい。
哀愁を感じさせるギターのメロディも随所に効いていて、イメージよりもずっと叙情派の傑作です。Amazon.co.jpで詳細を見る
Biglietto Per L'inferno
イタリアのプログレバンド、ビリエット・ペル・リンフェルノの1974年作
MUSEO ROSENBACH、SEMIRAMISとともに、イタリアンヘヴィプログレの隠れた傑作とされる1枚。
二人のシンセ奏者によるオルガンとムーグを中心に、牧歌的なフルートが叙情を添えつつ、
イタリア語の歌声とともに濃厚に聴かせる作風。静と動のメリハリのある曲調はI Gigantiなどにも通じる。
70年代ブリティッシュロック的な荒々しいハードさとブルージーな雰囲気もありながら、
随所にピアノやアコギなどによる美しさも交えているのがいかにもイタリアのバンドらしい。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 イタリア度・・8 総合・・8
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■クラシカルなキーポード!
IL BALLETTO DI BRONZO「Ys」
イタリアのプログレバンド、バレット・ディ・ブロンゾの2nd。1972年作
イタリアンロックの中でもシンセをメインにしたプログレとしては筆頭の名作。
妖しい女性スキャットとクラシカルなオルガンの音色からして、すでに引き込まれるが
5つの楽章に分かれた組曲方式で展開される緻密な楽曲は、E&LPなどとはまた違った
イタリア独自の濃密な薄暗さに包まれていて、神秘的なまでに妖しく、そして美しい。
ジャンニ・レオーネのシンセプレイは日本のARSNOVAなどにも大きな影響を与えている。
ドラマティック度・・8 キーボー度・・8 イタリア度・・9 総合・・8.5
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PAOLO RUSTICHELLI-CARLO BORDINI「OPERA PRIMA」
イタリアのシンフォニックロックユニット、ルスティッキエリ & ボルディーニの1973年作
当時16歳の鍵盤奏者ルスティッキエリと、ドラマーのボルディーニによるデュオでのっけから壮大なメロトロン、
アープシンセによる分厚いキーボードサウンドが度肝を抜く。つづいてメロトロンをバックに端正なピアノが美しいスローパートにうっとり。
1曲目はイタリアンロックにおいて最高のメロトロン曲といってもいいだろう。2曲目以降は歌入りで、KEYの歌うダミ声まじりの絶叫が
やや耳につくので、これでもし専任Voが歌っていたら比類なき名作として語られたであろうに。まあ欠点のVoを差し引いても
必聴クラスのアルバムであるには違いない。とにかく絶品のピアノ&メロトロンは素晴らしいのひと言。
シンフォニック度・・9 メロトロン度・・9 Vo声質・・2 総合・・8.5
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INFINITY 「Planetarium」
イタリアのプログレバンド、インフィニティーの1971年作
オルガンが鳴り響く中、荘厳なコーラスが響くイントロ曲から、やわらかなフルートにアコースティックギターが絡み
ピアノとパーカッションによるジャズタッチのアンサンブルなど、牧歌的な感触に優雅なクラシカル性も含んだ聴き心地。
メロトロンにメロウなギターが鳴り響く、シンフォニックロックの質感も現れて、オールインストながらも「世界」を描くという
壮大なコンセプトを感じさせる。たおやかなピアノにメロトロンがかぶさる美しさには、多くのシンフォファンがうっとりだろう。
本作が唯一の作品というのが惜しまれる、メンバーも謎という異色の力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・7 総合・・8
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Le Orme「Contrappunti」
イタリアのプログレバンド、オルメの6th。1974年作/邦題は「夜想曲」
のっけからドカドカとハードなドラムで聴かせるインスト曲で始まり、
全体的にも以前の作品よりも楽曲としてのメリハリがついてきているように思う。
相変わらずのくぐもったオルガンとメロトロンの音色などはいかにも幻想的で、
クラシカルなピアノとともにプログレ的な…というかEL&P的なアンサンブルを聴かせる。
一方では牧歌的な歌もの曲なども、いかにもイタリアらしい繊細な美に溢れている。
クラシカル度・・8 繊細度・・8 幻想度・・8 総合・・8
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TRIADE「1998: La Storia Di Sabazio」
イタリアのプログレバンド、トリアーデの1973年作/邦題「サバツィオの物語」
