北欧プロクレ/シンフォニックロック新世紀

普通プログレといえば、ブリティッシュロックか、あるいはイタリアンロックなどを挙げる方が多いことでしょうが、
私の場合は、最も感性に合う音楽性(メロディ)を感じたのは北欧のバンドたちでした。
70年代の北欧のプログレシーンは、KAIPASAMLAなど一部のバンドを除いては、録音や機材の面での遅れもあってか、
音楽的なクオリティにおいてイギリスやイタリアのバンドに対抗できるバンドは数えられるくらいしかなかったと思います。
そんな中でも、KAIPADICEの残したアルバムは、現在のシンフォニック系バンドにもひけをとらない
素晴らしいメロディと北欧的な叙情美を有していたと思います。

  

80年代に入ると、北欧のプログレシーンはほぼ壊滅的にしぼんでしまいます。
そこには商業音楽の台頭と、北欧系HR/HM系バンドのめざましい活躍もあり、
プログレッシブロックがもはや一般の人々の関心を買わなくなったということもあったでしょう。
そんな状況下でも、スウェーデンではISILDURS BANETRIBUTE、ノルウェーではKERS PINK
フィンランドではPEKKA POHJOLAといったアーティストが、商業音楽とは無縁に地道な活動を続けてゆきます。


    

90年代に入ると、マイナーながらスウェーデンからLANDBERK(後のPAATOSの母体)が現れ、
続いて、それまでの北欧シーンの停滞を一変させるような作品が登場します。
それがANGLAGARDの1st「hybris」でした。
北欧的な薄暗さと土着性、そしてメロトロンによるレトロな質感を織りまぜたそのサウンドは、
まさに過去と現在をつなげるシンフォニックロックの金字塔的作品となったのでした。
それに呼応するかのように、KAIPAのギタリストであったロイネ・ストルトが「THE FLOWER KING」というアルバムで復活します。
そこにはあったのはまぎれもなく、かつてあったプログレッシブな精神と、北欧らしい豊かなメロディの詰め込まれた音楽でした。
ロイネ・ストルトはこの後、THE FLOWER KINGSを結成し、後の北欧シンフォニック興隆の牽引役となるのです。
さらに、ANGLAGARDの後を受けて登場したANEKDOTENは、メロトロンを大々的に使用したレトロなサウンドと
初期クリムゾンのヘヴィさと暗い翳りを有して、あっと言う間にプログレファンの心をつかんだのでした。
                   
  

そうして、新世紀を迎えた現在、インターネットなどの発達により北欧のバンドたちは世界中でしだいにその認知度を深めてゆきます。
THE FLOWER KINGSを筆頭に、PAR LINDH PROJECT、さらにはKAIPAの復活や、ANEKDOTENの成功などもシーンの拡大に拍車をかけ、
それとともにスウェーデンのみならずノルウェーやフィンランドなどからも、新世代のシンフォニックロック系バンドが次々に登場してゆきます。

こうして、かつては辺境の土地とされていたスカンジナヴィアは、現在ではシンフォニックロックの最重要拠点となりつつあるのです。
以下では、近年の北欧の傑作シンフォニック/プログレ作品を厳選して紹介します。

