ゲルマンフォークメタル/ペイガンメタル




かつてはヴァイキングメタルといえば、ノルウェー、スウェーデンなど、北欧のバンドが中心であったのだが、
ここ近年、ドイツにおいても、フォークメタル、ペイガン、ヴァイキング系のバンドが増えてきている。
また、In ExtremoSUBWAY TO SALLYなどをはじめ、ドイツ語による歌声と中世を思わせる古楽を取り入れた、
ゲルマン独特の世界観を表現するようなバンドも、にわかにその数を増やしてきているように思う。
いかにもドイツ系らしくクオリティの高い、フォークメタル、ヴァイキングメタルのバンドたちをここに紹介したい。


                                       緑川 とうせい


◆ペイガン・ヴァイキングメタル系

Menhir 「Die Ewigen Steine」
ドイツのペイガン・ヴァイキングメタル、メンヒアーの1st。1996年作
年代的に考えれば、ゲルマンペイガンメタルの元祖のひとつとも言えるだろう。
女性シンセ奏者を含む4人編成で、うっすらとしたシンセとクサメロのギターフレーズ、
そしてドイツ語の歌声を乗せて疾走する、軽めのシンフォニック・ヴァイキングメタルサウンド。
ダミ声とノーマル声の両方を使ったり、エピックな勇壮さとともに楽曲には緩急のついた展開もある。
フックのあるメロディラインなどは、いかにもジャーマン的で、ローカルなチープさもあるのだが、
後のBLACK MESSIAHにも通じるような雰囲気だ。クサメロ好きならば外せないバンドだろう。
クサメロ度・・8 エピック度・・8 ゲルマン度・・8 総合・・7.5
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Menhir「Thuringia
ドイツのペイガン・ヴァイキングメタル、メンヒアーの3rd。1999年作
クサメロたっぷりのギターフレーズで聴かせるシンフォニック・ヴァイキングメタルサウンドは、
1stの頃よりも音の説得力が増していて、ドラマティックな重厚さが備わってきた。
ダミ声ヴォーカルと朗々としたドイツ語のノーマルヴォーカルの掛け合いや
リズムチェンジによる楽曲アレンジなどもなかなかツボをついている。
美しいシンセに加え、随所にアコースティカルな牧歌性も取り入れていて
メリハリのある音作りでエピックな幻想美を描き出す。ゲルマン系ペイガンの傑作。
クサメロ度・・8 エピック度・・8 ゲルマン度・・8 総合・・8
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EQUILIBRIUMSagas
ドイツのシンフォニック・ヴァイキングメタル、エクリブリウムの2nd。2008作
前作も質の高いアルバムだったが、今作ものっけから、ドシンフォニックなイントロに胸踊る。
フォークメタルとしての本気度が増し、それとともに前作の作り物めいたきらびやかさが
そのまま壮麗なる世界観を構築する強固な音圧へと格上げされた印象。
BAL-SAGOTH級のシンフォニックなクサメロに、ときにRHAPSODY的な勇壮さと、
FINNTROLLにも通じるフォーキーメロディが合わさって、濃厚サウンドでたたみかける。
美麗なシンセにアコーディオンの音色で疾走する様は、暴虐さよりもひたすらメロディックで、
むしろ愉快な雰囲気だ。ラストは16分の大曲で、全79分の濃密絵巻。素晴らしき力作である。
シンフォニック度・・9 疾走度・・8 フォーキー度・・8 総合・・8.5
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Equilibrium「Rekreatur」
ドイツのシンフォニック・ヴァイキングメタルバンド、エクリブリウムの2010年作
過濃密な傑作「Sagas」に続く本作は、シンフォニックなイントロの大仰さからもう、
すでに変わらぬエクリブ節が全開。美麗なシンセ、大仰なオーケストレーションとともに、
新Voのよりグロウルなヴォイスを乗せて、ほとんどメロスピばりにメロディックに疾走。
トラッド的な土着感はいくぶん薄らいではいるが、もともとがよりシンフォニックな方向に
傾倒していた作風であるからとくに問題はなし。普通のメロデス、キラデスファンにも楽しめる出来だ。
ラストの大曲も圧巻。ボーナスDiscのアコースティック曲では、本編以上のトラッド要素を満喫できる。
シンフォニック度・・8 暴虐度・・6 ヴァイキング度・・7 総合・・8
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BLACK MESSIAHOath of a Warrior
ドイツのペイガン・ヴァイキング・ブラックメタルバンド、ブラック・メサイアの2nd。2005作
シンフォニックなシンセと、クサメロフレーズを掻き鳴らすギターで疾走。
メロディにはヴァイキングメタル色があり、田舎臭い悶絶メロディを連発する。
ブラストの疾走パートにはプリミティブなブラックメタルの雰囲気が漂い