シンセ、ベース、ドラムという、いわゆるキーボードトリオの編成で、本作が唯一の作品。
オルガンが幻想的に鳴り響き、いくぶんアヴァンギャルドな展開力とともに、EL&Pを優雅にしたようなサウンドを展開。
クラシカルなチェロの響きや繊細なピアノなど、ゆるやかな叙情パートを含んだ緩急ある構築力で、12分の組曲を描いてゆく。
アルバム後半では、イタリア語のヴォーカルや、アコースティックギターも加わった優美なナンバーも魅力的。
全31分という短い作品であるが、繊細でクラシカルなキーボードロックが味わえる逸品です。
クラシカル度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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FESTA MOBILE「DIARIO DI VIAGGIO DELLA FESTA MOBILE」
イタリアのプログレバンド、フェスタ・モビーレの1973年作
バンドというよりはセッションミュージシャンの作ったアルバムということで、楽曲性というよりはむしろ
演奏とアンサンブルに重きを置いた作風で、1曲目から高速かつ正確無比のピアノが乱舞する。
歌もの曲もあるが、とにかくテクニックと繊細さを併せ持ったピアノが見事で、かっちりとしたリズム隊と
そこにからむロック的なギターをねじふせるだけの説得力がある。もう少しメロディアスなフックがあればと思うが、
この硬派な聴き心地は玄人好みであろう。当時のイタリアンプログレの熱が生み出した鍵盤プログレの傑作といえる。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 鍵盤度・・8 総合・・8
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Luciano Basso「Voci」
イタリアのミュージシャン、ルチアーノ・バッソの1976年作
クラシカルなピアノの旋律にヴァイオリンが絡み、メロウなギターにメロトロンが加わると、
インストによる優美なシンフォニックロックの趣になる。オルガンを乗せて変拍子リズムを含んだ
プログレらしい感触もありつつ、クラシックを基盤にした優雅なピアノがサウンドを包み込む。
10分前後の大曲も、美しいピアノとギターにヴァイオリンを重ねて繊細な美意識を描く、
いわば現代クラシックをロック化したようなサウンドが楽しめる。メロトロンやオルガンなどの
ヴィンテージな味わいと、チェンバー系シンフォというべき優雅さが融合した逸品です。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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■ドラマティックなコンセプト作
LATTE E MIELE「PAPILLON」
イタリアのプログレバンド、ラッテ・エ・ミエーレの2nd。1973年作
荘厳なトータル作「受難劇」が有名であるが、ノンフィクション小説をテーマにした7部構成の“組曲パピヨン”を含む本作は、
完成度ではむしろ上をゆく。ELPばりに鳴り響くオルガンの音色にイタリアらしいクラシカルなメロディが合わさって、
映画的な語りやアコースティカルなパートを含めて、優美にそしてドラマティックに楽曲は展開してゆく。
むしろ「受難劇」よりも、このバンド本来のやわらかな繊細さが味わえる傑作である。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・9 繊細叙情度・・9 総合・・8.5
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i GiGanti「Terra in Bocca」
イタリアンロックバンド、ジガンティの1971年作
「犯罪の歌」という日本タイトルもインパクトが大きいが、本作はもともとビートポップバンドであった彼らが
突如プログレッシブな一大組曲を作り上げたということで、イタリアンロック好きにも評価の高い1枚。
アコースティックギターやピアノ、フルートの響きに、哀愁漂うイタリア語のヴォーカル、
キャッチーなコーラスハーモニーとメロトロンなどが重なり、ときにシンフォニックな美しさと
緊張感をともなったダイナミックな展開がじつに見事だ。クラシカルな濃密さと牧歌的な叙情、
そして爽やかさの中にほのかに漂う翳り…これはまさにイタリアからしか出て来ない音ですな。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 イタリア度・・9 総合・・8
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ALUSA FALLAX「Intorno alla mia cattiva educazione」
イタリアンロックバンド、アルーザ・ファラックスの1974年作/邦題「私の奇妙な教育法について」