                                    2007.5.14 緑川 とうせい



北欧プログレ/シンフォニックロック傑作選

〜2000年以降の傑作アルバムを厳選しました



◆シンフォニック&メロディック系〜北欧の叙情美とやわらかなメロディ

THE FLOWER KINGS「THE RAIN MAKER」
スウェーデンのシンフォニックロック、フラワー・キングスの6th。2001年作
2枚組の大傑作「The Flower Power」、ゆったりとしたメロディックな好作「Space Revolver」をへて、
6作目となる今作は、一言で言うと自然体なアルバムで、そのサウンドにはなんの気負いも感じられない。
1曲目冒頭のダークなメタリックなリフに驚くが、その後は適度に余裕のある楽曲がバンドの年季を感じさせる。
メロディの流れ、流麗な楽曲アレンジには無理や誇張がなく、演奏者の楽しさが伝わってくるようだ。
アルバムを重ねるごとに、アレンジとメロディの洗練度を上げて、ついにここまでの質に到達した。
現在シンフォニックの大作をここまでさらりと作ってしまえるバンドは、この「花王」をおいていまい。
メロディアス度・・9 シンフォニック度・・8 楽曲アレンジ・・9 総合・・9
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KAIPAVittjar
スウェーデンのプログレバンド、カイパ2012年作
ハンス・ルンディンの美しいシンセワークを中心に、北欧らしい叙情メロディたっぷりのシンフォニックサウンド。
ヨナス・レインゴールド、モルガン・アグレンの安定したリズム隊に支えられながら、メロウなギターワークが重なり、
トリック・ルンドストルムの存在感あるヴォーカルが歌い上げる。メロディックな爽快さと北欧の土着的な感触が合わさり、
ときに女性ヴォーカルの歌声も含みつつ、12分、22分という大曲もあくまで叙情的に聴かせてくれる。
ゲストによるヴァイオリンやホイッスルの音色も美しい。これぞ北欧!というようなシンフォニックの力作。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・9 総合・・8
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TOMAS BODIN 「IAM」
THE FLOWER KINGSのKey、トマス・ボーディンのソロ4作目。2005作
23分、21分、18分の組曲3曲。参加メンバーは、TFKでおなじみのヨナス・レインゴールドに、
前作に続き、メインヴォーカルにアンダース・ヨハンソン、ギターにJOCKE JJ MARSHを迎えて
1曲めから爽快なシンフォニックロックが全開の快作。久々にトマスの弾きまくりのキーボードが堪能できる。
グレン・ヒューズバンドのメンバーでもあるJOCKEのギターもなかなか素晴らしく、
また二人の女性Voも効果的に楽曲を彩っていて、いいアクセントになっている。
サウンド的にはむしろフラキンの近作よりも分かりやすいので、曲は長いが初心者の方にも勧められる。
ソロ作というよりは、むしろ“作り込まれたシンフォ大作”というべき見事な作品だ。
シンフォニック度・・8 爽快度・・8 フラキンよりも聴きやすいかも度・・9 総合・・8.5
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KARMAKANIC「Who's the Boss in the Factory」
スウェーデンのプログレバンド、カーマカニックの3rd。2008作
THE FLOWER KINGSのヨナス・レインゴールドを中心としたバンドで、
1stはProgMetal風、2ndはジャズロック寄りの優雅なサウンドであったが、
本作はよりメロディアスさを前に出して、結果としてフラキンに近い雰囲気になった。
少しレトロなプログレ的シンセワークにたおやかなピアノも美しく、曲は適度にテクニカルでありつつ、
じっくりと歌を聴かせる部分も多く、全体的にはやはりシンフォニック。
存在感あるヨナス・レインゴールドのベースにゾルタン・チョースのタイトなドラムも見事で、
バンドの核をになっている。テクニカルな演奏力と、メロディ聴かせるバランスのとれた高品質作だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 演奏度・・9 総合・・8
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PAR LINDH PROJECT「Time Mirror」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、パル・リンダー・プロジェクトの2011年作
90年代にデビュー、The Flower Kingsとともに北欧のシンフォニックシーンを牽引してきたPLP、
Voのマグダレーナ嬢の死を乗り越え、スタジオアルバムとしては10年ぶりとなる復活作である。
いきなり17分の大曲で幕を開け、ムーグシンセを使用した時代的なキーボードプログレが全開、
クラシカルかつ荘厳なPLPサウンドに翳りなしである。チャーチオルガンの音色とともに、
1st「Gothic Impressions」に回帰したような雰囲気で、ヴォーカルが加わったことで聴きやすさも増した。
いまとなってはいくぶん古めかしさもあるが、北欧版TRACEというような鍵盤プログレが堪能できる。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 キーボー度・・8 総合・・8
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PAR LINDH & BJORN JOHANSSON 「DREAMSONGS FROM MIDDLE EARTH」
北欧のシンフォニックアーティスト、パル・リンダービヨルン・ヨハンソンによる2004作
前作「BILBO」に続き、今回もトールキンの「指輪物語」をテーマにしたコンセプト作。
PLPでは弾きまくりのバロックシンフォをやっているパル・リンダーだが、
ここではやや抑え気味にしっとりとしたピアノ、キーボードを聴かせてくれる。
ギター、マンドリン、ブズーキ他、トラッド楽器もこなすビヨルン・ヨハンソンの作曲能力も見事で
ストーリーにそって、曲はゆったりと、たゆたうように流れてゆき、北欧トラディショナル的な
やわらかなメロディが耳に心地よい。アコースティカルで清涼感のあるシンフォサウンドだ。
シンフォニック度・・8 しっとり繊細度・・9 ファンタジック度・・9 総合・・8.5
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MOON SAFARI「Lover's End」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、ムーン・サファリの2010年作
前作の2枚組アルバム「Blomljud」が泣くほど素晴らしかったのだが、今作も繊細な叙情美が素晴らしい。
やわらかなヴォーカルハーモニーと、美しいピアノとシンセワーク、
そして、ロイネ・ストルトかアンディ・ラティマーかという泣きのギターフレーズ、
涼やかな北欧の風を運ぶようなこの耳心地の良さには、またしてもうっとりとなる。
誤解を恐れずにいえば、かつての70年代のヒッピー世代におけるユートピア志向を、
感動的なまでの叙情性を込めて、心温まる青春偶像ドラマに仕立て上げたというべき、
ちょっぴり甘酸っぱい思い出を脳裏に甦らせるような、どこかなつかしいメロディがたまらない。
フラキンファンもきっと泣く。優しい叙情に感動。北欧繊細系シンフォニックの大傑作。
メロディアス度・・9 繊細度・・9 青春度・・9 総合・・9
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BRIGHTEYE BRISON「BELIEVERS & DECEIVERS」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、ブライトアイ・ブライソンの3rd。2008作
ツインキーボードを含む5人組で、キャッチーでやわらかなコーラスワークと、
ピアノとメロトロンが絡む、レトロめのプログレ感覚が組合わさったサウンドで、
前作同様にメロディアスなシンフォニックロックを聴かせてくれる。
圧巻なのは20分、34分という大曲で、これが素晴らしい出来。心地よいヴォーカルメロディと
適度にテクニカルな展開力で、あくまでキャッチーな叙情で構築される楽曲は、
かつてのGENESISTHE FLOWER KINGSなどを思わせるものもありつつ、さらに明快で抜けがよい。
インスト部分の充実は前作以上で、力作というにふさわしいアルバムだ。
メロディアス度・・9 シンフォニック度・・8 北欧度・・7 総合・・8
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BROTHER APE「A Rare Moment Of Insight」
スウェーデンのプログレバンド、ブラザー・エイプの2010年作
2005年にデビュー、キャッチーなメロディをモダンなアプローチで聴かせた前作に続き、
4作目となる本作もスタイリッシュなセンスを押し進めた作風となっている。キレのよいリズムに、
まるでUKロック的な感触のほの暗い叙情が、ぱっと聴きにはプログレ離れしているかに思える。
あるいは、オルタナ風のアレンジが、かすかに残っている北欧シンフォ風味と合わさったというべきか、
完全に脱プログレしているわけではない絶妙さに思わずほくそ笑む。お洒落ですらあるサウンドは、
これみよがしなシンフォ系が苦手なリスナーにも一聴の価値あり。ハイセンスなプログレロックの傑作!
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 モダンセンス度・・9 総合・・8
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FreddeGredde 「Thirteen Eight」
スウェーデンのマルチプレイヤー、フレドリック・ラーソンによる個人プロジェクト作。2011年作
ギター、ベース、シンセにヴォーカルをすべて一人でこなす、期待の若手ミュージシャン、
美麗なシンフォニック性とキャッチーなメロディアスさで構築されるサウンドは、
聴き心地の良さと軽快な展開力を両立させていて、デビュー作にしては相当質が高い。
甘い歌メロとコーラスはMOON SAFARIあたりにも通じるような人懐こさがあり、アコーディオンなど
アコースティック要素も含め、北欧らしい叙情も素晴らしい。アレンジは凝っているのだが難解さは皆無。
精細さとダイナミック、性と動のメリハリという点では、プログレ化したQUEENともいうべきか。
あるいはACTなどのプログレハード好きにも楽しめるかと。今後に大期待のアーティストです。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・9 プログレ度・・8 総合・・8
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LALLE LARSSON'S WEAVEWORLD「Infinity Of Worlds」
スウェーデンのプログレバンド、ラレ・ラーソンズ・ウィーヴワールドの2010年作
ヘンタイメタル系のELECTROCUTION 250や、KARMAKANIC、AGENTS OF MERCYでも活躍する
才能豊かなシンセ奏者、ラレラーソンのプロジェクト。本作はかつてのU.K.を思わせるような
スタイリッシュなアンサンブルで聴かせるインストプログレの傑作。軽やかなフュージョン/ジャズロック風味と、
ときにメタリックさを匂わせる硬質な構築センスが冴え渡る。ジャズタッチのピアノを弾くかと思えば、
古き良きプログレ風味や、さらには壮麗でミステリアスな世界観も生み出す、ラレ・ラーションのシンセワークは絶品だ。
たとえばPLANET Xあたりにも通じる聴き心地もあり、ProgMetalのリスナーなどにも楽しめるサウンドだろう。
メロディアス度・・8 スリリング度・・9 構築センス・・9 総合・・8.5
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SIMON SAYS 「Tardigrade」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、シモン・セッズの3rd。2008作
GENESIS系のシンフォニックロックとして、前作もなかなかの出来だったが、
今作では曲にダイナミズムが加わって、さらによい感じになっている。
これでもかとたたみかけるシンフォニックなシンセワークを中心に、14分、26分という
大曲もドラマティックに展開させてゆく。(5曲目などはまるで“Firth of Fifth”のよう)
ガブリエルをヘナチョコにした感じのヴォーカルは好みが分かれるかもしれないが、
最近ではむしろ珍しい、恥ずかしげもないほどの堂々たるシンフォっぷりが素晴らしい。
シンフォニック度・・9 プログレ度・・8 コテコテ度・・10 総合・・8.5
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MAGIC PIE 「Motions of Desire」
ノルウェーのシンフォニックロックバンド、マジック・パイの1st。2005作
70年代風のハモンドと、ややハード寄りのギターが組み合わさったサウンドは相当の完成度。
テクニカルな展開の後に現れる、キャッチーなメロディが実に爽快で、
そうしたアレンジにおける吹っ切れの良さが大きな魅力となっている。
懐古主義と現代的なウィットという点ではSPOCK'S BEARDにも通じるものがあり、
とくにギターの奏でるメロディはTRANSATLANTICでのロイネ・ストルトをも思わせる。
しょっぱなに20分の大曲をもってきたり、ラストには組曲方式と、およそ新人離れした
自信に満ちていて、このシンプルなりんごジャケからは想像もつかない満腹感が味わえる。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 キャッチーかつテクニカル度・・9 総合・・8
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KERRS PINK 「TIDINGS」
ノルウェーのシンフォニックロックバンド、ケルス・ピンクの5th。2002作
90年代から活動するベテランだが、このバンドの魅力は北欧らしい清涼感と
トラッドテイスト
のあるギターメロディ、そしてなによりじつに繊細で淡い色彩を感じるその音にある。
TFKやPLPなど、表舞台で活躍するメジャー級シンフォバンドの影で、
こうしたバンドが地道に活動を続けているというのは、なんともほっとする。
CAMELの繊細な部分を抽出して、北欧のメロディで淡く色付けしたサウンドは、
聴いていてなにか優しさに満ちた安らぎを感じさせてくれる。これど北欧のシンフォニックロック。
シンフォニック度・・7 メロディアス度・・8 北欧度・・9 総合・・8
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RETROHEADS「Retrospective」
ノルウェーのシンフォニックロックバンド、レトロヘッズの2004作
Vo、Key、G、Bを一人でこなすTore Bo Bendixenを中心としたバンドで、
インストメインの流麗かつたおやかなシンフォサウンドを作っている。
CAMELTFKのロイネ・ストルトかというようなメロウなギターが心地よく、
まるでフラキンのメロディアスな部分を取り出したような印象。
北欧らしい涼やかな叙情に、温かみのある少し素朴なメロディが耳に優しい。
北欧シンフォ好きはツボを突かれることうけあいの一作です。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・8 プログレ度・・7 総合・・8
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PICTORIAL WAND 「A sleeper's awakening」
ノルウェーのシンフォニックロックユニット、ピクトリアル・ワンドの2006作
チェロやフルートに男女8人のVoを含む大編成によるCD2枚組み大作。
のっけから、フルートとアコースティックギターの響きが美しく、物語的な語りから曲に入ると
シンフォニックなキーボードにややメタリックなギターも加わり、
民族的なゴシックシンフォというサウンドになる。
ナレーション入りのストーリーを配した壮大な作風とファンタジックな雰囲気がなかなか素敵で、
それに加えて北欧フォークロワ的な要素も耳に心地よい。ハードめの北欧シンフォとしても聴け、
アコースティカルな静寂パートからシンフォニックパートへの切り返しなども効果的。
内ジャケのダークで幻想的なイラスト群も含めて、ファンタジー作品としての構築には相当気合が入っている。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 ファンタジック度・・9 総合・・8