音質の悪さも手伝って、どこか古き良き幻想性を内包しているのが耳に心地よい。
ヴァイオリンやマンドリンなどによる、フォーキーな要素も効果的で
ローカルな質感を上手く魅力にしている点も見事。ベルギーのANCIENT RITESよりさらにクサい。
クサメロディアス度・・9 暴虐度・・7 ヴァイキング度・・8 総合・・8
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Black Messiah「First War of the World」
ドイツのペイガン・ヴァイキング・ブラックメタル、ブラック・メサイアの4th。2009作
土着的なメロディで疾走する、クサメタラー対応の悶絶サウンドで人気の高いこのバンド、
本作もフィドルやフルートの音色をまじえつつ、惜しげもないクサ叙情メロディとともに
フォーキーかつシンフォニックに聴かせてくれる。かつてのようなブラックメタル的な激しさは薄れ、
もはやヴァイキングメタルというよりもフォーキー・クサメタルというべきサウンドだ。
あまりのクサさに笑うか、それとも涙するかはアナタ次第。ある意味すごい傑作。
クサメロ度・・9 フォーキー度・・8 暴虐度・・6 総合・・8
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Suidakra「Book of Dowth」
ドイツのヴァイキングメタル、スイダクラの2011年作
前作Crogacht」はエピックな壮大さを漂わせた傑作であったが、今作も期待通りの力作。
いくぶんメロデス的な質感もあるツインギターの重ねとケルティックな叙情メロディを合わせた作風は、
ファンタジックな世界観を含みつつ適度に激しい疾走感とともに、この手のバンドの中ではずいぶん洗練されている印象。
土着的な感触もイモ臭ささがない分、一般のリスナーにも楽しめるくらいの普遍性があり、
やや方向性は異なるがENSIFERUMなどと同様のクオリティを有しているといっていいだろう。
ゲストの女性ヴォーカルやアコースティカルな要素も効果的で、サウンドを叙情的に彩っている。
ドラマティック度・・9 エピック度・・9 ケルティック度・・8 総合・・8.5
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Suidakra「Eternal Defiance」
ドイツのペイガンメタル、スイダクラの2013年作
オーケストラルな壮麗さで始まるイントロから、勇壮な戦いの世界が広がってゆく。
シンフォニックなアレンジを強めた本作は、まるで映画のようなドラマティックな迫力で、
剣を手にした戦士たちを描き出すような世界観が楽しめる。ダミ声ヴォーカルが基本ながら
曲によっては女性ヴォーカルを導入したり、パイプやヴァイオリンなどのフォーキーなアレンジも加わって、
厚みのあるサウンドを展開。勇ましい激しさと叙情のメリハリのついた、濃密な力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 ペイガン度・・8 勇壮度・・9 総合・・8
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Thrudvangar「Durch Blut Und Eis」
ドイツのヴァイキングメタル、サルドヴァンガーの2010年作
シンフォニックで大仰なイントロからしてまるで映画のような壮大さだが、
曲が始まるとブラストビートで激しく疾走、シンセを含んだ重厚なアレンジで、
これまで以上にドラマティックな雰囲気である。このバンドの場合、ギターリフにしっかりとヘヴィさがあるので、
正統派メタルの男臭さを随所に漂わせているがよいのだ。旅の休息を感じさせるような静かなパートや
ミドルテンポでの格好よさにもセンスを感じる。ENSIFERUMやTURISASにも負けないクオリティの傑作である。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 ヴァイキング度・・8 総合・・8.5
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Adorned Brood「Kuningaz」
ドイツのヴァイキングメタル、アドーンド・ブロードの2012年作
デビューは90年代というから、すでにベテランの部類となるバンド。本作は7作目くらいだろうか。
シンセに女性フルート奏者を含む6人編成で、フルートがやわらかに鳴り響く美麗なイントロから始まり、
激しい疾走感とともに勇壮なヴァイキングメタルが繰り広げられる。ヴォーカルはダミ声だが、
勇ましいコーラスにきらびやかなシンセアレンジ、適度にモダンな構築性も含んだ聴き心地で、
やわらかな叙情パートなども折り込みながら、ファンタジックな世界観を描いている。
美しいフルートの音色とともに、シンフォニックかつドラマティックなサウンドが楽しめる力作だ。