アルバム一枚のみを残して消えたこのバンド、本作は、プログレ的な変拍子リズムをたっぷり使いつつ、
13の小曲をつなげたストーリー性のある流れで、メロトロンを含むシンセにたおやかなフルートの音色、
繊細なピアノなど、クラシカルなシンフォニック性と語りを含んだシアトリカルな展開力が合わさって、
リリカルでありながら、イタリアらしい混沌とした妖しさも覗かせる。ヴォーカルの歌声は野太い声でやや好みを分けるが、
クラシカルで優雅な演奏は大変素晴らしく、メリハリある構築力とともにコンセプチュアルなドラマ性を描いてゆく傑作だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 うっとりフルート度・・9 総合・・8
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Goblin「Il Fantastico Viaggio del
Bagarozzo Mark」
イタリアンロックバンド、ゴブリンの1978年作/邦題「マークの幻想の旅」
本作は、ゴブリンの作品中でも、最もシンフォニックで、プログレとしても一番好きなアルバムだ。
美しい色彩のジャケのイメージ通り、幻想的なコンセプト作となっていて、ムーグシンセの音色に
メロディアスなギターが重なり、物語を歌いあげるかのようなヴォーカルとともに、叙情たっぷりに聴かせる。
「サスペリア」や「ゾンビ」といったサントラ作品が有名なこのバンドだが、インスト曲を作る方法論も
本作中に活かされており、ヴォーカル曲の合間に小曲をはさむことで、物語的な世界観を演出している。
メロディアス度・・8 幻想度・・9 イタリア度・・9 総合・・8
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■イタリアの叙情美
FORMULA 3「LA GRANDE CASA」
イタリアンロックの名作、フォルムラ・トレの4th。1973年作/邦題「神秘なる館」
知名度としては前作「夢のまた夢」だが、個人的にはこのアルバムこそが最高傑作だと思う。
アコースティカルなギターの響きと、そこに絡むキーボードが美しい、しっとりと優美なイントロは、
シンフォニックロック的な神秘さを感じさせる。イタリアらしい情緒豊かなヴォーカルが加わる曲では、
彼らの持ち味である歌ものとしての魅力が存分に発揮される。繊細にして詩情を感じさせる逸品だ。
メロディアス度・・8 アコースティックな美度・・9 イタリア度・・9 総合・・8
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IL VOLO「ESSERE O NON ESSERE?」
イタリアンロックバンド、イル・ヴォーロの2nd。1975年作
元FORMULA 3のアルベルト・ラディウスを中心、たった二作を残して消滅したバンド。
2作目の本作では、前作よりも歌パートが減り、インストとコーラスがメインになったことで、勢いのある演奏で始まる。
しかし、すぐにまたアコースティカルな情緒を折りこまれ、バンドの本質が変わっていないのが分かる。
ジャズロック的に跳ねるリズムと、美しいシンセ、ギターが一体となったアンサンブルが素晴らしい。
まさにジャケットのようにブルーの叙情…けっして押しつけがましくない内的な激しさが音にある。
よりロック的なダイナミズムに満ちた2ndと、たおやかな叙情の1st、どちらにも捨てがたい魅力がある。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 アンサンブル度・・9 総合・・8
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MAXOPHONE
イタリアンのプログレバンド、マクソフォーネの1975年作
プログレをかじり始めの頃、友人に借りて聴いた本作であるが、その完成度の高さにはやはり唸らされる。
イタリアらしい叙情性を保ちながらも躍動感に溢れる演奏力の高さでは、PFMにも通じ、
美しいコーラスメロディやリリカルなフルートなどもバランスよく曲を彩っている。
対位法の使われ方なども非常に巧みで、バランスが自然であるので音にはまったく嫌味がない。
聴きやすいが奥も深い。イタリアンプログレ入門用としてはマストアイテムの一枚である。
メロディアス度・・9 イタリア度・・7 楽曲・・9 総合・・9
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Angelo Branduardi「Alla Fiera Dell Est」
イタリアのシンガー、アンジェロ・ブランドゥアルディの1976年作
Franco Battiatoと並ぶカンタゥトーレの重鎮の一人で本作は70年代の名作とされる。
アコースティカルな牧歌性と、イタリア語によるやわらかな歌声で聴かせるサウンドは、
アコースティックギターにマンドリンの音色にフルート、オーボエ、ヴァイオリンなど
クラシカルな優雅さも含んでいて、PFMなどにも通じる地中海の風を感じさせる。
