中近東圏メタルプログレ
〜イスラエル、トルコ、チュニジア、サウジアラビア

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教のそれぞれの聖地であるエルサレムを抱えるイスラエルという国は、
その特殊性において、他の中東国家とは一線を画すだろう。数多くの悲劇や争いに包まれたこの国において、
Orphaned Landをはじめメタル系のバンドが存外多く現れているという点はとても興味深い。
そして、イスラム圏においては比較的西洋に近しいトルコでは、ゴシックメタル系のバンドなどもおり
音楽という芸術においてもヨーロッパの感性を上手く取り込んでいることが分かる。
ここでは、我々にとっては辺境の地にも思える、ミステリアスな中東のバンドたちを紹介してみたい。

                                                緑川 とうせい


◆イスラエルのメタルバンド

ORPHANED LAND「EL NORRA ALILA」
イスラエルのゴシック・デスメタルバンド、オルファンド・ランドの2nd。1996作
とにかくこのバンドの3rd「MABOOL」を聴いて度肝を抜かれたわけだが、
中近東メロディとゴシック・デスサウンドとの融合はこのアルバムでも健在。
シタールやパーカッション、ヴァイオリン、それにアラビア風なチャントなどを織り込み
メタリックでありながら、民俗音楽的でもあるという不思議な構築が見事になされている。
所々に小曲を配してアルバム全体ををつなげるやり方などはどこかプログレ的で、
しっかりとしたテクニックの演奏と同様、とても知性的なものを感じるバンドである。
ゴシック度・・7 中近東度・・9 壮大度・・8 総合・・8
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ORPHANED LAND「MABOOL THE STORY OF THREE SONS OF SEVEN
イスラエルのゴシック・デス・メタルバンド、オルファンド・ランドの3rd。2004作
特有の中近東メロディを効果的に配しながら、ギターのフレーズは流麗でメロデス的。
ゴシックメタル風の耽美さもあり、普通声とデス声を使い分ける様はOPETHあたりにも通じる。
時にキーボートが音を盛り上げ、女性Voや壮大なコーラス、パーカッションなどの要素が絡まり合い
中近東音楽とメロデスを見事に融合させた、スケールの大きなサウンドを作り上げてゆく。
変わったゴシックが聴きたい方、OPETHのようなセンスのよいメロデスが好きな方、
はてはAZIGZA等の中近東系プログレロックを好む方にまで広く薦めたい素晴らしい作品である。
なおボーナスCD付き2枚組ではアコースティックライブの音源が入っていて、こちらもなかなか楽しめる。
ドラマティック度・・9 中近東度・・8 壮大度・・9 総合・・8.5 
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Orphaned Land「The Never Ending Way Of ORwarriOR」
イスラエルのゴシック・デスメタルバンド、オルファンド・ランドの2010作
これまで通り中近東的なフレーズを随所にまぶしながら、デスヴォイスやゴシック色もまじえて、
ドラマティックに展開するサウンドはそのままに、今作ではスティーブ・ウィルソン(Porcupine Tree)との
共同作業もあってか、より音がダイナミックになり、いうなればメジャー感が増している。
逆に言うと、前作までにあった辺境的な怪しさ、得体のしれなさが薄れているので、
たとえばOPETHの近作などと同様、以前からのコアなリスナーには痛し痒しかもしれない。
とはいえ、イスラエルきっての個性派バンドが、ワールドワイドに聴かれるきっかけとなるような、
クオリティの高いアルバムだとは思います。むしろアコースティカルな情緒にこそ魅力が隠されているかも。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 壮大度・・8 総合・・8
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SALEM「Salem Kaddish」
イスラエルのドゥーム・デスメタル、セイラムの1994年作
結成は80年代と古く、イスラエルのメタルバンドとしてはOrphaned Landと並ぶ存在だろう。
沈み込むようなギターリフに絶叫するデスヴォイス、中近東色を感じさせるサイケな雰囲気も独特で
単なるドゥームゴシックというにはとどまらない構築センスもこの当時としては見事なものだ。
