ジャーマンロックを聴こう〜ジャーマンプログレ入門編〜


じつのところ、ジャーマンロックなるものは、メロディ愛好家たる自分にとっては、エレクトロなシンセ音楽だったり、
奇妙にアヴァンギャルドだったりと、プログレ初心者の頃はあまり良いイメージはなく、しばらく敬遠していたのだが、
あるとき、AMON DUULUの壮大なスケール感に触れ、POPOL VUHの静謐なる美しさに惹かれたとき、
はじめてジャーマンプログレの奥深さを知り、そしてFAUSTのスリリングなアヴァンギャルド性に圧倒された。
筆者は幻想の美しさを愛する人間であるから、ピコピコでガチャガチャした音楽はただ退屈なだけだし、
テクノのような打ち込みサウンドが苦手なこともあって、ジャーマンロックに対する偏見はずっとあったのであるが、
こうして自分にも楽しめるバンドの存在を見つけ、いつしかそれを気に入り始めていることに驚いたのであった。
ここでは「ジャーマンプログレはどうも難解で…」という方のために、厳選したアルバムを紹介してみたい。
プログレッシブロックの中にあっても、ひときわ特異なスタイルのバンドたちを知る良いきっかけになればと思う。

                                    緑川 とうせい


■ジャーマンロックまずはこのあたりから

Faust
ファウストの1st。1971年作
ヴュンメという町の廃校にコミューンを形成し、そこでレコーディングされた作品。
このバンドは、その特異な個性においてジャーマンロックの中でも謎多き存在だ。
テープの切り貼りでつなげられコラージュされた楽曲は、不思議な薄暗さをかもしだしつつも、
部分部分の演奏自体は決して難解なものでなく、案外感覚で聴いて楽しめる。
ドラムに乗せるギターと管楽器のフレーズはサイケロックとしてはむしろシンプルであるが、
効果音や意味不明の語りなど、予測のつかない曲の編集によって聴き手を不安にさせる。
ただ決してダイレクトに混沌を表現したものではなく、アヴァンギャルドさの中にも
作品としての整合感を覗かせており、それがある種の静謐感や美しさを作り出している。
今でいうところのポストロック的な内的な壮大さもある。ジャーマンロックのひとつの金字塔だろう。
アヴァンギャル度・・10 ロック度・・5 幻想度・・8 総合・・8.5 Amazon.co.jp で詳細を見る

Faust 「So Far」
ファウストの2nd。1972年作
1曲目はしごくシンプルで、前作よりもロックとしての演奏志向が増している。
2曲目はアコースティック。部分部分の切り貼りで長曲をなしていた1stに比べ、
今作では曲ごとに雰囲気の異なるテーマを聴かせるという作風になっている。
もちろん彼らの描こうとする得体のしれないビジョンと静謐な薄暗さは健在で、
シンセにトランペットが美しい3曲目などはまさにポストロック的だ。
途中から曲調が変わりサイケでドラッギーな緊張感が現れるのがまた面白い。
前作が芸術作品ならこちらは混沌ロックといったところか。つかみ所のなさも味になっている。
アヴァンギャル度・・8 ロック度・・7 幻想度・・7 総合・・8 Amazon.co.jp で詳細を見る

G
URU GURU 「UFO」
ジャーマンロックバンド、グル・グルの1970年作
ハードロック寄りの歪んだギターが、生々しい奔放なドラムの上でフリーキーに弾き鳴らされる。
ガレージロックのアナログ感覚と、サイケ的でもある混沌とした怪しさを含んだインストサウンドは、
楽曲というほどの整合性はないのだが、NEU!などと同様に、演奏の迫力と自由度に引き込まれ、
ある種のスリリングなアンサンブルを楽しむことができる。アルバム後半になると、ノイジーな音の塊となって
とてもアヴァンギャルドなのだが、音自体は、存在感あるベースとノリのあるドラム、ヘヴィでフリーキーなギターを乗せた、
ハードロックをルーツにしたもので、異色のサイケハードとしても楽しめる。もちろんアヴァン・ミュージックとしても強力な一枚だ。
ロック度・・8 プログレ度・・7 アヴァンギャル度・・8 総合・・8 Amazonで購入する