ドラマティック度・・8 ヴァイキング度・・8 ファンタジック度・・8 総合・・8
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VARG「Blutaar」
ドイツのヴァイキングメタル、ヴァーグの2010年作
土着的なクサメロをたっぷり含んだギターフレーズで聴かせる、
かつてのMITHOTYNをよりヘヴィにゲルマン風にしたようなサウンド。
正統的なパワーメタル風味もある重厚な作風と、ドイツ語のデスヴォイスで、
ときに激しい疾走も含んで、猛々しい戦士の姿を迫力たっぷりに描き出してゆく。
ENSIFERUMあたりを思わせるフォーキーなメロもなかなかいい感じだ。
ドラマティック度・・8 ヴァイキング度・・8 勇壮度・・9 総合・・7.5
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WOLFCHANTCall of the Black Winds
ドイツのペイガンメタル、ウルフチャントの2011年作
2人の男Voとシンセを含む7人編成で、ツインギターのメロディとスクリームヴォイスに
勇壮なノーマルヴォーカルもまじえて聴かせる、エピックなペイガンメタルサウンド。
フォーキーというほどには土着的ではないが、いくぶんのヴァイキング風味と
曲によってはドイツ語の歌声も含んだ、中世ゲルマン的な味わいが楽しめる。
ときおりシンセによる壮麗なアレンジもあって、ドイツ版TURISASという雰囲気もある。
ドラマティック度・・8 ペイガン度・・7 ゲルマン度・・7 総合・・7.5
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◆中世トラッド/フォークメタル系

IN EXTREMO「VEREHRT UND ANGESPIEN」
ドイツの古楽トラッドメタルバンド、イン・エクストレモの4th。2000年作
のっけから美しいハープの音色、そして無骨な野郎Voの語りで始まり、バックにはうっすらとシンセが美しい。
曲に入るとヴァイキングメタル的な勇壮さが現れ、メタリックなギターとハープ、バグパイプなどとの音色が対照的で、
そのメリハリというか、デジタリィなインダストリアル要素とともに、中世と現代の音の融合というべき質感が面白い。
やはり全体的にはケルテイックな繊細さよりは、ゲルマン的な無骨さが持ち味かと思う。
ボーナスCDにはリミックスバージョンやPCで見られるビデオクリップ等を収録していて
中世風の衣装を着込んでのパフォーマンスや(火を吹いたり…)シアトリカルなステージは面白そう。
メロディアス度・・8 メタル度・・7 トラッ度・・9 総合・・8
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SUBWAY TO SALLY「Kreuzfeuer」
ドイツの古楽メタルバンド、サブウェイ・トゥ・サリーの2009作
中世ゲルマン風の古楽とメタルサウンドをモダンに融合させたベテランバンド。
10作目を数える今作も充実の力作だ。艶やかなヴァイオリンにシンセとギターが絡む
厚みのある演奏の上にドイツ語による歌声が乗ると、これぞゲルマントラッドメタルという
彼ら独自の音になる。前作がややモダンなヘヴィネスを取り入れていたのに対し、
本作では土着的な哀愁やアコースティカルな叙情もしっかり聴かせてくれる。
1994年にデビューしてから15年。彼らのトラッドとメタルの融合は円熟の境地にある。
メロディアス度・・8 トラッ度・・8 ゲルマン度・・9 総合・・8
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SALTATIO MORTISSturm Aufs Paradies
ドイツの古楽フォークメタル、サルタティオ・モーティスの2011年作
SUBWAY TO SALLYと並ぶ、ゲルマン・トラッドメタルを代表するこのバンド、
8作目となる本作も、ドイツ語のヴォーカルとフォーキーなパイプの音色を響かせつつ
適度なヘヴィさを盛り込んで、勇壮かつエピックな世界観を聴かせてくれる。
武骨さの中にある叙情的な気心地がこのバンドの持ち味で、そのバランスの良さが
サウンドの質の高さとなっている。中世を思わせるゲルマン・トラッドメタルの傑作です。
エピック度・・8 メタル度・・7 ゲルマン度・・9 総合・・8
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Schandmaul「Anderswelt」
ドイツのフォークメタルバンド、シャンドマウルのアルバム。2008作
ドイツにはSUBWAY TO SALLYやIN EXTREMO、SALTATIO MORTISなど、
古楽を取り入れたメタルバンドがけっこういるのだが、このバンドもまたそのひとつ。
ヘヴィすぎないギターに、ヴァイオリンや笛の音色が重なり、朗々としたドイツ語の歌声で、
メタリックな激しさのあまりない、マイルドでやわらかなサウンドを聴かせてくれる。