オランダのThe Gatheringが男性Voだった1stあたりの雰囲気にも通じる怪しげな空気と、その一方では
古き良きデスメタル的なアグレッシブな部分もあり、ダークなスケール感を含んだ雰囲気もよろしい。
ジャケは2011年の再発盤のもの。リマスターで音の迫力も増しています。
ドラマティック度・・8 ドゥーム度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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SALEM「STRINGS ATTACHED」
イスラエルのゴシック・デスメタルバンド、セイラムの2005年作
既存の楽曲をストリングスカルテットを加えた形でアレンジし直したアルバムらしい。
曲調はデスというには速くなくミドルテンポ中心で、比較的オーソドックスなのだが
そこにデス声と女性Voが乗り、バックには優雅にストリングスの音色が響いている。
邪悪さと耽美さが半々といった感じなので、雰囲気ものとしてもなかなか聴きやい。
インパクトという点ではやや欠けるが、クラシカルなゴシックが好きならけっこう楽しめる。
蛇足だが、ジャケにも写っているチェロのおねえさんがきれい。(笑)
シンフォニック度・・7 ゴシック度・・7 クラシカル度・・8 総合・・7.5
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AMASEFFERSlaves for Life」
イスラエルのシンフォニックメタルバンド、アマセフェアーの2008年作
どこか異国的に鳴り響くフルートの音色と、中近東的なメロディを折り込みつつ
ややダークなプログレメタル的なサウンドは、なかなか個性的。
旧約聖書にある「エクソダス(脱エジプト記)」をテーマに、シリアスに展開するコンセプト作で
ときにシンセによにる壮大なスケール感もあって、AYREONなどが好きな方にも勧められる。
Therionのマッツ・レヴィンの歌声も、サウンドの説得力を大いに高めていて、
基本は英詞であるが、ときおりヘブライ語の語りが挿入されるなど、世界観をしっかりと構築している。
Orphaned Landなどと同様、地域性を活かしたコンセプトと、壮大さかつ重厚なドラマ性で聴かせる力作だ。
シンフォニック度・・8 壮大度・・9 重厚度・・9 総合・・8
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EdgendNew Identity」
イスラエルのプログレメタルバンド、エドジェンドの2009年作
イスラエルのバンドといえば、Orphaned Land、Amaseferあたりを思い浮かべるが、
このバンドはそれらとは異なる、重厚な本格派のプログレメタルをやっている。
シンセによるオーケストラルなドラマティックなアレンジと、ヘヴィなギターワークを中心に、
プログレパワー的な雰囲気で、確かな演奏力とともに世界観を構築してゆく。
ネオクラ風味や壮麗なコーラスなども含めて、広がりのある音作りがなかなか見事で、
シンフォニックな叙情性とメタリックな重厚さのバランスのとれた力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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EPHRAT「No One's Words」
イスラエルのプログレ(メタル)バンド、エフェラトの2008作
適度にメタリックなギターとシンセを中心に、薄暗い叙情で聴かせるサウンドは
ときにゆったりとメロウに、ときにフルートなども入った民族色もあり、じっくりと盛り上げるドラマ性は、
ProgMetal系のリスナーにも勧められる。のっけから10分を超える大曲に、その後も8分、9分という大作指向で、
新人にしては堂々たる自身が窺える。ラストの18分の組曲もなかなか圧巻。
ゲストヴォーカルにはなんとPain of Salvationのダニエル・ギルデンロウに
PAATOSの女性Vo、PetronellaNettermalm 嬢が参加している。
ドラマティック度・・8 メタリック度・・7 薄暗度・・8 総合・・8
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Daniel J「Losing Time」
イスラエル出身のギタリスト、ダニエル.Jの2003年作
ギターの他にベースにドラム、シンセも弾きヴォーカルもとるというマルチプレイヤーで
Jordan Rudessのソロ作に参加したこともあるという経歴の持ち主。
ヘヴィなリフとプログレメタリックな変拍子にテクニカルなキメという、DREAM THEATERに通じる
