ジャケ買いしたくなるプログレジャケ



プログレ作品のジャケというのは、とりわけLP時代にはそれは大切なものであった。
ジャケのデザインこそが、作品のイメージそのものを決定づける役割を果たしていたといっていい。
なので、70年代の作品はどれもがじつに個性的で、美しくもインパクトのあるジャケを競っていた。
それらは実際の音とともに鑑賞するに足る、まさにアートであったのだ。
ここでは、それら気に入りのプログレのジャケを70年代の作品を中心に紹介する。
目に留まったものがあれば、ぜひ実際にその音も聴いてみて欲しい。
イメージを喚起させるアートの向こうにある、幻想とロマンの香りを見つけたら…



◆70's英国のジャケ

YES「RELAYER」
イエスの7thアルバム。1974作
個人的なYES評価を述べさせていただくと、Yesの私的アルバムランキングでは、
1「イエスソングス」、2「危機」、3「サードアルバム」となり、それに続くのこの「リレイヤー」。
リック・ウェイクマン好きな私としては、リック脱退後のこのアルバムを手にとるきっかけは
この美しいジャケット(ロジャー・ディーン)のおかげに他ならなかった(YESのジャケで一番好き)。
あらためて聴くと、パトリック・モラーツのキーボードはリックのクラシカルな感じとはまた異なり、
いかにも70'sプログレ然としていて悪くない。リックが嫌いだったメロトロンもかなり使っている。
緊張感に溢れた楽曲には「危機」ばりの構築性も感じさせる。とくに1曲目“錯乱の扉”は素晴らしい。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 演奏・・9 総合・・幻想度・・8.5
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KING CRIMSON「In the Wake of Poseidon」
キング クリムゾンの2nd。1970作。
1st「宮殿」の衝撃に比べると、本作「ポセイドンの目覚め」はあまりにも地味に聴こえて、
やはり基本的には成功を収めた1stの延長上のイメージで無難に作られているという印象である。
脱退したイアン・マクドナルドに代わって加入した、キース・ティペット(piano)、メル・コリンズ(sax)の色もあり
前作の雄大な雰囲気よりはむしろジャジーなアプローチが増して、このジャケのような幻想美はあまりない。
歌もの曲ではグレッグ・レイクの歌唱が時代的な懐かしさを感じさせ、4曲目のタイトル曲なども美しいのだが
やはり1stの“Epitaph”ほどには胸に響かない。あの奇跡の1枚に手が届きそうで届いていないアルバム。
ジャケの美しさではクリムゾンの作品中、1、2を争うのだが。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 ジャズロック度・・8 幻想度・・8
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Genesis「Nursery Cryme
ジェネシスの3rd。1971作
そして、彼らの幻想音楽は頂点に達した。新たにステファン・ハケットを迎え、
黄金の体制となったバンドは、物語性をともなった強固な世界観を構築、
名曲中の名曲“The Musical Box”の妖しいげな空気は、最高の音質とともに耳に迫ってくる。
リマスターにより迫力を増したドラムとともにハケットのギターの音色も際立っていて、
後半からラストへの流れは泣きの叙情が押し寄せるじつに感動的なもの。
全体的な完成度からすれば、「Foxtrot」、「Selling England〜」の方が上かもしれないが、
このジャケも含めて幻想的な物語世界はGENESISの作品中でも最高のものだろう。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 幻想度・・10 幻想度・・8.5
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THE MOODY BLUES「every good boy deserves favour」
ムーディ・ブルースの6th。1971作。「童夢」の邦題で知られるアルバム。
幻想的なジャケのおかげもあってか、日本でも人気が高い作品である。
実は昔聴いたときはあまりにも自分の想像していたプログレの音とは違っていたので
売ってしまったのだが、こうして改めてリマスター盤を聴いてみるとけっこういい作品ですな。
なにやら意味ありげなイントロから、曲が始まると軽やかなロック調…きっと昔はこれがダメだったのだな。
ブルージーなロック風ギターがやや無骨な感じもするが、歌メロはキャッチーだし、メロトロンは美しい。
ただ初期にあった薄暗さが消えてきているので、それが好きな方にはさほど傑作とも思えないかもしれない。
完成度としてはメロディアスさに勝る次作「Seventh Sojourn」の方をお勧めする。
メロディアス度・・8 プログレ度・・6 ブリテイッシュ度・・9 幻想度・・8
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Renaissance「Novella」
イギリスのクラシカルロックバンド、ルネッサンスのアルバム。1977作
最初に聴いたRenaissanceのアルバムがこれだった。今では「シェラザード〜」と「燃ゆる灰」が一番のお気に入りだが、