GURU GURU 「Hinten」
グル・グルの1971年作
前作のノイジーなアヴァンギャルド性から、今作ではハードロック的な整合性を強めた感触で、
マニ・ノイマイヤーの叩き出す激しいドラムに、テクニックのあるギターフレーズを乗せてたたみかける
フリーキーなロックが楽しめる。ドイツ語による語りなども入ったり、随所にアヴァンギャルドなパートも含ませて、
重厚なロックでジョークを表現するという、かれらの個性が現れ始めた作品ともいえるだろう。
ジャケがドイヒーなので、わりと敬遠される方も多いだろうが、ダイナミックなアヴァンロックが味わえる逸品ですぞ。
ロック度・・9 サイケ度・・7 アヴァンギャル度・・8 総合・・8 Amazonで購入する

CAN「TAGO MAGO」
カンの3rd。1971年作
当時ヨーロッパを放浪中のダモ鈴木をド素人ながらヴォーカルに据えたのも、
このバンドだからこそできたことだろう。本作はLP時代は2枚組の大作ながら、
サウンドは壮大なものではなく、荒々しさの残るフリーなガレージロックだ。
セッション録音の生々しさを感じさせる音は、方向性や楽曲うんぬんといった論議を
軽々と吹き飛ばし、好き勝手な演奏をしたら凄いのが出来た…というものだ。
ダモ鈴木の日本語を使ったいい加減なヴォーカルも、どこか味があって許せてしまう。
演奏陣はドラムをはじめとしてテクニックがあり、即興であってもそう散漫な音ではない。
アヴァンギャル度・・8 ロック度・・8 幻想度・・2 総合・・8 Amazon.co.jp で詳細を見る

CAN「FUTURE DAYS」
カンの5th。1973年作
一般的には最高作とされ、とても聴きやすいアルバム。
ほんわりとした意外なほどに美しいシンセに、適度にロックしていながらも
3rdの頃のようなガレージ色は抑え目で、、耳心地がよいまとまった演奏を聴かせる。
ポストロック的な内的広がりを描くこのサウンドでは、ダモ鈴木の歌声もおとなしめで、
これを最後にバンドを去ることになったというのも、ある意味うなずける。
即興性よりも構築へ近づいた本作は、プログレとして普通に楽しめるものになっている。
ジャーマンロックの混沌がどうも苦手という方にも勧められる作品だ。
アヴァンギャル度・・6 ロック度・・7 幻想度・・8 総合・・8 Amazon.co.jp で詳細を見る

AMON DUULU「Tanz der Lemminge」
アモンデュール2の3rd、1971年作/邦題は「野ネズミの踊り」または「ロック共同体」
LPでは2枚組だった本作は、15分、19分、18分という大曲で聴かせる力作だ。
ジャケのインパクトでは前作だが、内容の濃密さではこちら。
うっすらとしたシンセに包まれて、ヴァイオリンが鳴り渡り、楽曲は荘厳に始まる。
ゆるやかなアコースティックギターをシンフォニックですらあるキーボードが包み、
ときに薄暗い静謐感をもって、ときに東洋的な雰囲気でもって長曲が綴られてゆく。
サイケロック的な浮遊感と、なにか壮大なヴィジョンが目の前に現れるような感覚、
インプロ的な解放感と楽曲性とが見事なパランスで調和して、すべての音に緊張感をもたらしている。
おそらくドイツという国からしか出て来ないだろう、シンフォニック・サイケロックの傑作である。
シンフォニック度・・8 壮大度・・10 構築度・・8 総合・・9Amazon.co.jp で詳細を見る

AMON DUULU「Wolf City」
アモンデュール2の5th、1972年作/邦題は「狼の町」
AMON DUULというとドラッグから生まれたフリーロックというイメージがあっただけに、
このアルバムの聴きやすさ、ある種メロディアスなドラマティックさがあるのには驚いたし、
これが自分にとってのAD2のとっかかりで良かったと思う。
プログレというにはなかなかハードなギターに東洋的なシタールの音色、
紅一点、レナーテ・クナウプの中性的な歌声に、鳴り響くヴァイオリンの叙情。
サイケロックの浮遊感は残しつつも、しっかりとした楽曲構成で聴かせてくれる。
現在もっとも好きなのは3rdだが、まず初めに聴くならこれをお勧めしたい。
メロディアス度・・8 壮大度・・8 構築度・・8 総合・・8 Amazon.co.jp で詳細を見る