部分の多いサウンドだが、モダンなヘヴィロック風味やUKロック的なキャッチーな歌メロもあったりと、
なかなか面白い。現時点ではDTからの影響や、雑多な要素が楽曲の中で活かしきれていない気がするが、
テクニック的にはもちろん、才能あるミュージシャンであることは間違いないだろう。
個人的にはかすかに覗かせる中近東的フレイバーを増やすと個性になる気がする。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 ProgMetal度・・8 総合・・7.5
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Winterhorde 「Underwatermoon」
イスラエルのシンフォニックブラック、ウインターホードの2010年作
シンフォニックなシンセアレンジと、ギターのトレモロリフを乗せて疾走する、
まるで北欧ブラックメタルのようなスタイル。イスラエルというお国柄か、
ミステリアスでもの悲しい雰囲気がドラマティックな世界観となっていて、
静かな叙情パートなどを含むメリハリのある楽曲アレンジにもセンスを感じさせる。
激しさとメロディアスさのバランスと、しっかりとした構築力を備えた高品質な作品だ。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 お国柄度・・8 総合・・8
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Eternal Gray「Your Gods, My Enemies」
イスラエルのデスメタル、エターナル・グレイの2011年作
イスラエルという国柄を考えると、まさに強烈なアルバムタイトルであるが、
サウンドもソリッドなギターリフに咆哮するデスヴォイスを乗せて、激しく疾走する強力な作風。
デスコア的なブルータルな激しさと荘厳な雰囲気に包まれているが、ヘヴィな硬質感の中にも、
シンセによる味付けなどもあり、随所にドラマティックなセンスが光っている。
モダンな音作りも含めて、地域性を抜きにしてクオリティの高い力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 荘厳度・・8 総合・・8
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◆イスラエルのプログレバンド

ZINGALE「PEACE」
イスラエルのプログレバンド、ツィンガーレの1977作
LP時代からイスラエル産バンドの幻の傑作とされてきた作品。邦題は「平和への希求」
メンバー表記は二人の作詞者を含む8人編成。艶やかなヴァイオリンの鳴り響くサウンドは、
演奏面、楽曲のクオリティともに西欧のバンドに引けをとらないレベル。
ジャズロック的にたたみかける部分と、美しいピアノとシンセ、やわらかなヴォーカルで
しっとりと聴かせる部分とが、なかなかよいコントラストになっている。
辺境ものプログレとしては、傑作といってよいクラスにある作品だろう。
アルバムタイトルや、曲名の“Soon The War is Over”が、お国柄の現実の重みを感じさせる。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 辺境度・・7 総合・・8
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ZINGALE
「The Bright Side」
イスラエルのプログレバンド、ツィンガーレの2009年作
1977年に唯一の作品を残して消えたバンドの、じつに32年ぶりとなる復活作。
ムーグやオルガンなどを含むきらびやかなシンセワークを中心に、軽やかなアンサンブルで聴かせる、
優雅なシンフォニックロックサウンド。美麗なシンセに重なるメロウなギターフレーズによる泣きの叙情は、
ロシアのLittle Tragediesあたりに通じる感触もあるが、こちらはいかにも自主制作らしい録音の弱さが、
マイナー臭さをかもしだしている。ジョン・アンダースもどきのようなナヨナヨとしたヴォーカルも好みを分けるだろうが、
10分を超えるナンバーでの軽やかでエキセントリックな展開などもなかなか楽しいし、全体的にも繊細な叙情性を描く
辺境系のシンフォニック・プログレとしては、マニアなリスナーには嬉しい復活作だろう。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・7.5
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SHESHET