幻想的なジャケや「お伽話」というタイトルを含めて、本作は最初に聴くときにはとてもワクワクしたものだ。
壮麗なオーケストラから幕をあけ、アニー・ハズラムの絶品の歌声が響きわたる“Can Tou Hear Me?”、
クラシカルな“Midas Man”にうっとりし、ラストを締めくくる壮麗な“Tuching Once”まで、優しいお伽話に浸れる。
初期のようなフォークっぽさが薄れ、スタイリッシュな作風になった点で、一般のリスナーにも人気の高い一枚だ。
なお、イギリス盤とアメリカ盤ではジャケが異なるが、個人的にはこちらのイギリス盤の絵が好み。
クラシカル度・・8 美麗度・・8 女性Vo度・・8 幻想度・・8
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ANTHONY PHILLIPS「THE GEESE & THE GHOST」
GENESISアンソニー・フィリップスの1st。1977作
この童話的な美しいジャケットのイメージ通りの、じつにたおやかなアルバムだ。
この作品を端的に表現するなら、繊細、幻想的、英国貴族的優雅さ、ということになるだろう。
自身のつまびくやわらかなアコースティックギターの音色、ピアノ、シンセなどに加え
フルート、チェロ、オーポエ等をゲストに迎え、英国中世風のクラシカルなイメージを
うっとりするくらいの繊細なサウンドで表現している。マイク・ラザフォードやフィル・コリンズが
参加していることもあり、曲によっては初期GENESISの幻想美をそのまま抽出したようなイメージ。
流行やコマーシャリズムとは無縁の、ゆるやかな時間に生きる繊細な感性の結晶がここにある。
アコースティカル度・・9 英国貴族度・・10 しっとり繊細度・・10 幻想度・・8.5
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FRUUPP 「The Prince of Heaven's eyes」
アイルランド出身のプログレバンド、フループの3rd。1974作
邦題は「太陽の王子〜虹の果ての黄金伝説」。太陽を「Heaven's eye」と表したセンスもなんとなくグッとくるが、
当時の日本盤は今はなきテイチクから出ており、このジャケに惹かれて本作を手にとったのが出会い。
ややチープな絵だが、いかにも少年の冒険を思わせるファンタジックな雰囲気と、帯に書かれた邦題が私の心をときめかせたのだ。
サウンドは、美しいストリングスシンセに導かれて、ジャケ通りの牧歌的な雰囲気のシンフォニックロックがゆるやかに展開されてゆく。
一聴した感じは地味ながらも、何度聴いても音の心地よさと涼やかな雰囲気から聴き疲れがまったくしないのが良い。
そうして聴き込んでいくうちに、脳裏にはジャケの少年が繰り広げる冒険の物語が浮かんでくるのである。
淡い色をした幻想の物語にゆったりと浸れる、じつに素敵なアルバムである。
メロディアス度・・8 ほのぼの度・・9 ファンタジック度・・9 幻想度・・8.5
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Baclay James Harvest「Octoberon」
英国の叙情派バンド、バークレイ・ジェームズ・ハーヴェストの7th。1976作
この時期のBJHの作品はどれもが好きなのだが、とくに本作「妖精王オクトベロン」
ジャケの美しさからもお気に入りだ。ゆったりとした牧歌的な楽曲に、雄大なオーケストラ、
やわらかなヴォーカルと英国的なオルガン、ときに厳かな混声合唱も加わって
シンフォニックロック的な美しさもある。ジャケを眺めながらうっとりと鑑賞したい作品だ。
メロディアス度・・8 ゆったり素朴度・・8 英国度・・9幻想度・・8
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TOM NEWMANFaerie Symphony
イギリスのミュージシャン、トム・ニューマンの1977年作
MIKE OLDFIELDの名作「Tubular Bells」のエンジニアとしても知られ、ソロとしてはこれが2作目。
ジャケの美しさもさることながら、サウンドの方も素朴な情緒に彩られた繊細なもの。
牧歌的なマンドリンにフルートの美しい調べ、しっとりと優しいアコースティックサウンドは、
Anthony Phillipsを思わせるような、中世の世界観を幻想的に甦らせる。
ケルティックなトラッド要素はやはりMIKE OLDFIELDにも通じる作風だ。
アコースティカル度・・8 幻想度・・8 繊細度・・9 総合・・8
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MARSUPILAMI「Arena」
ブリティッシュロックバンド、マルスピラミの2nd。1971作
本作は古代ローマを舞台にした壮大なコンセプト作で、まだ粗削りだった1stに比べ
サウンドの輪郭がはっきりしてきており、楽曲におけるメリハリのつけ方もドラマティックになった。
ヴォーカルときに物語を語るように静かで、かと思うと戦闘をする戦士のように激しくもなる。
たたみかけるドラムに、ハモンド、それにメロトロンやフルートを聴かせる叙情パートもあり、
息つかせる暇もなく楽曲は展開してゆく。ジャズロック的な軽やかさと、ハードな質感が同居し、
シンフォニックな要素がなくとも、不思議と音には広がりと壮大さを感じるのが凄い。