素朴な叙情と繊細でありなが表現豊かな歌声が素晴らしい傑作だ。
アコースティカル度・・8 素朴な叙情度・・9 イタリア度・・9 総合・・8
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LOCANDA DELLE FATE「Forse Le Lucciole」
イタリアのプログレバンド、ロカンダ・デッレ・ファーテの1977年作/邦題「妖精」
この美しいジャケのイメージ通り、ロマン溢れだすような、美麗なメロディが満載の名作。
美しいピアノに導かれて、メロウなギターと繊細なシンセワークに、しっとりとしたフルートが加わると、
やわらかな情感に包まれた極上のシンフォニックロックとなる。まさに妖精のような優しいサウンドだ。
また、アンサンブル的にも優れた展開力で、リズミカルな軽やかさがキャッチーな聴き心地となっている。
これぞイタリアが生み出した美の結集。ヴォーカルの太めの歌声が粗暴に思われるほどだ。
メロディアス度・・9 美麗度・・9 イタリア度・・8 総合・・8.5
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Blocco Mentale 「Poa」
イタリアのプログレバンド、ブロッコ・メンターレの1973年作
バンドの唯一の作品で、自然への回帰をテーマにしたスピリチュアルなコンセプト作で、
サックスやフルートが鳴り響き、ピアノやオルガン、メロトロンにイタリア語のヴォーカルを乗せて、
ゆったりとした叙情性とほどよく偏屈でプログレ的な展開も含んだサウンドを聴かせる。
優雅でありながらもどこか混沌とした空気感は、いかにもイタリアのバンドらしく、
メロトロンがストリングス的に鳴り響く、I PoohやMAXOPHONEあたりにも通じる
優美なナンバーや、アコースティックなパートを含む繊細な叙情も魅力的だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・8
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■イタリアのジャズロック系
AREA「Arbeit Macht Frei」
イタリアのジャズロックバンド、アレアの1st。1973年作
世界的に見ても、70年代でもっとも個性あるバンドのひとつであり、そのサウンドは地中海とアラビックな土着性の融合ともいうべきもので、
ひとことで言うならば、民俗的なジャズロックということなのだろうが、躍動するリズムにはプログレとしての複雑さと、
ロックとしてのダイナミズムも備わっている。巧みな演奏力とアンサンブル、そこに乗るデメトリオ・ストラトスの力強い歌声も
インパクト充分で、このバンドの大きな個性となっている。また楽曲にはイタリアらしい混沌とした芸術性も感じられ
妖しげなフルートの響き、シンセの使い方などはプログレそのものである。濃密な傑作だ。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 躍動する演奏度・・9 総合・・8.5
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AREA「1978」
イタリアのジャズロックバンド、アレアの5th。1978年作
ブルガリアントラッド的に跳ねるリズムの上に、デメトリオ・ストラトスの強力な歌声を乗せ、たたみかけるジャズロックサウンドは、
まったくもってインパクト充分。アコースティック楽器が主体であるのに、このパワーには圧倒させるばかり。
変拍子入りのテクニカルなキメをさらりとこなし、それでいてまとまりのある聴き心地があるのは、
ある意味で驚異的であるし、中近東やバルカンテイストを巧みに取り入れつつ、イタリア的な情緒を
そこに重ね合わせるセンスというのは、ちょっと他のバンドには真似のできない芸当であろう。
本作発表の翌年、デメトリオ・ストラトスの病死により、バンドは方向性を見失い、アルバム1枚を作るも、その後解散に至る。
それだけにこの作品の躍動ときらめきは、語り継がれる伝説となり、今なお輝き続けている。
メロディアス度・・7 ジャズロック度・・8 躍動する演奏度・・9 総合・・8.5
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ARTI + MESTIERI「Tilt」
イタリアのプログレ・ジャズロックバンド、アルティ・エ・メスティエリの1st。1974年作
「芸術家と職人」を意味するバンド名をもち、本作はイタリアンプログレ、そしてジャズロックとしての最高傑作。
フリオ・キリコの手数の多いドラムと、艶やかなヴァイオリンの音色、鳴り響くサックス、
プログレ的なシンセとともに、優雅でメロディックな聴き心地と、たたみかける勢いに満ちた
圧倒的なアンサンブルに引き込まれる。一方ではイタリア語の歌唱で聴かせる叙情性もあって、
プログレ性と技巧的なジャズロックのバランスのとれたサウンドである。2nd「明日へのワルツ」も必聴。