イスラエルのプログレバンド、シシェットの1977年作
美しいフルートの音色に軽やかなピアノが絡み、女性ヴォーカルがやわらかな歌を乗せる、
カンタベリー的な優雅さを感じさせるサウンド。軽妙なアンサンブルと繊細な美しさは、
NATIONAL HEALTHあたりを思わせ、辺境的な野暮ったさはほぼ皆無。
たっぷりとフルートを響かせるジャズロック風味の軽やかなプログレが楽しめる。
70年代のイスラエルでは出色のクオリティといってよい作品だろう。
30周年記念の再発盤には、幻の2ndの音源を収録した2枚組仕様となっていて、
全6曲20分余りの音源であるが、なかなか質が高く、ボーナス的に鑑賞できる。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 軽やか&優雅度・・9 総合・・8.5
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TRESPASS「IN HAZE OF TIME」
イスラエルのキーボードトリオ、トレスパスの1st。2002年作
キーボードメインのテクニカルアンサンブルで、ときにクラシカルに、あるいはジャジーに
シンセを弾きまくるところなどはELP+NICE(つまりはTRACE?)という感じか。
インストメインだが英詞の歌にも違和感はなく、どこのバンドかと尋ねなければ、イギリスやヨーロッパの
一級バンドだと思い込んでしまいそうだ。熱情的な演奏の中にも気品とエレガントさが垣間見えて、
5曲目の叙情的なクラシカルインスト曲などはじつに素晴らしい。世界的な基準でみても
クラシカル・キーボードプログレの傑作だろう。現在はジャケを変えて再販されている。
メロディアス度・・8 クラシカル度・・8 キーボー度・・9 総合・・8.5
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TRESPASSMorning Lights
イスラエルのプログレバンド、トレスパスの2nd。2006年作
驚愕のクオリティの傑作であった前作「IN HAZE OF TIME」に続く期待の2作目。
NICETRACEかという、素晴らしいキーボードロックサウンドはそのままで、
国名を知らずに聴けば、あるいは英国あたりのバンドかと思われそうなほど。
メロディには古典的なバロックの香りが感じられ、リズム面を含めての確かな演奏力に加え、
西洋的センスのアレンジ力も見事で、総じて音には気品と優雅さとが漂っている
フルートの音色も美しく、クラシカルなエッセンスが満喫できるキーボードプログレの傑作だ。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・9 キーボー度・・9 総合・・8.5
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SOUL ENEMA「Thin Ice Crawling」
イスラエルのハードシンフォニックロック、ソウル・エネマの2010年作
イスラエルという国にも、あなどれないようないいバンドはいるのであった。
このバンドもシンセを含む5人組で、じつにドラマティックなシンフォプログレをやっている。
魅力的な女性ヴォーカルの歌声と、美麗なシンセアレンジで構築されるそのサウンドは
随所にテクニカルなProgMetal風味と、プログレ的で優雅なエッセンスを含んでとてもセンスが良く、
楽曲は7〜9分台と長めながら飽きさせない。ときに中近東的な民俗調のメロディも取り込んだりと
アレンジ面での引き出しの多さも見事。美しいシンフォニック性と地域性を両立させたような傑作。
ドラマティック度・・8 シンフォニック度・・8 構築度・・8 総合・・8

TELIOF「Is It?」
イスラエルのプログレバンド、テリオフの2008年作
美しい
女性ヴォーカルの歌声とピアノやオルガンを含んだ美麗なシンセワーク、
そしてQUEENを思わせるキャッチーなメロディで聴かせるサウンドは、
叙情的なギターフレーズとともに、じつに繊細でやわらかで優雅な耳心地。
20分を超えるタイトル組曲は、荘厳な男女コーラスやアコースティカルな素朴さなどを含め、
起伏に富んだアレンジで、大曲を紡ぐ構築力にもエレガントなセンスを感じさせる。
シアトリカルなドラマ性やクラシカルな美意識も垣間見せる、高品質な傑作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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Sanhedrin「Ever After」
イスラエルのプログレバンド、サンヘドリンの2011年作