POPOL VUH「In Den Garten Pharaos」
ポポル・ヴーの2nd。1972年作/邦題「ファラオの庭にて」
17分、19分という大曲2曲という構成で、水音や鳥の鳴き声などのSEと
広がりのあるシンセワークを駆使して、自然のうつろう光景を描いている。
TANGERINE DREAMKlaus Schulzeなどに通じる手法であるが、
フローリアン・フリッケが描くのは、宗教や古代文明などの神秘性で、
そのメロディは滔々と流れる時のようにゆるやかで、静かに奥深い。
打ち鳴らされるパーカッションに乗って、ゆるやかなシンセ音が続くサウンドは
ゆったりとまどろみながら聴くと、古代エジプト王の静謐な庭園が脳裏に浮かんでくるようだ。
ロック度・・1 崇高度・・8 神秘度・・10 総合・・8 Amazon.co.jp で詳細を見る

POPOL VUH「LETZTE TAGE-LETZTE NACHTE
ポポル・ヴーの7th。1976年作/邦題最期の日、最期の夜」
前作の「雅歌」での優雅さに比べ、一聴してサウンドのダイナミズムが増し、
原初的な神秘性と不穏なサイケデリック要素が音に現れてきている。
こもり気味の音の中に、壮大を詰め込んだ作りはやはりAMON DUULU的で、
女性VoもそのAD2のレナーテ・クナウプになって、それまでにない妖艶な歌声で聴かせる。
明確なフレーズを奏でるギターの重ねで、スケール感のあるサウンドが構築されてゆく。
神秘的なサイケロックとして聴けば、ドイツ屈指の名作と言っても過言ではないだろう。
ロック度・・7 崇高度・・8 神秘度・・8 総合・・8.5 Amazon.co.jp で詳細を見る

ASH RA TEMPEL
アシュ・ラ・テンペルの1st。1971年作
クラウス・シュルツとマニュエル・ゲッチングの二人を中心にしたサウンドは、
原初的な混沌と神秘的な暗さを有した、妖しいまでのスケール感がある。
TANGERINE DREAMを思わせるうっすらとしたシンセに、
ドカドカと手数の多いシュルツのドラムとゲッチングのギターが加わると、
フリーキーで呪術的な雰囲気とともに、サイケロックとしての生々しさが現れる。
19分、25分という2曲の大曲は、無秩序なフリーロック的でもありながら、
どことなく人間的な土着性が感じられて、不思議な緊張感に包まれている。
本作のみでシュルツは脱退、シンセを手にソロ活動へと移行してゆく。
サイケ度・・8 ロック度・・6 幻想度・・8 総合・・8 Amazon.co.jp で詳細を見る

Klaus Schulze「Irrlicht」
ジャーマンシンセミュージックの巨匠、クラウス・シュルツェの1st。1972年作
元はTANGERINE DREAMASH RA TEMPELのドラマーであったクラウス・シュルツェが
シンセによる多重録音でここまでの世界を作り上げたのは驚嘆すべきことだ。
POPOL VUHの初期作という手本はあったにせよ、自然との同調を目指したフリッケに対して
シュルツの世界観はあくまで深い闇に沈み込むような濃密な落下の感覚がある。
キリストの生誕をテーマにした本作は、シュツルェがシンセに初めて触れてから
たった3週間後に作られたという作品ながら、すでに後のアルバムと同等の完成度を誇る。
どこまでも暗く、一条の光すらも見えない世界ながら、奥深い空間性を感じさせるサウンドには
シンセ楽器に無限の可能性を求めた、シュルツの内的志向の冒険心を感じとれる。
暗黒度・・9 ロック度・・0 幻想度・・10 総合・・9 Amazon.co.jp で詳細を見る

Klaus Schulze「Timewind」
クラウス・シュルツェの5th。1975年作
シュルツェの代表作として知られ、ワーグナーの死をテーマにした幻想的な傑作。
美しくも静謐感を漂わせたシンセミュージックで、その荒涼とした薄暗さは
1st「Irrlicht」にも通じる世界観があるが、シンセやシーケンサーの使用については
より計算された質の高さがあって、ぼやけた楽曲の中にも構築性のようなものが感じられる。
全2曲という構成も、深い闇の世界にいざなわれるような、壮大さを味わうにうってつけだ。
リマスター再発盤のボーナスディスクには本作の曲と同時期に収録された別テイク等を収録。
暗黒度・・8 ロック度・・2 幻想度・・9 総合・・8.5 Amazon.co.jp で詳細を見る