ある意味これも英国からしか出て来ない音。普通のプログレで飽き足らない方にお勧め。
ドラマティック度・・9 プログレ度・・8 英国度・・9 幻想度・・8
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THE ENID「AERIE FAERIE NONSENSE」
英国のシンフォニックロックバンド、エニドの2nd。1984作
優雅でクラシカルであり、そしてオーケストラのごとき雄大さをもった楽曲は
初めてこのバンドの音を聴く方にはかなりの衝撃となるだろう。
簡単に言えば、バンド編成でオーケストラのシンフォニーを再現したといっていい。
この2ndは彼らのディスコグラフィー中でも最もそれが顕著に出ている作品で、
とくに30分近くにも及ぶ長大な組曲“FAND”での高揚感はただごとではない。
エニドをまだ知らないシンフォニックファンは急いで手に入れてほしい。
シンフォニック度・・10 クラシカル度・・9 雄大かつ優雅度・・10 幻想度・・9
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STILL LIFE

英国ハモンドロックの名盤とされる、スティル・ライフのアルバム。1971作。
怪盤の宝庫として知られる英ヴァーティゴレーベルの作品で、
その内容はこれ全篇ハモンド鳴りっぱなし。曲自体は特異な展開もないオーソドックスで
なかなか渋い感じのブリティッシュロックなのだが、聴き所はやはりハモンドオルガン!
懐かしくやわらかなこの音色はじつに耳に心地よく、何か古きよき郷愁を誘うのである。
また、エモーショナルなヴォーカルのせいもあって、音にはマイナー臭さがさほどない。
そしてこの美しいジャケだが、広げると花びらの下に現れる骸骨というセンスもお見事。
メロディアス度・・7 英国度・・9 ハモン度・・9 幻想度・・8
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AFFINITY「Affinity」
ブリティッシュロックの名作、アフィニティーのアルバム。1970作
キーフによるこのジャケが有名だが、音の方はリンダ・ホイルのヴォーカルを中心に、
やや無骨なギターに、ハモンドオルガン、サックスなどによるサイケ調なロック。
さすがに今聴くと曲そのものに時代的な古さを感じざるをえないが
女性Voのブルージーなオルガンロックとして普通に聴け、当時の英国ロックの熱が感じ取れる。
メロディアス度・・7 プログレ度・・6 英国度・・8 幻想度・・7.5
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Beggar's Opera「Act One」
ブリティッシュロックバンド、ベガーズ・オペラの1st。1970作
宇宙飛行士ジャケで有名な3rdはヴァーティゴの裏名盤として一般的にも
代表作とされるようだが、クラシカルでごった煮的な面白さからいえば本作だろう。
キーフの手によるこの怪しげなジャケからしてすでにキワモノだが、
サウンドの方はクラシックのメロディを取り入れたオルガン入りロックで、
NICE
TRACEなどに通じる印象がある。ヴォーカルの微妙な力の抜け具合が
コミカルな雰囲気をかもしだしているが、トルコ行進曲のメロディに乗せた11分の大曲では
ハモンドにサイケ的なギターが重なり、濃密かつマニアックなブリティッシュロックが楽しめる。
クラシカル度・・8 ハモン度・・8 濃密度・・9 幻想度・・8
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TREES「On the Shore」
イギリスのフォークロックバンド、トゥリーズの2nd。1970作
ヒプノシスによるこの水撒き少女のジャケで有名なアルバムであるが、
サウンドの方はは美しい女性ヴォーカルの歌声で聴かせるフォークロックで、
アコースティックを主体にしつつもエレキギターやドラムも入ってきて、
Renaissanceあたりを好むプログレファンなどにも聴きやすい作品だろう。
牧歌的でたゆたうような曲調の中に、翳りのあるミステリアスな質感が同居しているのも魅力。
1stジェーン・ドゥロウニーの庭も同様に質の高い作品だが、ジャケのインパクトではやはり本作か。
フォークロック度・・8 英国度・・9 女性Vo度・・8 幻想度・・8
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◆ドイツのロマンジャケ

NOVALIS「SOMMERABENT」
ドイツのロマン派シンフォニックロックバンド、ノヴァリスの3rd。1976作
ANYONE'S DAUGHTER以前のドイツのシンフォニックシーンでの代表格であるこのバンド、
その最高傑作とされているのが本作、かつての邦題は「過ぎ去りし夏の幻影」
音の方もジャケット同様に、いかにもドイツらしいロマンティックなメロディを盛り込んだ
哀愁漂うシンフォニックロックで、9分、10分、18分の全3曲という構成もいかにも大作的。
メロウなギターに、うっすらとしたシンセワーク。技巧的な部分は少ないが、
秋から冬にかけてゆったりと楽しみたいような、そんな雰囲気の楽曲が詰まっている。
メロディアス度・・7 シンフォニック度・・7 ロマン度・・9 幻想度・・8