メロディアス度・・8 ジャズロック度・・8 構築度・・9 総合・・9
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ARTI+MESTIERI「GIRO DI VALZER PER DOMANI」
アルティ・エ・メスティエリの2nd。1975年作/邦題「明日へのワルツ」
「TILT」はまさに技巧の極地で驚異の出来であったが、続く本作はジャズ色を増し、歌も入った大人の作風に。
ただし強烈無比のテクニックは健在で、特に伝説のドラマー、フリオ・キリコの手数の多さは変わらず、
ゆったりテンポの曲においても無駄とも思えるもの凄い手数で、やかましいほどに凄い。
メロディアスで緻密なアンサンブルは、切れ味鋭く聴くものの口をあんぐりとさせる。
もはやジャズロックというジャンルを超えた、幅広く全てのプログレファンが聴くべきクオリティ。
イタリアンロックの素晴らしさを知る入門用としては、PFMと並んでこのバンドが最適であろう。
メロディアス度・・8 技巧派ジャズロック度・・9 テクニカル度・・9 総合・・9
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ETNA「ETNA」
イタリアのプログレ・ジャズロックバンド、エトナの1975年作
イタリアといえば、超絶技巧ジャズロックバンドARTI+MESTIERIがまず有名だが、
このバンドは派手さではアルティに譲るものの、クオリティの面では充分互角に立ち合える。
非常に作りこまれた緻密な楽曲は、テクニカルで硬質な印象とともに緊張感に満ち、
4人のメンバーの完璧なアンサンブルが一体となって凄まじい音のテンションを形作ってゆく。
ギターが奏でるメロディの質感には時にハードロック色もあり、テクニカルハードのリスナーすらも
唸らせることうけあい。硬質系のイタリアンジャズロックとしては屈指の完成度の傑作です。
メロディアス度・・7 ジャズロック度・・9 テクニカル度・・9 総合・・9
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OSANNA「Landscape of Life」
イタリアンロックバンド、オザンナの4th。1974年作/邦題「人生の風景」
傑作「PALEPOLI」に続くアルバムであるが、前作での濃密で混沌とした土着性は薄れて、
サックスの音色とともに、ジャズロック的でもある軽快なアンサンブルが強まっている。
それでも、うっすらとしたメロトロンの音色やイタリア語の歌声による叙情性は残っていて、
アコースティカルな部分とたたみかける勢いとのコントラストで聴かせるオザンナ節は健在。
プログレとしてのテクニカルさと軽快なジャズロック色に、イタリアの叙情が合わさった傑作です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 イタリア度・・8 総合・・8
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Libra「Musica & Parole」
イタリアのプログレバンド、リブラの1975年作
アコースティカルにしっとりと始まりつつ、イタリア語の歌声にギターとシンセが絡み、
キャッチーなメロディとともに、ジャズロック的なテクニカルな演奏が繰り広げられる。
ベースのハネる感じがファンキーなノリをかもしだし、それがイタリアンロックの濃密さと上手く融合。
音質も大変良好で、年代を考えれば非常に厚みのあるサウンドだろう。
一方では繊細な叙情美もあり、ピアノに乗せたしっとりとした歌を聴かせるシンフォ曲もGood。
楽曲のメリハリのつけ方はとても洗練されていて、素晴らしい演奏力とセンスが合わさった
非常に質の高い作品だ。これはイタリアンロックの隠れた傑作といってもいいだろう。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 ファンク風ジャズロック度・・8 総合・・8
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CHERRY FIVE
イタリアのプログレバンド、チェリー・ファイヴの1976年作/邦題「白鳥の殺意」
GOBLINの前身としても知られるバンドの唯一のアルバム。ジャズロック的なアンサンブルに、
メロトロンやオルガンを重ね、英語によるヴォーカルで聴かせる、軽妙なプログレサウンド。
当時のイタリアンロックの中では、スタイリッシュな部類の作風で、演奏力の高さも含めて、
PFMなどにも引けを取らないレベルである。優雅な叙情に包まれた「ドリアン・グレイの肖像」や
2パートに分かれた「白鳥の殺意」など、キャッチーなメロディアス性とテクニカルな展開力が合わさった、