アコースティカルな牧歌性の中に、物語的な幻想美を感じさせる耳心地のよいアルバムだ。
牧歌度・・8 メタル度・・7 ゲルマン度・・8 総合・・8
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NachtgeschreiAm Rande der Welt
ドイツのフォークメタルバンド、ナハトゲシュレイの2009作
アコーディオン、フルート奏者を含む7人組で、重厚でドラマティックなフォークメタルをやっている。
ゆるやかなアコースティックギターのイントロから、メタリックなギターリフにパイプの音色が絡まり、
ドイツ語のヴォーカルが歌を乗せる。雰囲気としてはSUBWAY TO SALLYに近いが、
こちらの方がエピックなメタル質感が強く、好みかもしれない。やわらかなアコーディオンの音色が
ツインギターと自然に融合されていて、厚みのあるサウンドはこの手のバンドの中でも素晴らしい。
メロディアス度・・8 フォーキー度・・8 エピック度・・8 総合・・8
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INGRIMM「Boses Blut」
ドイツのフォークメタル、イングリムの3rd。2010年作
フォーキーなパイプの音色とヘヴィなギターが合わさり、ドイツ語の歌声で聴かせる
パワフルなフォークメタルは、デビュー時よりもぐっとメロディアスに洗練されてきて、
メタル的な激しさと牧歌性のコントラストがよりくっきりとなった。重厚なヘヴィさと、
ゲルマンな民族性が上手く融合され、サウンドの説得力が高まってきている。
ドラマティック度・・8 フォーキー度・・7 ゲルマン度・・8 総合・・8
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◆エピック・フォークメタル系

Falkenbach「Tiurida」
ドイツのフォークメタルバンド、ファルケンバックの2011年作
これまでも幻想的なサウンドで我々を魅了してきたこのバンドの5年ぶりとなる5作目で、
ドイツ語の歌声で聴かせる相変わらず牧歌的なヴァイキング/フォークメタルを聴かせる。
中世を思わせるような世界観と、土臭さのただようやわらかなメロディ、
スリリングさのないゆったりとした楽曲は、のんびりとした聴き心地だ。
気の短いリスナーには合わないが、MOONSORROWなどが好きな方なら気に入るはず。
ドラマティック度・・7 フォーキー度・・8 ヴァイキング度・・8 総合・・8
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Finsterforst「Zum Tode Hin」
ドイツのフォークメタルバンド、フィンスターフォルストの2009作
1stはアコーディオン入りで軽快に疾走する作風だったが、本作はぐっとエピックな質感となり、
全5曲ながら全てが10分以上、ラスト曲にいたっては20分という大作指向の作品だ。
アコーディオンの音色に重なるガナり声ヴォーカルは、FINNTROLL風味なのだが、
ツインギターにシンセが加わると、MOONSORROWあたりを思わせる重厚な質感になる。
アコースティカルなパートやブラックメタルばりの激しい疾走もあり、曲は長いのだがドラマティックで
幻想的な世界観にたっぷり浸ることができる。ゲストによるティンホイッスルの音色もいい感じだ。
メロディアス度・・8 フォーキー度・・8 エピック度・・8 総合・・8
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Finsterforst「Rastlos」
ドイツのフォークメタル、フィンスターフォルストの2012年作
アコーディオン入りのフォークメタルとして過去2作も高品質だったが、3作目めとなる本作は
ずいぶんと壮大なエピックメタル要素が増していて、10分以上の大曲をメインに重厚に聴かせる。
ヘヴィなギターリフにシンフォニックなアレンジが重なり、咆哮する低音デスヴォイスとともに
勇壮なコーラスなども含みながら、MOONSORROWなどを思わせる勇ましさと、
アコーディオンが鳴り響くフォーク要素が融合。ときに激しい疾走パートもあったりと、
長い曲でも確かなアレンジ力で聴き通せる。まさに壮大な力作というべき内容だ。
ドラマティック度・・9 フォーキー度・・8 壮大度・・9 総合・・8.5
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]W Dark CenturiesDen Ahnen Zum Grusse」
ドイツのシンフォニックペイガンメタル、14th ダーク・センチュリーズの2003作
アコギとフルートによるイントロから曲が始まると、土着的なクサメロを奏でるギターとシンフォニックなシンセに
ダミ声ヴォーカルと勇壮なコーラスを乗せて聴かせる。エピックな香りをぷんぷんと匂わせるサウンドは、