TANGERINE DREAMZeit
タンジェリン・ドリームの3rd。1972年作
POPOL VUHのフローリアン・フリッケが参加していることで
より幽玄な雰囲気となった初期の傑作。LP当時は2枚組だった大作で、
シンセの重ねによる表現力と音の強度がぐんと増して、
前作に比べて聴き手を包み込むような重厚さがある。
暗く沈み込むような音ながら、宇宙空間に放り出されるような感覚で、
怖いながらもじわじわと引き込まれる魅力がある。
シンセ度・・9 ロック度・・1 暗黒度・・9 総合・・8.5 Amazon.co.jp で詳細を見る

TANGERINE DREAMphaedra
タンジェリン・ドリームの5th。1974年作
個人的には3rdZeitの茫漠とした暗闇の世界が好きなのだが、
最高作をひとつだけ挙げるとするなら、本作ということになるだろう。
ムーグシンセの導入により、表現的にもサウンドに奥行きが増し、
リハーサルテープの編集で作られたという本作の楽曲には
音楽としての起承転結の流れのようなものが感じられる。
シーケンサー的なリズムを聴かせるシンセ音はKlaus Schulzeにも近い質感で、
それまでのイメージを音に投影するような作風から、よりデジタリィなシンセサウンドへと
変化が見られるが、それでいて奥深い幻想空間をちゃんと残しているのが素晴らしい。
シンセ度・・9 ロック度・・5 幻想度・・9 総合・・8.5 Amazon.co.jp で詳細を見る

KRAFTWERK「AUTOBAHN」
ジャーマンエレクトロバンドの代表、クラフトワークの4th。1974年作
クラシックを学ぶ二人の学生がエレクトロニクスを駆使した実験的な音楽を目指し結成された。
しかし初期作においては彼らの志向にまだテクノロジーが追いついておらず、
そのビジョンを明確に描き出すことに成功した最初のアルバムが本作だろう。
ジャケのイメージ通り、シンセ音を中心に高速道路の風景を音楽として描き出したサウンドは
後のテクノへとつながるデジタリィな感覚とともに、ギターやフルートの音色も使われており、
ほのぼのとした温かみをまだ残している。この後しだいにデジタルな無機質さを表面化させ
コンピューターロックというべきサウンドを作り上げてゆく彼らの、ひとつの分岐点というべき傑作だ。
エレクトロ度・・7 ほのぼの度・8 幻想度・・8 総合・・8 Amazon.co.jp で詳細を見る

KRAFTWERK「RADIO-ACTIVITY」
クラフトワークの5th。1976年作。邦題は「放射能」
ラジオをテーマに飛び交う電波をイメージして作られたアルバム。
前作よりもシンセの音色に深みが増し、スケール感が高まった。
モーリス信号などを織り込みながら、薄暗くも美しいシンセの響きと
物憂げなヴォーカルが重なり、不思議と叙情的なサウンドを描き出している。
次作「ヨーロッパ特急」からはよりポップなエレクトロ色を増してゆくので、
個人的には、前作「アウトバーン」と本作こそがバンドの代表作だと思う。
シンセ度・・8 薄暗度・8 幻想度・・8 総合・・8 Amazon.co.jp で詳細を見る
 
NEU!
ノイの1st。1972年作
ジャーマンロックは難解で…というリスナーにも気軽に楽しめる1枚。
KRAFTWERKに参加していた、ミヒャエル・ローターとクラウス・ディンガーにより結成。
ハンマービートと呼ばれるリズムからもテクノ方面の元祖として扱われるようだが、
テクノ=ピコピコという感じはまったくしない。むしろ人の手による暖かさも感じる。
反復するリズムの上に、ギターやシーケンサーなどによるフレーズの断片が乗り
テープのコラージュなどによるエフェクト処理などはFaustも使っていた手法だが、
この作品の場合は暗さや芸術性というよりは、むしろ遊び心と「こんなんやっちゃえ」的な
ノリがあるように思う。アヴァンギャルドな味わいもどこかとぼけた感じで楽しめる。
エレクトロ度・・7 アヴァンギャル度・・7 軽やか度・・8 総合・・8Amazon.co.jp で詳細を見る