シンフォニック・ジャズロックというべきサウンドが楽しめる。若きクラウディオ・シモネッティの才能が輝く傑作である。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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STORMY SIX 「L'Apprendista」
イタリアのプログレバンド、ストルミィ・シックスの1978年作
60年代から活動するバンドで本作がすでに6作目。軽やかなマリンバの響きに、サックス、ヴァイオリンの音色、
イタリア語のヴォーカルを乗せて、ジャズロック的な優雅さとアコースティカルな牧歌性が同居した作風で、
のちのアルバムに比べるとずいぶん聴きやすい。コーラスを含んだ歌もの的なキャッチーさがあって、
とぼけた味わいと音楽的素養の高さという点では、GENTLE GIANTにも通じる味わいもある。
随所にリズムチェンジを含んだメリハリのある展開は、AREAにも通じるテクニカル性であるが、
定型のプログレらしさにこだわらない、より柔軟な音楽性がこのバンドの特徴だろう。
イタリらしさという点でも本作を代表作としてもよいと思う。玄人好みの傑作です。
プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・7 イタリア度・・9 総合・・8
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Picchio dal Pozzo
イタリアのプログレバンド、ピッキオ・ダル・ポッツォの1976年作
イタリアのバンドにおいては珍しいカンタベリーからの影響を受けたジャズロックで、
メロディックなギターのトーンにサックスやフルートが絡むやわらすなサウンドは、
HATFIELD AND THE NORTHあたりに通じる質感だが、シンセの奏でる叙情性は
やはりイタリアならではのもの。1980年の2ndではより難解な作風になるが、
本作でも随所にアヴァンギャルドな感性が見え隠れする。なかなか楽しい1枚だ。
メロディアス度・・8 ジャズロック度・・8 イタリア度・・7 総合・・8
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NOVA「Vimana」
OSANNAのエリオ・ダンナと、元CERVELLOのコッラード・ルスティーチを中心としたジャズロック・バンド、
ノヴァの2nd。1976年作。NEW TROLLSのレナート・ロセット、GENESISのフィル・コリンズも参加。
イギリスに渡ったイタリア人たちと、実力のあるメンバーたちによる演奏はさすがに見事で、
エリオのたおやかなフルート、サックスの音色に、コッラードのセンス溢れるギターワーク、
そこに軽快なリズムセクションが同居して、イタリアンロックとブリティッシュの不思議な融合がなされている。
上品でスタイリッシュなモダンさを有しつつも、メロディにはどこかイタリア特有の叙情が残っていて、
プログレッシブ系のジャズロック作としては希有なほどの上質なアルバムといえる。
メロディアス度・・8 ジャズロック度・・8 されどイタリア度・・8 総合・・8
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■イタリアの芸術系
Franco Battiato「Pollution」
イタリアの音楽家、フランコ・バティアートの2nd。1972年作/邦題「汚染」
艶やかなストリングスが鳴る、晩餐会のワルツと語りから始まる本作は、
前作以上にアヴァンギャルドな風味を増した、前衛プログレの芸術作である。
ノイジーなギターに重なるオルガンと爆発音のSE、さらにムーグシンセの響きは、
どこか不気味なものも内包していて、浮遊感のある女性スキャットなどとともに
ダークな美しさを描いている。イタリアらしいクラシカルな美意識を含ませながら、
組曲構成となったラストの12分の大曲では、予測のつかない展開に息をのむ。
メロディアス度・・7 前衛プログレ度・・9 イタリア度・・8 総合・・8
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JACULA「Tardo Pede in Magiam Versus」
イタリアの暗黒プログレバンド、ヤクラの1973年作/邦題「サバトの宴」
荘厳なチャーチオルガンの音色から始まり、典雅なチェンバロの響きに艶めいた女性ヴォーカルの歌声。
ロック色はほぼ皆無で、全編にわたって秘教的な妖しさを漂わせた異色のサウンド。
呪文を唱えるかのような女性のスキャットに身震いするか、あるいは笑うかで
この闇の幻想音楽を楽しめるかどうかが決まるだろう。フルートの音色に乗る女性声の美しさは
あのOPUS AVANTRAなどに匹敵するほど。まさにイタリアンロック異端の名作である。
荘厳度・・8 ロック度・・1 妖しさ度・・10 総合・・9
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OPUS AVANTRA 「Introspezione」
イタリアンロックの輝ける芸術、オパス・アヴァントラの1st。1974年作/邦題「内省」