この手のペイガンメタル好きにはたまらないだろう。メンバー写真も含めて、中世の世界観を描き出そうとする
意気込みがあり、音質自体はややこみりぎみながら、それもかえって幻想的な雰囲気を強くしている。
まさに14世紀…中世のゲルマン戦士たちが森の中で戦うような、そんな光景が目に浮かぶようだ。
シンフォニック度・・7 クサメロ度・・8 エピック度・・8 総合・・8
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ODROERIR「Gotterlieder II」
ドイツのフォーク・ペイガンメタルバンド、オドロエリルの2010年作
フォーキーなフィドルに笛の音色、そしてドイツ語の歌声で牧歌的に聴かせる
なごみ系フォークメタル。アコースティカルなのんびりとした叙情はまさに森の音楽。
音に派手さはないのだがまったりと楽しめます。ときおり絡む女性ヴォーカルもいい感じ。
ラストは19分の大曲で、本格派のトラッド質感から、メタル色が加わってドラマティックに盛り上げる。
メロディアス度・・7 フォーキー度・・8 森の叙情度・・9 総合・・8
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Gernotshagen「Mare aus waldernen Hallen」
ドイツのペイガン・ブラックメタルバンド、ゲルノットシャゲンの2007年作
シンフォニックなイントロからドイツ語による男臭い歌声で始まり、アコースティカルな土着性もまじえつつ
ブラックメタル的ながなり声ヴォーカルが加わってくる。疾走感もそれなりにあるが激しさよりも
むしろ牧歌的なやわらかさと、シンセによるふんわりとした幻想的なイメージが全体を包んでいる。
ギターもそれなりにメロディを奏でているのだが、それがあまり前に出すぎない。
アトモスフェリック系ペイガン・フォークメタルというべきか。ときおり激しく疾走する。
シンフォニック度・・8 フォーキー度・・7 ふんわり度・・8 総合・・7.5
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◆女性ヴォーカル系

LYRIEL「Autumntales」
ドイツのトラッド・ゴシックメタルバンド、リリエルの2006作
艶やかなヴァイオリンの音色に可憐な女性ヴォーカルのフォークメタル。
演奏はやややぼったく田舎臭いのだが、好きな人にとってはそこもむしろ魅力かもしれない。
ときに男性Voとの絡みや、チェロ兼コーラス担当の女性声も加わって美しく聴かせる。
メタル的な重厚さやドラマティックさはあまりなく、LUMSKあたりが好きな人にもお勧めできる。
録音面での弱さや演奏、曲におけるマイナー臭さはあるが、それを上回る優美なメロディと
美しい女性ヴォーカルが味わえるので、その手が好きな方は充分聴く価値ありだ。
メロディアス度・・8 フォーク/トラッ度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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FAUN「TOTEM」
ドイツのゴシック古楽トラッドバンド、ファウンの4th。2007作
中世を感じさせる古楽に、デジタリィなリズムアレンジを取り入れて再構築、
チャント風の男性コーラスとともに、女性ヴォーカルがしっとりとドイツ語の歌を乗せる。
アコースティックギターにブズーキ、ハーディーガーディ、バグパイプ、ハープといった楽器に
うっすらとしたシンセが合わさると、古楽とモダンの融合されたなんとも不思議な質感になる。
サウンドにはゴシック的な薄暗さがあり、シンフォニックに描かれる世界観とともに、
ダークでアンビエントな女性ヴォーカルものとしても楽しめる。オフィシャルサイトはこちら
中世風古楽度・・8 薄暗度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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◆個性派ゲルマン系

Die Apokalyptischen Reiter「MorAL & WahNSInN」
ドイツのシアトリカル・エピックメタル、ディ・アポカリプティシャン・レイターの2011年作
ジャケからして妖しさプンプンであるが、メロデスばりのツインギターで疾走開始、
…したと思いきや哀愁溢れるアコースティックギターとシンセにドイツ語の歌声が乗り、
すでにのっけからシアトリカルメタルが全開。この異様なクオリティの高さはなんなのだ。
無茶な展開と本気のエピックさに知的なはっちゃけが合わさった、シンフォニック叙情メタル。
中世ゲルマントラッドの世界観とクラシカルな優雅さが、現代的なごった煮センスで絶妙にハマって、
濃密でありながら美しく叙情的という、他に類を見ないサウンドに仕上がっている。
ある意味プログレッシブな深さ…そして、なにも恐れぬセンスに包まれた驚異の傑作!