SHESHETのフルート奏者を擁するバンドで、美しいシンセアレンジとフルートの音色がやわらかに響く、
じつに優雅なプログレサウンド。初期のKENSOなども思わせる軽やかな叙情性が耳に優しく、
ギターの奏でるメロウなフレーズをうっすらとしたメロトロンが包み込んでゆくのはうっとりである。
CAMELやAnyones Daughter あたりにも通じる繊細さと、やわらかなメロディを紡いでゆく、
幻想的な聴き心地には、多くの叙情派愛好家が満足するだろう。オールインストであるが、
随所にスリリングなアンサンブルも聴かせるなど、プログレとしての構築センスも見事な傑作。
メロディック度・・9 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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Musica Ficta「A Child & A Well」
イスラエルのプログレバンド、ムジカ・フィクタの2012年作
女性Vo、フルート奏者を含む6人編成で、オルガンやピアノを含んだ美しいシンセアレンジに
女性ヴォーカルのキュートな歌声とともに軽やかなアンサンブルを聴かせる傑作。
4〜6分という比較的短めの曲が中心だが、フルートの音色がやわらかに響き、
アコースティカルな優雅さを中世音楽的な幻想性で構築するセンスがじつに素敵である。
軽妙でいて繊細、しっとりとした耳心地の良さは、ある意味でPFMなどにも通じるかもしれない。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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APERCO 「THE BATTLE」
イスラエルのプログレバンド、アペルコの2016年作
美しいシンセとオーケストレーションによるイントロから、フルートがやわらかに鳴り響き、
CAMELを思わせるような優美なインストパートが広がってゆく。叙情的な泣きのギターに
ジェントルなヴォーカルも加わって、70年代英国ルーツの素朴な牧歌性に包まれたサウンドを描く。
11分の大曲も、メロトロンなどのうっすらとしたシンセにピアノによる繊細なシンフォニック性に加え、
サイケロック的な怪しげな浮遊感も覗かせる。ムーグシンセ鳴り響くキャッチーなノリのナンバーなど、
古き良きプログレへの敬愛をうかがわせる作風には、なかなか好感が持てる。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 繊細度・・8 総合・・8
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◆トルコ、キプロスのメタルバンド

PENTAGRAM「ANATOLIA」
トルコのメタルバンド、ペンタグラムの1997年作
トルコの伝説のメタルバンドの3作目。2008年のボーナス入り再発盤。
ぱっと聴きには、正統派のギターリフと英語歌詞のヴォーカルに、
絡みつくようなドゥームな妖しさと中近東的なフレーズもまじえたサウンド。
のっけから「アナトリア〜」というコーラスが、いかにもターキッシュな世界観である。
ヴォーカルの声質も含めて、OZZYのトルコ版か?というような感じもありつつ、
適度なダークさとトルコという地域性に古き良きメタルの質感が合わさった力作である。
ドラマティック度・・8 妖しさ度・・8 ターキッシュ度・・8 総合・・8
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NEVERLAND「Reversing Time」
トルコのシンフォニックメタルユニット、ネヴァーランドの2008作
DREAMTONEというバンドを中心にしたユニットで、そこにギリシャ人女性Voを加え、
たっぷりとシンセを使ったシンフォニックメタルに、ProgMetal的な質感を盛り込んだスタイル。
全体的には壮麗なシンセワークや、男女ヴォーカルで重厚に聴かせる部分を中心に、
モダンなアレンジと、ファンタジックな世界観がなかなか上手く融合されている印象。
ほのかな民族色を感じるのはトルコというお国柄か。わずかなイモ臭さが味になっている。
ゲストにはBLIND GUARDIANのハンズィ・キアシュ、SHADOW GALLERY
ゲイリー・ワーカンプらが参加、楽曲にドラマティックな厚みと説得力を加えている。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 メタル度・・7 総合・・7.5
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Dreamtone「Sojourn」