アヴァンギャルドな感性とクラシックの気高さ、繊細かつ張りつめたような美意識に包まれ、
ピアノの一音さえもが空気を描きだすような意志をもっている、そんな孤高の傑作。
そして、歌姫、ドネラ・デル・モナコのオペラティックで崇高な歌声が胸を打つ。
クラシックを基盤にしつつ、ここまで革新的な音楽をいったい誰が創造できるだろう。
この時代、そしてこの国からでしか決して生まれえなかった音楽である。
プログレッシブロックを芸術とするのなら、本作こそまさにそれを体現した作品だ。
続く2nd「Lord Cromwell」とともに、イタリアの奇跡ともいうべき名作である。
クラシカル度・・9 アヴァンギャル度・・9 芸術度・・10 総合・・9
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OPUS AVANTRA 「Lord Cromwell Plays Suite for Seven Vices」
オパス・アヴァントラの2nd。1975年作/邦題「ロード・クロムウェル」
至高の芸術作品と名高き1st「内省」に続き、本作もクラシカルな優雅さで聴かせる絶品の傑作。
とにかく、荘厳なティンパニの響きから始まる1曲目“Flowers on Pride”の素晴らしさは筆舌に尽くしがたい。
たおやかに鳴らされるフルートと繊細なピアノの音色で、しっとりとゆるやかに盛り上がり、
妖艶なドネラの歌声とオペラティックな男女コーラスが重なってゆく。1stに比べてヴォーカル曲が減っているが、
むしろクラシカルな構築性は増していて、最後まで優雅な気分で鑑賞できるのが本作と言えるだろう。
バンドはこの作品のあと活動休止状態となるが、1989年になって3rd「Strata」を発表する。
クラシカル度・・9 アヴァンギャル度・・8 芸術度・・10 総合・・9
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SAINT JUST「Saint Just」
イタリアのプログレ・フォークバンド、サン・ジュストの1st。1973年作
クラシカルなピアノ、アコースティックギターなどの素朴なカンタウトーレ風味と前衛的な鋭さが同居したサウンドに、
アラン・ソレンティの妹であるジェニーの美声が響く。ジャケの雰囲気も合わさって、OPUS AVANTRAにも通じる芸術性があり、
ジェニーの歌声も時にエキセントリックな狂気を垣間見せるが、楽曲には牧歌的な聴きやすさがあり、決して難解ではない。
ミステリアスなRENAISSANCEという雰囲気もあり、繊細で素朴な音色を堪能できる。
イタリアの女性ヴォーカルものとしては指折りの作品であると言えるだろう。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Pierrot Lunaire「GUDRUN」
イタリアンロックバンド、ピエロ・リュネールの1977年作
北欧神話をテーマにした本作は、前作の素朴な作風から一転、優美なチェンバロにフルートの音色
そしてOPUS AVANTRAを思わせるようなオペラティックな女性ヴォーカルの歌声を乗せ、
クラシカルかつアヴァンギャルドな世界観を描きだす。優美だがどこか狂気をはらんだピアノの旋律、
ややチープなシンセを含めて演奏的にはつたなくとも、幻想的な空気をたたえた作風という点では、
Le Ormeをより耽美にしたという雰囲気でもあるかもしれない。妖しい魔力がかかった異色の力作だ。
クラシカル度・・7 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・8
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EMILIO LOCURCIO 「L'Eliogabalo」
イタリアのアーティスト、エミリオ・ルクレチオの1977年作
アヴァンギャルドなジャケのインパクトが印象深いが、サウンドの方もなかなか個性的である。
イタリア語による語りのような歌声に、美しいシンセアレンジと、ときにハードなギターが絡み、
万華鏡のように展開してゆく濃密なプログレ・ロックオペラ。小曲を主体に連ねた作風ながら、
ピエロ・リュネールのメンバーが参加していることもあって、アコースティックなパートを含む、
緩急のある楽曲構成とともに、随所に妖しく芸術的なセンスが炸裂している。
ときに早口になったりとシアトリカルなヴォーカルのインパクトもかなりのもので、
配役によって女性ヴォーカルも加わって、演劇的な雰囲気に包まれた空気感が楽しめる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・8
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*イタリアン・シンフォニックロック新世紀
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