HARMONIA
ジャーマンロックバンド、ハルモニアの1974年作
Clusterのディーター・メビウス、ハンス・ヨアヒム・レデリウス、NEU!のミャエル・ローターによって結成されたバンドで、
エレクトロなアプローチとノリのあるポップ性を融合した、まさにノイとクラスターを合体させたサウンドを聴かせる。
シーケンサーを使用せず人力の演奏によるリフレインは、機械的でありながらもどこか有機的な即興性も感じさせ、
クラスター寄りのシンセ中心のナンバーから、東洋的な旋律を乗せた、2ndにつながるようなサイケナンバー、
ノイに通じる明るめでポップなナンバーや、BRIAN ENO的なアンビエントまで、それぞれに違った楽曲が味わえる。
トリップ感のある新しいエレクト・サイケという、ジャーマンロックの可能性を押し広げたアルバムだ。
サイケ度・・8 ロック度・・5 エレクトロ度・・8 総合・・8 Amazonで購入する

Cluster 「Sowiesoso」
クラスターの1976年作
初期のクラスターといえば「II」に代表されるように、無機質なシンセサウンドを標榜していたが、
本作では、人間味のあるジャケのイメージのように、メロディを感じさせるシンセの重ねが、
やわらかな耳心地で広がってゆく。シーケンサーによるリズムとサウンドスケープ的なギターも入って、
アンビエント音楽としても鑑賞でき、ジャーマンロックのコアなリスナー以外でも楽しめるだろう。
自然派であるレデリウスの色が強い作品という点では、のちのイーノとのコラボ作にも通じてゆく味わいである。
アンビエント度・・8 ロック度・・2 やわらか度・・8 総合・・8 Amazonで購入する

LA DUSSELDORF「Viva」
ジャーマンロックバンド、ラ・デュッセルドルフの1978年作
NEU!にも参加していたクラウス・ディンガーが、同じくノイのメンバーでもあった弟のトーマス・ディンガーと、
ドラムのハンス・センペを率いて結成したのがこのバンド。本作は最高作とされる2作目で、
ドイツ語の歌声に、シンセとギターが重なり、ノリのよいドラムとともに、キャッチーなポップ性に包まれた
楽しげなサウンドを聴かせる。叙情的なギターフレーズとエレピなどのやわらかなシンセワークも耳心地よく、
難解とされるジャーマンロックの中でも、最もメロディックな部類で、一般のリスナーにも薦められる作品と言ってもよいだろう。
後半は20分に及ぶ大曲で、美しいシンセの重ねにエフェクトのかかった歌声を乗せ、祝祭的な華やかさに包まれる。
メロディック度・・8 ロック度・・8 楽しげ度・・9 総合・・8 Amazonで購入する

Grobschnitt
グロープシュニットの1st。1972年作
邦題は「冥府宮からの脱出」。13分、17分という2曲の大曲を軸にした本作は、
AMON DUULUなどにも通じるような壮大なビジョンと、展開に富んだ楽曲で、
過剰なまでにドラマティックであります。手数の多いドラムは無駄にカッコよく、
泣きのギターやオルガン、シンセによる叙情美もあって飽きさせません。
ツインギターも含めて音は厚く、演奏力も抜群。シアトリカルなヴォーカルも
やや暑苦しいながらもじつに濃密ですな。ボーナスには29分の大曲をライブ音源で収録。
シンフォニック度・・8 壮大度・・9 ドラマティック度・・9 総合・・8.5 Amazon.co.jp で詳細を見る

Grobschnitt「Ballermann」
グローブシュニットの2nd。1974年作
シアトリカルな語りで幕を開ける本作は、大道芸人的なコンセプトを感じさせる力作。
クセのあるヴォーカルがやや耳障りだが、演奏的には哀愁の叙情も入った泣きのギターに、
ハモンド、ムーグなどが加わって、後のシンフォニック路線へとつながるメロディアスな印象だ。
たとえば、フランスのANGEをハードにしたような作風であるが、濃密さではこちらが上。
とくに33分にもおよぶ“Solar-Music”組曲はドラマティックに聴かせる圧巻の大曲で、
ドイツらしいロマンティシズムを感じさせる叙情性が見事。1stと並んでバンドの代表作。
メロディアス度・・7 シアトリカル度・・8 ドラマティック度・・8 総合・・8 Amazon.co.jp で詳細を見る


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