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Finn Arild「Testament」
ノルウェーのアーティストによる個人ユニット、フィン・アリルドの2010年作
前作はポップな雰囲気の作品であったが、本作はのっけから16分の組曲を持ってくるなど
ぐっとプログレ寄りの力作に仕上がっている。曲名通り、GENESISルーツのシンセアレンジに、
メロディックなギターのフレーズを含ませて、古き良きプログレの質感を再構築している。
歌メロを含んだキャッチーさも含めて、MOON SAFARIあたりに接近したというような感触もあり、
センスのある明快なアレンジに好感が持てる。メロディ派のリスナーには必聴級の傑作だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 GENESIS度・・8 総合・・8
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The WindMill 「To Be Continued」
ノルウェーのプログレバンド、ウインドミルの2010年作
うっすらとしたシンセをバックにフルートやサックスの音色がかぶさり
キャッチーなメロディとともに北欧らしい爽やかなサウンドを聴かせる。
随所オルガンなどのレトロなシンセアレンジやメロウなギターも盛り込んで、
ときにKAIPAなどを思わせるような北欧らしい叙情もあってじつに耳に優しい。
10分、20分という大曲も軽妙でセンスのよいインストパートで飽きさせない。
シンフォニックな美しさと繊細さが合わさった北欧シンフォの好作品である。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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OVERHEAD「And We're Not Here After All」
フィンランドのシンフォニックロックバンド、オーバーヘッドの3rd。2008作
前作までは北欧版TRANSATLANTICという雰囲気の軽快なサウンドだったが、
今作ではぐっとメロウな雰囲気が増し、ゆったりとした質感に、ほのかな薄暗さと
モダンさを折り込んだ音作りになっている。7分〜11分の大曲をメインに
派手な展開よりはゆるやかに流れてゆく構成で、なかなか耳心地がよい。
シンフォニックロックとしての密度は落ちたが、スタイリッシュな聴きやすさと
北欧的な叙情性はそのままに、センスよくまとめられた好作といえる。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・7 ゆったり叙情度・・8 総合・・8
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VIIMA「Kahden Kuun Sirpit」
フィンランドのシンフォニックロックバンド、ヴィイマの2nd。2009作
前作は女性Vo入りの北欧版CAMELという感じのなかなかの好作であったが、
今作では22分の大曲を含む全4曲という構成で、音のスケール感が増している。
北欧の土着性を感じさせるメロウなギターフレーズに、ゆったりとしたシンセ、
そしてフルートの音色が絡み、涼やかな叙情性を描き出す。母国語による歌声も
土臭いトラッド的な質感で、北欧プログレ好きにはたまらない音が詰まっている。
メロディアス度・・8 北欧度・・9 叙情度・・9 総合・・8
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PaidarionBehind the Curtains」
フィンランドのシンフォニックロック、パイダリオンの2011年作
女性Voにサックス奏者を含む6人組で、前作もシンフォ、ジャズロックを合わせたような
好作であったが、本作ではゆるやかな叙情美と幻想的な世界観に磨きがかかっている。
うっすらとした優美なシンセにサックスの音色が絡み、軽快さと叙情性を併せ持った楽曲に
男女ヴォーカルの歌声が乗る、北欧らしい涼やかな聴き心地の優雅なシンフォニックロックである。
メロウなギターのフレーズもセンス良く、大仰にならないキャッチーな明快さがなかなか素晴らしい。
10分の大曲を構築するアレンジ力も含めて、知的な美意識に包まれたモダンシンフォニックの傑作。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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◆薄暗系〜北欧の森を思わせる暗がりと倦怠の美

ANEKDOTEN「From Within」
スウェーデンのプログレバンド、アネクドテンの3rd。1999作
ANGLAGARDに続いて現れたこのバンドは、北欧のクリムゾンとも呼ばれるそのサウンドで
コアなリスナーからの支持とともに90年代プログレの復興に大きな存在感を示した。
本作は、傑作だあった2nd「NUCLEUS」のドラマティックさに加え、1st「vemod」の
ヘヴィなダークさを併せたような最高傑作。鳴り響くメロトロンによる寒々しい叙情美と、
ゆるやかなダイナミズムが融合され、これぞアネクドテンというサウンドが展開される。
4th以降はゆったりとした薄暗系シンフォニックになってゆき、それはそれで好きなのだが
ぐいぐいと押し寄せてくる音のインパクトの点では、本作が絶頂期だったとも言えるだろう。
シンフォニック度・・8 重厚度・・9 北欧度・・9 総合・・8.5
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ANGLAGARD「Viljans Oga」
スウェーデンのプログレバンド、アングラガルドの2012年作
1992年、95年に、二作の傑作を残し消えたこのバンドが、なんと17年ぶりとなる復活作を出した。
10分以上の大曲4曲という構成は、名作である1st「Hybris」を思わせるが、サウンドもかつてのまま。
やわらかなフルートの音色に導かれ、うっすらとしたメロトロンを響かせつつ、北欧らしい薄暗い叙情に包まれた、
「これぞアングラガルド!」という世界観である。変拍子を含んだ起伏に富んだ展開力、静と動のダイナミクス、
じわじわと聴き手のイメージを広げてゆくような作風、そのセンスは相変わらず素晴らしいという他にない。
随所にギターによるメロウなフレーズも効いていて、シンフォニックロックとしてもしっかりツボを押さえている。
初期クリムゾンから受け継がれる空間的スケール感をじっくりと構築、体現してゆくその姿勢は、
いわばポップ化における「収束」とは真っ向から対立する格好よさだ。1st、2ndを超えようかという傑作である。