ドラマティック度・・9 濃密度・・9 ゲルマン度・・8 総合・・8.5
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ENID「Gradwanderer」
ドイツのクラシカル(ゴシック/ブラック)メタルバンド、エニドの2004年作
クラシカルな中世ゲルマン風ゴシックというべき作風で気に入っているバンドのおそらくこれが4作目。
今作も知的でプログレッシブな展開力と朗々としたドイツ語のヴォーカルで聴かせる、
個性的なシンフォニックサウンドは健在。ときおり民族色や優雅なピアノのパートなどを盛り込むなど、
単なるメタルの枠を越えた発想とヨーロピアンな美意識、センスが組み合わさった懐の広さに感動を覚える。
アルバム後半には妖しげなジャズ風味も取り入れていて、ある意味これも大人の変態メタル。
ノルウェーのSolefaldにも通じる芸術性が素晴らしい。クラシカルでシンフォニックな傑作である。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・8 芸術センス度・・9 総合・・8.5
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ARSTIDIR LIFSINS「Jotunheima Dolgferd」
ドイツのフォーク・ブラックメタル、アルスティディア・リフシンスの2010年作
映画的な語りによるイントロから、曲が始まるといかにもペイガン的な世界観で
ブラスト入りで激しい疾走もしつつ、メロディはあくまで勇壮で土着的。
ダミ声ヴォーカルとジェントルな歌をまじえつつ、プログレッシブな感触で展開する様は
ノルウェーのSolefaldあたりを思わせ、 土着性のあるゲルマンな感じはENIDなどにも近いか。
詠唱のようなコーラスなども秘教的で、アコースティカルな要素なども随所に盛り込んで
まるでひとつの物語を描くように聴かせる力作だ。中世の書物のような豪華なブックレットもよいね。
ドラマティック度・・8 ペイガン度・・9 土着度・・8 総合・・8
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EISREGEN「Schlangensonne
ドイツのエピック・ゲルマンメタル、エイスレゲンの2010年作
Die Apokalyptischen ReiterEnidなど、ドイツには個性的なバンドが多いのだが、
このバンドも、ドイツ語の歌声とアヴァンギャルドな構築センスで聴かせる、なかなか面白いサウンド。
ダミ声ヴォーカルとともに疾走するブラックメタル要素に、ときにクラシカルなシンセパートや
朗々としたノーマルヴォーカルなども入って、一筋縄ではゆかない濃密な作風である。
中世的なダークな世界観と荘厳なエピックさは、「ドイツ版Solefald」という感じもある。
ドラマティック度・・7 構築センス・・8 ゲルマン度・・8 総合・・8
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ScarcrossFreidenker
ドイツのプログレッシブ・ペイガンブラック、スカークロスの2011年作
シンセを含む4人組で、ペイガンブラック的な土着性とプログレッシブな大作志向のサウンド。
激しく疾走するだけでなく、メロディックなギターフレーズやアコースティックな叙情も盛り込んだ
静と動の緩急をつけたアレンジで、16分、12分という大曲を構築してゆくセンスはなかなかのもの。
基本はダミ声ヴォーカルながら、ときおりドイツ語による勇壮な歌声も聴かせるなど、
ゲルマンメタルとしての世界観もよい感じだ。総じてドラマティックで好みのサウンドであるが、
現時点ではまだ楽曲と演奏にやや粗さがあるので、今後のさらなる成長に期待したい。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 ゲルマン度・・7 総合・・7.5
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Adversus
「Einer Nacht Gewesenes」
ドイツのアヴァン・ゴシックメタル、アドヴァーサスの2005年作
男女ヴォーカルに、女性ヴァイオリン、女性クラリネット奏者、コントラバス奏者を含む7人編成で、
艶やかなヴァイオリンにクラリネットの優美な音色を含む、オーケストラルなクラシカル性に
ドイツ語によるダミ声男性ヴォーカルに美しい女性ヴォーカルの歌声が絡んで、
オペラティックな優雅さと、ANGIZIAあたりを思わせるアヴァンギャルドなセンスで構築される
なかなか濃密なサウンドだ。インダストリアルなアレンジとクラシカルな壮麗さを合わせ、
いくぶんヘンタイ的に仕上げたという、じつに個性的なサウンドが楽しめる、
Die Apokalyptischen Reiterなどにも通じる、ゲルマンなアヴァンメタル強力作!
ドラマティック度・・8 クラシカル度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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