トルコのプログレメタルバンド、ドリームトーンの2006年作
Neverlandの方でも活動するメンバーによる、ドラマティックなProgMetal。
おそらくストーリーに基づいたコンセプト作で、曲間にはナレーションやSEなどが入り、
ややダークでシアトリカルな世界観を演出する。楽曲自体にはあまり派手さはないが、
シンセによるシンフォニックな味付けと、哀愁を漂わせつつほのかにアラビックな香りを
感じさせるギターワークによるインスト部分はなかなかの深みある音を聴かせる。
全体的にはテクニカルさよりも雰囲気でじっくりと聴かせる作風だ。
シンフォニック度・・7 ドラマティック度・・8 ProgMetal度・・7 総合・・7.5
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ALMORAKiyamet Senfonist」
トルコのフォーキーメタルバンド、アルモラの5th。2008年作
美しいシンセにいくぶんヘナちょこなギター、女性ヴォーカルの歌声を乗せた、やわらかな感触で聴かせる
田舎臭い辺境メタルは相変わらず。シンフォニックなアレンジに加え、フルートなどの音色も牧歌的。
男性ヴォーカルのいくぶんモダンな曲もあるが、母国語のヴォーカルには辺境臭さがぷんぷんなので、
そうヘヴィな感じにもならない。まったりやわらか系のちょいフォーキーなシンフォメタルです。
シンフォニック度・・7 フォーキー度・・7 辺境度・・8 総合・・7.5
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Sebnem Ferah「Benim Adim Orman」
トルコの歌姫とも呼ばれる、シェブネム・フェラーの2010作
ゴシックロック的なハードさと、美麗なシンフォニックアレンジが合わさった楽曲に
トルコ語による艶めいた歌声で聴かせるサウンド。いくぶんの民族風味も加わって
2005年の「Can Kiriklari」に比べて、よりしっとりとした作風で、好みの音になった。
異国情緒を漂わせた女性ヴォーカルで、ウィズインのトルコ版かというような煽情的な好作。
メロディアス度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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CATAFALQUE「Dialectique
トルコのゴシックメタル、カタファルケの2007年作
シンセによるモダンなアレンジと男女ツインヴォーカルで聴かせる
かつてのTheatre of Tragedyを思わせるゴシックメタルサウンド。
歌詞は英語なので、トルコという地域性はあまり感じさせず、
ときおりデスヴォイスも加わるが、全体的にヘヴィすぎないキャッチーな音作りが
とても聴きやすい。女性Vo、Ozge嬢の歌声もコケティッシュでなかなか好みである。
メロディアス度・・8 モダンゴシック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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MAGILUM 「KIRMIZI KAR」
トルコのゴシックメタル、マギラムの2009年作
トルコのゴシック系というと、Sebnem FerahCatafalqueなどが知られるが
このバンドもななかセンスが良く、質の高いゴシックメタルを聴かせてくれる。
トルコ語による女性ヴォーカルのエキゾチックな歌声を響かせながら、
適度にモダンなアレンジとともに、キャッチーな耳心地のサウンドを描いてゆく。
ギターの奏でるメロウなフレーズや哀愁の叙情を漂わせたメロディ作りが
異国的な情緒を漂わせていて、ターキッシュな独特の味わいとなっている。
メロディアス度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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RavenWoodsEnfeebling the Throne
トルコのデスメタル、レイヴンウッズの2011年作
ターキッシュデスメタルというのも珍しいが、クオリティはこれがなかなか高い。
ブラストビートで激烈にたたみかける迫力と、かもしだすダークな荘厳さは、
たとえばVADERBEHEMOTHなどと比べても、まったく引けをとらない。
ツインギターのリフはときにテクニカルで、随所にアラビックなフレーズも覗かせるなど
そのセンスの良さも光っている。土着性を活かしたドラマティックなデスメタル傑作!