ドラマティック度・・8 北欧度・・9 アングラガル度・・10 総合・・9
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White Willow「Terminal Twilight」
ノルウェーのシンフォニックロック、ホワイト・ウィローの2011年作
前作は女性Voを全面に出したアンビエントなシンフォニックの傑作であったが、
今作でもヴォーカルが代わり、さらにドラムには元ANGLAGARDのマティアス・オルソンが参加している。
そのサウンドは浮遊感を漂わせたサイケ風味のシンフォニックロックで、メロトロンやオルガンなどの
レトロな雰囲気と、、かつてのANGLAGARDを思わせる、いかにも北欧的な薄暗さに包まれた作風。
しっとりとしたピアノにフルートの音色、女性ヴォーカルの歌声も優しく、アコースティカルな牧歌性もあって、
じつにやわらかな耳心地。アナログ感のある音作りはWobblerなどにも近いか。幻想的な北欧プログレの傑作です。
シンフォニック度・・8 やわらか叙情度・・9 北欧度・・10 総合・・8.5
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PAATOS 「silence of another kind」
スウェーデンの女性Voバンド、パートスの3rd。2006作
ゆるやかなメロトロンの調べとたゆうたような女性ヴォーカル…
北欧らしい寒々しさと倦怠を感じるサウンドは、音数はシンプルで一聴して地味な印象だが、
内的な強度…というか彼らの目指す「密度を減らした薄暗い叙情の表現」という意味では
いままでのアルバムよりもむしろ徹底しており、ほぼ完全に成功しているといっていい。
昨今のPORCUPINE TREE系サウンドにも通じる音で、ある種好みを分けるものがあるだろうが
この鬱屈した美意識を生み出せるのは北欧ならではなのは確かだろう。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 北欧的薄闇度・・9 総合・・8
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CARPTREEInsekt
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、カープトゥリーの4th。2007作
今作では純粋にメロディと雰囲気に磨きがかかり、音の説得力がぐっと増している。
ゆるやかなシンセを中心にゆったりと聴かせる楽曲は、決して派手に盛り上がるわけではなく、
薄暗い叙情美をともなって、じわじわと耳に優しくしみこんでくるという印象だ。
いわゆるポーキュパイン系の北欧版というイメージだが、
もっとやわらかな幻想の空気に包まれているのが良い。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 ゆったり薄暗度・・9 総合・・8
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Makajodama
スウェーデンのチェンバー・プログレバンド、マカジョダマの2009作
バンド名も面白いが、「Post Rock meets Prpg Rock」といううたい文句通り、ポストロック的な世界観と
レトロなプログレ感覚が合わさったようなインスト主体のサウンドも、これがなかなか面白い。
ヴァイオリン、チェロ、サックスなどがギターやシンセと絡み、薄暗いチェンバーロックを基本にしつつ、
クリムゾン的なヘヴィプログレの質感もあるという。 どことなく日本の美狂乱っぽくもあったりする。
この妖しさと暗さは聴いていて引き込まれます。 彼らのマイスペにはメンバーが影響を受けたバンドとして、
Dmitri Shostakovich、King Crimson、Can、Univers Zero、Algarnas Tradgard、Godspeed You! Black Emperor、
Third Ear Bandなどの名が。ちなみにANEKDOTENのメンバーが数曲でミックスを担当しているとか。
メロディアス度・・7 チェンバー度・・8 薄暗度・・9 総合・・8
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DIVINE BAZE ORCHESTRA「Dead But Dreaming」
スウェーデンのプログレバンド、ディヴァイン・ベイズ・オーケストラの2010年作
KING CRIMSON風味の薄暗い叙情に、チェンバーロック的なミニマム感覚を合わせた
個性的なシンフォニックプログレ。オルガン、メロトロンが鳴り、レトロめのギタートーンに
どこかとぼけた味わいのヴォーカルで、適度に力の抜けたシリアスとユーモアの境をゆく。
うっすらとした寂寥感は、クリムゾンの“Epitaph”的な世界観で、ANEKDOTENなどとはまた
異なるアプローチでそれをやっているのが面白い。ダークなシンフォニックが好きならチェック。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・8 薄暗叙情度・・8 総合・・8
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Nordagust「In the Mist of Morning」
ノルウェーのシンフォニックロック、ノルダガストの2010年作
結成は90年代とけっこう古いらしいが、満を持してのデビュー作となった。
ギターにシンセ、ヴォーカルをこなすダニエル・ソルヘイムを中心にした3人組で
うっすらとしたシンセ、メロトロンなどをバックにゴシック的なダークな世界観で聴かせるサウンド。
ゲスト参加のMADDER MORTEMの女性Voがスキャット的な声を加えていて、
幻想的でミステリアスな雰囲気を盛り上げる。同郷のWHITE WILLOWあたりにも通じる作風で、
ギターの土着的な旋律はANGLAGARD的でもある。暗がりの叙情をまとった北欧ゴシック・シンフォだ。
シンフォニック度・・8 ダークな叙情度・・9 北欧度・・8 総合・・8
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Gazpacho 「March of Ghosts」
ノルウェーのプログレ・ロックバンド、ガスパッチョの2012年作
ヴァイオリン、シンセ奏者を含む6人編成で、本作は7作目のアルバム。
うっすらとしたシンセに美しいヴァイオリンによるイントロ曲から始まり、
繊細な歌声とともに、ほの暗い叙情美に包まれたサウンドが広がってゆく。
今作はコンセプト的に進んでゆくようなドラマ性があり、ゆるやかなシンフォニック性の中にも、
さりげないドラムのリズムの入れ方など、細部のこだわりが感じられるアレンジで、
作品としての強度は前作以上に強まった。メロウな情感に心地よく浸れる傑作だ。
メロウ度・・8 プログレ度・・7 しっとり叙情度・・8 総合・・8
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◆レトロなヴィンデージ系〜鳴り響くオルガン、メロトロン

BEARDFISH「Destined Solitaire」
スウェーデンのプログレバンド、ビアードフィッシュの2009作
鳴り響くハモンドの音色に、70年代的なロックギターと唸るベース、
一聴して音の存在感と説得力が一回り増したことを感じさせる。
今作ではそのレトロなサウンドに、The Flower Kings的なシンフォニックの構築性を加えて
緩急とメリハリを付けながらじっくりと盛り上げてゆく手法がなんとも心憎い。
グルーブ感たっぷりのシンプルな躍動感と、変拍子やシンセなどプログレとしてのお約束も
しっかりと盛り込みつつ、ときにユーモアある軽い脱力感や映画的な効果音なども含めて、
過去と現在、未来をリンクさせるようなコンセプチュアルなビジョンもかいま見える。大変な力作。
メロディアス度・・8 レトロロック度・・8 濃密度・・9 総合・・8.5
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AGENTS OF MERCYBlack Forest
スウェーデンのシンフォニックロックユニット、エージェンツ・オブ・マーシーの2011年作
ロイネ・ストルト、ナッド・シルヴァン、ラレ・ラーションらによるGENESIS懐古風サウンドというべき
このバンドもすでに3作目となる。本作はこれまで以上にミスティックな雰囲気とシアトリカルな作風になっていて、
メロトロンを含んだ表情豊かなシンセワークと叙情たっぷりのギター、P.ガブリエルばりのヴォーカルで、
物語的なコンセプトを感じさせるほの暗いミステリアスさとともにゆったりと楽曲を盛り上げてゆく。
まさに、The Flower KingsGENESISを合わせたような、ドラマティックなシンフォニックの傑作である。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 ミスティック度・・8 総合・・8
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Trettioariga KrigetEfter Efter
スウェーデンのハードプログレバンド、トレッティオアリガ・クリゲットの20011年作
1974〜1980年にかけて活動したのち休止、本作は2004年の復活作から数えて3作目である。
70年代を思わせる、古き良きブルージーなプログレ・ロックサウンドは本作も同様で、
オルガンやメロトロンなどの音色にメロウなギター、枯れた味わいのヴォーカルも含めて、
どっしりとした大人の雰囲気を漂わせている。また今作では8分、10分という大曲で、
よりプログレ的な構築が聴けるのも嬉しい。派手さはないがベテランらしい好作品だ。
メロディック度・・7 プログレ度・・7 大人の味わい度・・9 総合・・8
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Anima MorteFace the Sea of Darkness
スウェーデンのシンフォニックロック、アニマ・モルテの2007年作
北欧らしい薄暗い叙情とミステリアスな雰囲気で聴かせるシンフォニックロック。
たおやかなフルートの音色に、美しいシンセとメロウなギターがかぶさり
かつてのANGLAGARDに通じるような質感と、レトロなヴィンデージ風味も感じられる。
キーボードたっぷりで、MORTE MACABLEをより美しくしたという言い方もできるか。
オールインストなので濃密さの点ではやや物足りないが、メロディの豊穣さで飽きさせない。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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SIENA ROOT「Different Realities」
スウェーデンのサイケロックバンド、シエナ・ルートの4th。2009年作
今作は25分の組曲が2曲という構成で、前作に比べてずいぶんプログレ風味が強まった。
70年代風味のアナログ感覚はそのままに、静かな叙情性とスケール感が増して
楽曲にはメリハリのあるダイナミズムがついてきた。そしてヴォーカルが女性となったことで、
メロウなやわらかみが北欧的な薄暗さとともに耳に心地よく響いてくる。
BEARDFISHあたりと比べると、よりサイケ気味の妖しい雰囲気が魅力である。
アルバム後半になると、パーカッションのリズムにフルートやシタールなどが乗る、
アコースティカルなトラッド&中近東サイケ風味も聴かせる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 古き良き度・・9 総合・・8
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The Carpet Knights「According to Life」
スウェーデンのプログレバンド、カーペット・ナイツの2009作
ヴィンデージロックの盛んなスウェーデンからまたしてもレトロなバンドが登場。
鳴り響くフルートに、70年代的なギターで聴かせる、サイケロック風味のサウンドは
JETHRO TULLを思わせるブルージーな味わいもあり、シンセがない分だけ生々しさがある。
曲によってはメロトロン抜きのANEKDOTENという雰囲気もあり、レトロロック好きはもちろん、
サイケやストーナー好きの方にも楽しめるだろう。じつは結成は1998年で本作はもう6作目らしい。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 レトロ度・・9 総合・・8
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Wobbler「Afterglow」
ノルウェーのプログレバンド、ウォブラーの2nd。2009作
典雅なチェンバロやフルートの音色で始まるイントロから、続く15分の大曲では
盛大にメロトロンが鳴り響き、ANEKDOTENばりに凄まじいプログレが炸裂している。
ハモンドに絡まるリコーダーの響きは中世の世界観を描き、ビブラフォンやチェロなども加わって
インスト主体でありながらも起伏に富んだ展開と多彩な楽器の音色で飽きさせない。
テクニカルな軽やかさと、北欧的な叙情と土着性を同居させたアレンジも見事と言う他はない。
トレンドに敢然と背を向け、メンバーがひとつの幻想を描こうとする強度が音にはあり、
それが強烈な説得力となって、このレトロかつ北欧的なプログレ/シンフォニックを構築している。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・9 北欧度・・9 総合・・8.5
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KVAZAR 「A GIANT'S LULLABY」
ノルウェーのシンフォニックロックバンド、クヴァザーの2nd。2005作
基本はインスト中心で、音にはさほど派手さはなく、むしろぱっと聴きには地味なのだが、
よくよく聴けば、完成度というかこのバンドの作る世界観に引き込まれる。
70年代北欧的なレトロな質感と、中世音楽的なメロディラインが交わり、
どこか靄がかかったような不思議な空間美を感じさせる。女性ヴォーカルや、荘厳なコーラス、
あるいはジャズタッチのピアノ、ANEKDOTENもかくやというメロトロンにANGLAGARD風のギターフレーズ、
それらが絶妙に顔を出し、決してうるさくならない程度に楽曲に彩りと深みとを与えている。
決して押しつけがましくない、派手すぎない、奥の深いシンフォニック作品だ。
シンフォニック度・・8 しっとり度・・8 バランスセンス・・9 総合・・8
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Gargamel「Descending」
ノルウェーのプログレバンド、ガルガメルの2008年作
前作もANEKDOTENタイプのなかなかの力作であったが、本作もメロトロンや
ハモンド、ムーグなど、ヴィンテージな音色を響かせる70年代風の音作り。
ダークな緊張感をただよわせた作風はむしろMORTE MACABREにも近いか。
12分、18分という大曲を含む全4曲という構成で、さすがにやや長尺感があるが、
どこかサイケロック気味の浮遊感と、楽曲の盛り上げ方にメリハリがついたことで、
壮大な雰囲気に耳惹かれる。フルートやチェロ、トロンボーンなどの楽器も、
効果的に使われている。北欧ヴィンテージ系としてもなかなかの力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ヴィンテージ度・・8 総合・・8
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LUCIFER WAS「The Crown of Creation」
ノルウェーのヴィンテージロックバンド、ルシファー・ワズのアルバム。2010作
結成は70年代でありながらいったん解散し、1997年に復活したというこのバンド、
本作はフルートやハモンド、メロトロンなどを使用したレトロなサイケプログレに、
男女ヴォーカルとオーケストラ入りのロックオペラ的な壮大さを付加した、異色の力作だ。
2部構成に分かれたシアトリカルな大作主義と、決して嘘くさくないヴィンテージロック感覚、
そこに優雅なクラシカルさが盛り込まれているのだから、濃密なことこのうえない。
大仰なレトロ系プログレとしても懐古的なシンフォニックロックとしても楽しめる。
シンフォニック度・・8 レトロプログレ度・・8 ロックオペラ度・・9 総合・・8
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D'Accord「Helike」
ノルウェーのプログレバンド、ダッコルドの2011年作
伝説の古代都市ヘリケをテーマにしたコンセプト作で、20分を超える2つの大曲で構成されている。
フルートが鳴り響き、まるでOSANNAの「Palepoli」を思わせるような妖しげな雰囲気で幕を開け、
オルガンやメロトロン、ムーグの音色にシアトリカルに歌うヴォーカルを含めて、
70年代を思わせる雰囲気を漂わせる。モダンさではなく、牧歌的なやぼったさが魅力で
初期のKAIPAなどにも通じる垢抜けないメロウな聴き心地は、オールドファンの耳に優しいだろう。
英国や北欧、イタリアのバンドの感触を覗かせながら、次々に展開してゆく大曲はなかなか圧巻だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ヴィンデージ度・・8 総合・・8
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TUSMORKE
「Riset Bak Speilet」
ノルウェーのプログレバンド、タスメルケの2014年作
前作もじつにオールドな味わいの好作であったが、本作ではより土着的な怪しさが増している。
母国語のヴォーカルに、ハモンドやミニムーグ、メロトロンといったヴィンテージなシンセ、
フルートやリコーダー、サックスなども加わって、70年代プログレの混沌とした妖しさを受け継いだ
これは「北欧版パレポリ」か…というような聴き心地が楽しめる。アッパーなノリの中にもどこかユルめで、
サイケ寄りの浮遊感もあって、そのつかみどころのなさも確信犯的だ。7〜9分の楽曲を中心に、10分を超える大曲もあり、
構築力という点でもなかなかそつがない。プログレとしての深みもしっかりと備えた、前作以上の素晴らしい傑作です。
ドラマティック度・・8 怪しげ度・・9 北欧度・・8 総合・・8.5
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◆サイケロック系〜浮遊感漂う心地よさ