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 荘厳度・・8 総合・・8
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ARRAYAN PATH「Ira Imperium」
キプロスのメロディックメタル、アラヤン・パスの2011年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、メロディックかつパワフルな正統派メタルサウンド。
力量のあるヴォーカルと重厚な演奏が合わさった堂々たる作風で、
辺境的なチープさはほとんど感じられない。トルコに近い島国ということもあってか
いくぶんアラビックな旋律も含んだメロディとどこか神秘的な荘厳さも漂わせた
正統派のメロティック・パワーメタルが楽しめる。濃密な聴き心地の力作だ。
メロディック度・・8 重厚度・・8 正統派度・・8 総合・・8
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◆その他の国

MYRATH「Tales of the Sands」
チュニジアのプログレメタルバンド、マイラスの2011年作
前作も民俗色を取り入れた高品質な作品だったが、今作もシンフォニックな美麗さに
中近東的なフレイバーを融合させたORPHANED LANDにも通じるサウンド。
随所に母国語の歌唱を織り込んだり、女性コーラスなどもアクセントになっていて
緻密なアレンジと展開力も含めて、サウンドのスケール感は前作以上だ。
曲は3〜5分台と比較的コンパクトなので難解さもなく、曲によってはクラシカルな質感や
モダンな薄暗系プログレのような情感もあり、バンドとしての懐の深さを感じさせる。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 楽曲センス・・8 総合・・8
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Al-NamroodKitab Al Awthan
サウジアラビアのブラックメタル、アル・ナムロードの3rd。2012年作
イスラム発祥の地から現れた民俗ブラックメタルバンド。前作もなかなかの力作であったが今作も着実に成長している。
シンフォニックかつ荘厳なイントロから、ヘヴィさを増したギターリフがアラビックな音階を奏で
そこにシンセが美しく絡んでゆく、独特の中近東ブラックサウンドにさらに磨きがかかっている。
低音のスクリームヴォイスも迫力たっぷりで、重厚な音の迫力がひしひしと伝わってくるようになった。
民俗的なオリエンタル性と、ブラックメタルとしてのダークさが巧みに融合された力作に仕上がっている。
このままゆけば、いずれはORPHANED LANDにも並ぶほどの存在になるかもしれない。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 中東度・・9 総合・・8
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BILOCATE「Sudden Death Syndrome」
レバノンのプログレッシブデス、ビロケートの2009年作
アラビックでミステリアスなイントロから、曲が始まると唸るような低音デスヴォイスとともに
重厚なサウンドが広がってゆく。ドゥーミィなギターリフにうっすらとしたシンセがかぶさり、
スケール感のある世界観とともに、OPETHのように緩急のついた知的な展開も見せる。
随所にアラビックな旋律も含ませたメロディックな感触やクラシカルなシンセの美旋律も聴かせるなど、
ドラマティックな楽曲アレンジのセンスもなかなか見事。スケール感を感じさせる中東プログレ・デス。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 ミステリアス度・・8 総合・・8
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Kimaera 「The Harbinger of Doom」
レバノンのゴシックデスメタル、キマエラの2013年作
ツインギターによる重厚なリフに美しいシンセアレンジ、そこにデスヴォイスを乗せたサウンドで、
随所にブルータルな激しさも含んだ感触は、イスラエルのSALEMあたりにも通じる雰囲気。
辺境的なミステリアスさも感じさせる荘厳な世界観で、デスメタル的な音圧の中にも、
随所に女性ヴァイオリン奏者の奏でる美しい旋律によるメランコリックな叙情性や
女性ヴォーカルが加わったゴシック的な耽美さもある。重厚なる中東ゴシックデスの力作。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 ゴシックデス度・・8 総合・・8
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Chalice of Doom「Into Hypnagogia」
ヨルダンのゴシック・ドゥームメタル、チャリス・オブ・ドゥームの2013年作
シンセを含む5人編成で、美しいシンセアレンジに重厚なギターと低音デスヴォイスを乗せた、
DraconianMy Dying Brideあたりに通じる本格派のゴシック・ドゥームメタル。
随所に叙情的なギターの旋律やマイルドなヴォーカルも加わった、メランコリックな世界観と、
シンフォニックな美しさに包まれていて、ヴォーカルはデス声だが全体的にもメロディックに聴きやすい。
イスラム特有のジハードやシャヒード(殉教者)などをテーマにした雰囲気には、さすがホンモノノ香りがする。
演奏や楽曲のクオリティも高いのだ、耽美なゴシックメタルとしても普通に楽しめる力作である。
ドラマティック度・・8 ゴシック度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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NARJAHANAM「Undama Tath'hur Al Shams Mn Al Gharb」