In The Labyrinth 「Dryad」
スウェーデンの民族サイケロックバンド、イン・ザ・ラビリンスの3rd。2002作
今作は舞台を中近東から深い森の中に移し、このジャケのようにミスティックな雰囲気になっている。
夜を思わせるシタール、マンドリン、アコギの繊細な響きと、フルート、ヴァイオリンの音色、
そこにかぶさるゆるやかなメロトロンがどこか魔術的な妖しさをかもしだしている。
ヴォーカルの歌メロもぐっと素朴になって、普通に牧歌系のプログレとして聴ける。
雰囲気ものとしては前作以上に気に入った。オフィシャルサイトで試聴可
シンフォニック度・・8 薄暗度・・8 サイケ度・・8 総合・・8
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KEBNEKAJSE
スウェーデンのトラッド・プログレバンド、ケブネカイゼの2009作
70年代に5枚のアルバムを残して消えた異色のトラッドロックバンドがまさかの復活!
初期KAIPAをさらにクサくしたような北欧の民族メロディを、そのままサイケロック化したような
このバンドのサウンドは、一聴して日本人の情緒を鷲掴みにするくらいのインパクトがあった。
本作も、のっけからかつてを思わせる、ギターとヴァイオリンを中心にした土着メロディに思わずにんまり。
メンバーは少なくなったが、バンドの本質はなにも変わっていない。田舎くさく、土くさく、
まさに北欧の山林を思わせるような牧歌的な情感で素朴でありつつも雄大に聴かせてくれる
ギターとヴァイオリンがユニゾンして奏でるトラッドメロディと、パーカッションの響き、
これぞ北欧の音楽である。これを聴いて気に入った方は、かつての名作「V」もぜひ。
メロディアス度・・8 土着度・・9 北欧メロ度・・10 総合・・8
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My Brother the WindI Wash My Soul in the Stream of Infinity」
スウェーデンのプログレバンド、マイ・ブラザー・ザ・ウインドの2011年作
ANEKDOTENMAGNOLIAMAKAJODAMAなどのメンバーが集まったバンドで、
基本は2本のギターに、ベース、ドラムによるインスト演奏であるが、うっすらとしたメロトロンや
オルガンが鳴り響き、サイケロック風味のアナログ感覚と浮遊感とともに神秘的な叙情美を描いてゆく。
10分以上が3曲あり、スリリングさよりもゆったりとした味わいで、オリエンタルな世界感も含めて
Amon Duul IIASHRAなどに通じるような感触もある。70年代スタイルの北欧サイケの力作。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 サイケ度・・8 総合・・8
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DUNGENTa Det Lugnt
スウェーデンのサイケロックバンド、ドゥンエンの3rd。2007年作
自然派北欧サイケロックというべき、ユルくてプログレ的な歓声を有したこのバンド、
本作も70'sロックのフリーキーなアナログ感覚と、北欧らしい牧歌的な叙情で
センスの良いサウンドを描き出す。ときにヴァイオリンやサックスなども入って、
ゆるやかでありながらも多様性のあるアレンジと作り込みが素晴らしい。
優しいピアノのつまびきにフルートも加わると、ほとんどプログレの感触で楽しめる。
メロディアス度・・8 プログレ風味度・・8 北欧サイケ度・・8 総合・・8
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MOTORPSYCHO「Heavy Metal Fruit」
ノルウェーのベテランロックバンド、モーターサイコの2010年作
前作「Little Lucid Moments」は、じつに素晴らしい出来だったのだが、
本作では、タイトルのように、よりヘヴィなアプローチを効かせた音作りになっている。
絡みつくようなヘヴィなギターに、メロトロンを含むシンセによるシンフォニックさが加わると
ANEKDOTENばりの重厚なシンフォニックサウンドに包まれる。もちろん彼らの持ち味である、
アンサンブルとしての一体感とサイケロック的な浮遊感覚もあり、自由度のある「ユルさ」を含めた
壮大さとメリハリも魅力となっている。大曲におけるじわじわくる盛り上がりは感動的ですらある。
北欧プログレ、北欧サイケ、北欧ポストロック…なんでもいいので、とにかく聴いていただきたい!
壮大度・・8 サイケ/プログレ度・・9 アンサンブル度・・10 総合・・8.5
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JEAVESTONE「Spices, Species & Poet」
フィンランドのサイケ・プログレバンド、ジェーブストーンの2008年作
以前のアルバムは未聴だが、フルートが鳴りながら、古き良きハードロック風味のギターに
やや脱力気味のヴォーカルが絡み、ときおりプログレらしいシンセも現れる。
これは「北欧版GONG」かというようなヒッピーじみた感触であるが、浮遊感がありながらも
案外にしっかり構成させているという点では、OZRIC TENTACLESあたりにも近いか。
レトロな北欧プログレとしても楽しめるが、ぱっと聴きにはただのキャッチーなロックでもOK。
ともかく一筋縄ではいかない、ソフトな耳心地の向こうに玄人好みの奥深さがある。
メロディアス度・・8 隠れプログレ度・・9 遊び心度・・9 総合・・8.5
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THE SMELL OF INCENSE「OF ULLAGES AND DOTTLES」
ノルウェーのサイケフォークバンド、スメル・オブ・インセンスの2nd。2008作
なんと前作から10年ぶりのアルバム。童話ちっくなジャケが可愛い。
メロトロンやハモンドの音色をバックに、サイケがかったギターが絡み
やわらかな女性ヴォーカルが牧歌的に歌い上げる。
前作よりもずいぶんキャッチーになり、むしろ70年代プログレ的な雰囲気で
たとえばEARTH AND FIREなどを思い出す部分もある。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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◆アカデミック系〜クラシカルかつ室内楽的な優雅さを聴く

ISILDURS BANE「Mind vol 2」
北欧知性派プログレの雄、イシルドゥルス・バーネのライブアルバム。2001年作。
70年代から活動しているこのバンドだが、その音楽性はアルバムを重ねるごとに、
どんどん細密化、そして深化し続けている。今作はCD2枚組のライブ作であるが、
圧倒的高密度の楽曲群で音楽の芸術を冷徹に表現する様は、まさに圧巻のひと言。
全てインスト演奏ながら、それを感じさせぬ生きた楽曲の数々に改めて感嘆し、圧倒される。
「シリアスかつアカデミックな北欧シンフォ」という呼び方はすでにこのバンドの代名詞である。
オーケストラ的な室内楽も導入。もはや全てが孤高の域に入った芸術音楽だ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・9 北欧芸術度・・10 総合・・8.5
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Gosta Berlings Saga「Glue Works」
スウェーデンのプログレバンド、イエスタ・ベルリング・サーガの2011年作
ANGLAGARDのマティアス・オルソンがプロデュース、サウンドは、
ムーグやメロトロンなどレトロなシンセが鳴る、ANEKDOTENなどを思わせる
いかにも北欧らしいシンフォニックロックにシリアスなチェンバーロック色が加わったもの。
そう派手さはないものの、じわじわと感じられる静かなダイナミズムと知的なアレンジ、
涼やかな叙情に含まれた硬質な意思のようなものが感じられる、これは通好みの作品だ。
アナログ的なギターサウンドとそのメロウなフレーズにもにんまり。オールインストです。
シンフォニック度・・7 ミステリアス度・・8 北欧度・・9 総合・・8
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KATZEN KAPELL「Maximalism」
スウェーデンのプログレ・チェンバーロックバンド、カッツェン・カペルの4th。2009作
タンゴや室内楽をベースにした優雅さと、プログレッシブな構成力で品のよい音楽を聴かせるこのバンド、
本作も艶やかなヴァイオリンや、アコーディオンの音色を絡ませた、軽妙なサウンドが楽しめる。
しっとりとしたピアノの響きに、ヴァイオリンやビブラフォン、マリンバなどが合わさると
室内楽的な優雅さとクラシカルな情緒に包まれる。ドラムの入った変則リズムはプログレ的で、
相変わらずセンスの良いアレンシが絶妙だ。“上品な緊張感”ともいうべき面白さが漂う傑作。
クラシカル度・・8 軽妙プログレ度・・8 ハイセンス度・・9 総合・・8
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PEKKA POHJOLA 「VIEWS」
フィンランドの天才音楽家、ペッカ・ポーヨラの2001作
シンフォニックでジャズでプログレ…時代に流されない素敵な作品を生み出し続けているペッカ。
「CHANGING WATERS」「タゲリ鳥の不思議な旅」といったこれまでの素晴らしいアルバムと同様、
今作もしっとりとした上品で繊細な作品だ。オーケストラを配し、北欧らしいもの悲しい叙情で
ゆるやかに盛り上がりを見せる楽曲は、クラシックを素養にしたアカデミックさと、
人間的な温かみの両方を内包し、静かな感動を呼ぶ。本物の音楽家、人間ペッカの音楽がここにある。
自然体でありながら、ダイナミズムとリリシズムが合わさったシンフォニックアルバムの逸品です。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・8
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Anssi Tikanmaki Orchestra 「TUNTEMATON MAA」
映画音楽なども手がけるフィンランドのアンシ・ティカンマキによる2006作
北欧的な素朴なメロディにやさしげなフルート、アコーディオンの音色、
そこに管弦楽隊が加わると、壮麗なオーケストレイションが現れる。
映画音楽的な1曲めから、続く2曲めは人を食ったようなユーモラスなメロディが確かにペッカ的。
しかしそこから泣きのギターが加わり、シンフォニックに展開する様はかなり極端だが面白い。
オールインスト作品ながら聴き所は多く、オーケストラの緻密なアレンジはもちろん
ときにはメタリックなギターも出てきたり、シリアスな重厚さとモダンな軽さとのギャップが楽しい。
現代クラシックの優雅さとシンフォニックロックのダイナミズムを融合させた大胆な作品だ。
シンフォニック度・・8 オーケストラ度・・8 北欧度・・9 総合・・8
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XL「surreal」
フィンランドのチェンバー・プログレバンド、エックスエルの4th。2002作
デジタリィなシーケンサーによるシンセアレンジと、PEKKAにも通じるような素朴な質感を融合させ、
独自のプログレッシブサウンドを聴かせるこのバンド。本作も進化の過程にある意欲作だ。
ヴァイオリンチェロなどのストリングスに、クラリネット、ホーンといった室内楽的な優雅さと
シーケンサーによるレコメン的なモダンさが合わさり、繊細でありつつ奥深い音楽を聴かせてくれる。
コロコロとしたヴィブラフォンの音色と、美しいストリングス、そしてロック的なギターが合わさると、
「優雅な偏屈」ともいうべき新鮮な感覚に包まれる。既存のスタイルに捕らわれないセンスある作品だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 優雅度・9 総合・・8
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UZVA 「Uoma」
フィンランドのチェンバー・プログレバンド、ウズヴァの3rd。2006作
ヴァイオリン、チェロ、クラリネット、ハープ、サックスにマリンバなど、
多彩な楽器によるチェンバーロックサウンドをやっている。。
人懐こいメロディのせいもあって、シンフォニックな味わいもあり、ほとんど難解さはない。
インストメインながら曲は長めで、10分台のものや、23分の組曲なんてものもある。
たおやかなフルートの音色や、コロコロとしたマリンバにギターが重なると
ジャズと室内楽とシンフォニックの境界を行き来するプログレサウンドとなる。
音には北欧らしい清涼感があり、同郷のPEKKA POHJOLAにも通じる力の抜け具合が耳に優しい
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 チェンバー度・・8 総合・・8
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LAURI PORRA「All Children Have Super Powers」
STRATOVARIUSのベーシスト、ラウリ・ポラーのソロアルバム。2008作
2005年からストヴァリに加わったこのベーシストは、実は音楽院出身で
あのシベリウスを先祖に持つ、ジャズやクラシックの素養もある才人であった。
一見して地味なジャケットながら、このアルバムにおける音楽性はじつに幅広く、
薄暗い叙情を聴かせるしっとりとした曲調はPINK FLOYD的でもあり、
アコースティカルな素朴さとメロディには北欧的な土着性も感じられて耳に優しい。
トランペットの音色やクラシカルなピアノ、美しいシンセにメロウなギターが加わると
北欧シンフォニックロックの質感にもなる。女性コーラスの入ったヒーリング調の曲などもあり、
プログレリスナーにも勧められる繊細でやわらかな作品である。
むしろプログレ度・・8 メタル度・・3 薄暗叙情度・・8 総合・・8
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◆個性派系〜いうなれば楽しいヘンタイさん