バーレーンのブラックメタル、ナルジャハナムの2007年作
ミスティックなイントロから、アラビックなギターのメロディにデスヴォイスが重なり、
暗黒の世界を描き出す。ときにシンセによる美しさもあって、神秘的な宗教色も感じさせつつ、
中近東的な雰囲気をうねりのある邪悪さで表現してゆく、その世界観はなかなか荘厳だ。
音質の荒さもプリミティブに作用していて、こもりがちなドラムのブラストビートも
かえって太古の邪悪さを思わせる。異国的な闇の美学が詰まった中近東ブラックメタルだ。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 神秘的度・・9 総合・・7.5
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OSIRIS 「Myths & Legend」
バーレーンのプログレバンド、オシリスの1984年作
中東バーレーンでは名の知られたバンド、本作は2ndでバンドの代表作とされる。
サウンドは中東臭さはさほどなく、ムーグを含んだシンセと、メロディックなギターに
英語歌詞のヴォーカルで聴かせる、しごく正統派のシンフォニック・プログレ。
辺境的な野暮ったさもありつつ、ギターの泣きのメロディはときにCAMELばりで、
なかなか叙情豊かな聴き心地。演奏自体にはスリリングなところはないのだが、
プログレ大好きな中東のおっさんたちがかもしだす、素朴な味わいがよいんですな。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 辺境度・・8 総合・・7.5
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OAKSENHAM 「Conquest of the Pacific」
アルメニアのプログレバンド、オークセンハムの2006年作
女性シンセ奏者、フルート、ヴァイオリン奏者を含む6人編成で、アコースティックギターに
やわらかなフルートの音色が絡む軽妙なアンサンブルに、オルガンを含んだシンセや
ときにヘヴィなギターも合わさった、なかなか個性的な民族プログレサウンド。
いうなれば、Flairckのクラシカルな優雅さをハードプログレ化したような感触もあり、
中世音楽風味のトラッドなテイストをしっかり現代的に解釈しているのが素晴らしい。
後半の26分の組曲も圧巻で、オールインストながらも最後まで楽しめる傑作です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8.5
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FROMUZ「Seventh Story」
ウズベキスタンのプログレバンド、フロムズの2010年作
前作は全曲が10分以上という大作であったが、本作も20分、16分、18分という
大曲を含む全6曲78分という力作である。まるで映画的のようなイントロから始まり、、
ときにハードフュージョン/ジャズロック的な軽やかさと、シンフォニックな音の厚みが合わさった
濃密なサウンドが展開される。これまで以上にコンセプト的なシリアスさが出ていて
ミステリアスな雰囲気が壮大な質感となり、ギターによる叙情フレーズでここぞと盛り上げる。
インストが中心ながらも細かなアレンジによる楽曲構築が見事で、聴き手を飽きさせないだけの
音の説得力もついた。ドラマティックなセンスで、辺境性を感じさせない力作に仕上がっている。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・9 濃密度・・9 総合・・8.5
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FROM.UZ「Quartus Artifactus」
ウズベキスタンのプログレバンド、フロム.ウズの2011年作
過去3枚のアルバムを再録した2CDにライブ映像入りのDVDという3枚組。
FROMUZからFROM.UZへと微妙に名前が変化しているが…まあいい。
前作「Seventh Story」の素晴らしさが印象深いが、本作はアコースティックな要素を強めた
新たなアレンジでバンドの力量を見せつける。優雅な軽やかさの中に、チェンバーロック的な
得体の知れなさを練り込んで、適度な緊張感とともに構築されるサウンドに引き込まれる。
楽曲はほとんどが10分以上であるが、切り返しの多い構成や、牧歌的でもあるメロディのセンス、
クラシックなども取り入れた多様性あるアレンジで、飽きずに聴き通せるだけの魅力と演奏力がある。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 楽曲センス・・9 総合・・8
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RISHAD SHAFI & GUNESH
トルクメニスタンのプログレジャズロックバンド、ガネッシュの1980/1984年作
旧ソ連時代の作品ということで、東欧独特のスケールの大きさとシンセによる浮遊感、
そこにエネルギッシュな爆発力が加わって、ただのジャズロックではない迫力が生まれている。
このジャケのインパクトもそうだが、リーダーRISHAD SHAFIの手数の多いドラムプレイは
明らかにジャズというよりもロック、それもプログレ的な変態感があり、
サウンドは単なる辺境モノでは片づけられない存在感をかもしだしている。
ヴォーカル入りの曲では、一転してエキゾチックな郷愁を漂わせる中東的な色が前に出る。
テクニカルさと民族色を融合させた、質の高い変態ジャズロックプログレ作だ。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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