MATS MORGAN BAND「The Music or the Money」
スウェーデンのアヴァン(ポップ)ロックバンド、マッツ・モルガン・バンドの2010作
全盲のシンセ弾きマッツの常人離れしたシンセワークと、モルガンの技巧的かつ軽妙なドラム、
そして、バンド編成になっての楽曲では、ベースを含めたアンサンブルにも磨きがかかり、
ただアヴァンギャルドなだけではなく、音楽的にもひとつ芯が通ってきたという印象がある。
本作では、マッツの曲とモルガンの曲、そしてバンド編成の曲がバラバラに入っていて、
アートな感性の宇宙人的奇妙さであったり、超絶でテクニカルかつコミカルであったりする…
一括りで言うなら「楽しいヘンタイ」というような、斬新なサウンドが目一杯詰まっている。
頭で理解しようとは思わず、ノリと感性、右脳で楽しむ、ワンダーなアヴァン・プログレ作品である。
テクニカル度・・9 アヴァンギャル度・・9 ヘンタイ度・・9 総合・・9
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ALAMAAILMAN VASARAT「HUURO KOLKKO」
フィンランドのチェンバー・プログレバンド、アラマーイルマン・ヴァサラットの4th。2009作
トロンボーン、サックス、チェロといった楽器を激しく鳴らして独自の音楽を追求してきたこのバンド
2009年にはついに来日公演も果たし、ますます勢いに乗ってきている。「消えた冒険家」という
意味不明なタイトルの今作でも、のっけから重厚なチェロの音色にサックス、トロンボーンが愉快に絡み、
もはやこのバンドでしか描き出せない、ユーモア溢れるダンディズムといったようなものを匂わせた
独自のサウンドを聴かせる。アヴァンギャルドな天然ポケ的感性の中に、哀愁をにじませているのがいかにも
フィンランド的な情緒であり、メロディカなどの使用も含めて前作以上に音のメリハリがついているのもよろしい。
メロディアス度・・7 変態度・・8 哀愁度・・8 総合・・8
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Diablo Swing Orchestra「Sing Along Songs for the Damned & Delirious」
スウェーデンのプログレ・ジャズメタルバンド、ディアブロ・スウィング・オーケストラの2nd。2009作
ジャケからしてユーモアたっぷりだが、サウンドの方もさらなるジャズとメタルの自然の融合がなされている。
ハネるリズムの上にザクザクとしたギターとサックスが絡み、そこに男女ヴォーカルが絡む濃密な作風で、
演奏自体のレベルも上がってきており、メタリックなスウィングジャズとしての完成度が無駄に高まっている。
軽やかなピアノの音色やら、ヴイヴイいわせるベースの巧みさやら、部分ごとの説得力が大変素晴らしく、
本気ジャズ的メタル遊び…ともいうべき強固な世界観に磨きがかかっているばかりか、
低音の男声とオペラティックな女性声という対比がコントラストとなって、作品としてのテンションも増している。
変態…というにもあまりに高い完成度と天晴れなまでの真摯な遊び心。敬服するしかない強力作である。
ジャズメタル度・・9 スウィング度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8.5
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ANTI-DEPRESSIVE DELIVERY「FEEL MELT RELEASE ESCAPE」
ノルウェーのハードプログレバンド、アンチ・デプレッシブ・デリバリーの2004作
面白いことに、このバンドメンバーは皆デスメタル関係でバンド活動をしていた経緯をもつ。
サウンドの方は、変拍子リズムを使用したギターリフに時々デスメタルチックになるドラミング、
そこにヴィンデージ調のキーボードが重なり、新しくないようでいて意外にこのタイプはいないというもの。
時に古めかしいハモンドや、まるでANEKDOTENのようなメロトロンが盛大に鳴り響き、
メロディにはキャッチーさをかいま見せつつも北欧のバンドらしいさびれた風情をかもしだす。
難解さよりはプログレ・ロック的なノリがあるので、複雑すぎる変態系が苦手な人にも聴けるだろう。
ACT、ANEKDOTEN、PAIN OF SALVATION、MATS/MORGANあたりに通じる要素も感じられる。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 変態度・・7 総合・・8
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SHINING「Blackjazz」
ノルウェーの変態メタル系プログレバンド、シャイニングの5th。2010作
もともとはKING CRIMSON/レコメン系のプログレバンドだったらしいが、今作のインパクトは凄い。
激しくたたみかけるドラムに乗せる歪ませたサックス、そしてまるでブラックメタルばりに
絶叫するスクリームヴォーカルと、タイトルのようにブラックメタルとアヴァン・ジャズロックの融合という
一種異様なまでのサウンドを作り出している。ノイジーでアヴァンギャルドな音像の中に、
インダストリアルなシンセアレンジや、変則リズムのテクニカルな知的さも織り込んで一筋縄ではいかない。
曲によってはMeshuggahあたりのファンにも対応。ラストはクリムゾンの“21世紀の精神異常者”のカヴァー。
変態プログレ度・・8 変態ジャズ度・・7 変態メタル度・・8 総合・・8
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◆プログレハード系〜キャッチーなメロをハードめに

ACT 「SILENCE」
スウェーデンのプログレハードバンド、アクトの4th。2006作
1stの時点から絶品のメロディセンスと、プログレ的なリズムアプローチの妙が冴えていたが、
今作でもキャッチーでありながら哀愁の叙情を感じさせるそのメロディはいっそう引き立ち、
ちょっとした細かなアレンジの面でも、その類まれな知性を感じさせるのがやはり素晴らしい。
歌メロにかぶさる絶品のストリングスアレンジなども、泣きのつぼを刺激しまくりだし、
ラストの9パートに分かれた20分の組曲は、ドラマティックでそしてしっかりとプログレしており、
これまでの彼らの大曲では最高の出来映え。メロディの充実という点でまさに傑作アルバムといえる。
メロディアス度・・9 プログレ度・・8 楽曲センス・・10 総合・・9
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FLAGSHIP 「maiden voyage」
スウェーデンのプログレハードユニット、フラッグシップの2005作
一聴してKANSASからの影響を感じさせるプログレハード作。
難解な部分は微塵もなく、メロディには分かりやすさと哀愁があり、
美しいピアノの音色やヴォーカルの歌いかたもどこか古き良きロマンを感じさせる。
ヴァイオリン的なシンセの音色とギターの絡みもなかなか確信犯的で、
KANSASをはじめ70年代のアメリカ系プログレハードを現代に甦らせたかのようなサウンド。
クオリティも高いです。そして当のKANSASのケリー・リヴグレンもゲスト参加。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 KANSAS度・・8 総合・・8
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BLACK BONZO「Operation Matnual The Guillotine model DRAMA」
スウェーデンのヴィンテージロックバンド、ブラック・ボンゾの3rd。2009作
メロトロンやハモンドオルガンを掻き鳴らし、かつてのDEEP PURPLEURIAH HEEPなど
70年代ブリティッシュロックを思わせるレトロなプログレハードサウンドで、マニアの心を掴んだ彼ら、
3作目となる本作はタイトル通り、ギロチン…つまり断頭台をテーマにしたアルバムであるらしい。
もちろんサウンドの方は、ヴィンテージなオルガンの音色に、古き良きギターリフで聴かせる
相変わらず70's懐古主義的な香りがぷんぷん。聴いていて思わずにんまりである。
今回はアコースティカルな要素も取り入れるなど、肩の力が抜けたより自然体の作風といえ、
前2作に比べるとややインパクトの点では薄いものの、よりやわらかみのあるレトロロックとなっている。
メロディアス度・・8 プログレハー度・・8 レトロ&懐古度・・9 総合・・8
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◆北欧プログレの歴史を味わえるVA

Pokstenen-Tribute to Swedish Progressive Rock
Museaレーベル主催による70年代北欧プログレッシブロックのトリビュート作。2009作
参加バンドはBEARDFISH、Simon Says、In The Labtlinthといった北欧のバンドから、
Willowglass、Echoes、Jinetes Negrosなど世界各国のシンフォニック系バンドが多数。
KAIPAをはじめ、DICE、Samla Mammas Manna、Trettioariga Kriget、Bo Hansson、Ragnarok、
さらには、Atlas、Blakulla、Ralph Lundsten、Novemberといったあたりまでをカヴァーしている。
原曲を知っていればより楽しめるだろうが、知らなくても北欧バンド特有のメロウな叙情と
いくぶんの野暮ったさを含んだ楽曲たちはなかなか味わい深く、聴き終える頃にはきっと
北欧プログレに興味を持つに違いない。個人的にはやはりKAIPAとDICEの曲が思い入れ深い。
DICEの「黙示録の四人の御遣い達」を4つのバンドが、それぞれ曲を再現しているのも嬉しい。
メロディアス度・・8 北欧度・・9 マニアック度・・9 総合・・8
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上記紹介作品のうち、20枚以上持っているという方は、かなりの北欧プログレ好きですヨ♪

*「レトロなヴィンデージロック」特集
*CDレビュープログレ・北欧ページ
*プログレ名作選も併せてご覧ください。



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