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ANYONE'S DAUGHTERPiktors Verwandlungen
ドイツのシンフォニックロックバンド、エニワンズ・ドウターのアルバム。1981作
「ピクトルの変身」のタイトルで知られる、ヘルマン・ヘッセの詩をモチーフにした作品で
ライブ録音ながらも、その抜群の演奏と叙情美で、本作はバンドの最高傑作ともされている。
イントロからもう、泣きのギターとシンセが合わさった、まさにドイツのロマンが集約されたような
シンフォニックサウンドが炸裂。曲間にドイツ語によるヘッセの詩の朗読を挟みつつ
その見事なメロディセンスと演奏力で、何度も盛り上がりを迎えながら組曲は進行してゆく。
ドラマーをはじめ、ギターもシンセも、ライブ録音とは思えない巧みな演奏がまったく素晴らしく、
美しいジャケも含めて、ドイツのみならず欧州シンフォニックの語り継ぐべき名盤である。必聴。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・9 ロマン度・・10 幻想度・・8.5
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Grobschnitt「Rockpommel's Land」
ドイツのプログレバンド、グローブシュニットの4th。1977作
なんとなくロジャー・ディーン風のファンタジックなジャケからそそるものがあるが
内容的にも彼らの作品中もっともシンフォニックロック的な作風となっている。
Yesを思わせる繊細なギターワークと美しいシンセが絡み、やわらかに歌が乗る。
そこにやはりドイツ特有の土臭さも含んで、ファンタジックなストーリーが広がってゆく感じは
このバンドならではの濃密な雰囲気だ。全4曲でラストは20分近い大曲。
2007年リマスター盤にはラストの大曲のライブ音源をボーナス収録。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 ファンタジック度・・8 幻想度・・8
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HOELDERLIN「Rare Birds」
ドイツのプログレバンド、ヘルダーリンの4th。1977作
この美しいジャケが印象的だが、サウンドの方はポップな質感が増していて、
やわらかみのある牧歌的なメロディアスロックという雰囲気だ。
曲は6〜8分と、このタイプのサウンドにしてはコンパクトさに欠け、やや間延びした印象。
ポップだが売れセンを狙いきれていない…というもどかしさを感じる。かと思うと、
後半にはプログレっぽい曲もあって、バンドの方向性を模索しているような感じのアルバムだ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 やわらか度・・8 幻想度・・7.5
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ELOY「COLOURS」
ドイツのプログレバンド、エロイのアルバム。1980作
1971年のデビューから現在までに20作ほどもアルバムを出しており、これはおそらく8作目。
このバンドはジャケが魅力的なものが多く、つい手を出してしまうが中身は案外地味なのです(笑)
そんな中、このアルバムは彼らがシンセを多様し始めた時期の作品で、
厚みのあるシンフォニックなキーボードによるモダンなアレンジが見事な一作。
Voも含めて後期のANYONE'S DAUGHTERをさらに今風にしたような質感もあるが、
ドイツ特有の湿りけのある雰囲気もしっかりと感じられて、なかなかよろしい。
プログレとしてよりは、むしろキーボードを多用したハードロックとして聴いても楽しめるかもしれない。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 モダン度・・8 幻想度・・7.5
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AMON DUULU「Tanz der Lemminge」
アモンデュール2の3rd、1971作/邦題は「野ネズミの踊り」または「ロック共同体」
LPでは2枚組だった本作は、15分、19分、18分という大曲で聴かせる力作だ。
うっすらとしたシンセに包まれて、ヴァイオリンが鳴り渡り、楽曲は荘厳に始まる。
ゆるやかなアコースティックギターをシンフォニックですらあるキーボードが包み、
ときに薄暗い静謐感をもって、ときに東洋的な雰囲気でもって長曲が綴られてゆく。
サイケロック的な浮遊感と、なにか壮大なヴィジョンが目の前に現れるような感覚、
インプロ的な解放感と楽曲性とが見事なパランスで調和して、すべての音に緊張感をもたらしている。
おそらくドイツという国からしか出て来ないだろう、シンフォニック・サイケロックの傑作である。
シンフォニック度・・8 壮大度・・10 構築度・・8 幻想度・・8.5
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POPOL VUH「HOSIANNA MANTRA」
ジャーマンプログレの名バンド、ポポル・ヴーの3rd。1972作
プログレファンであれば一度は目にしたことはあろう名作「ホシアンナ・マントラ」
この静謐な美をたたえたジャケを手に、改めて聴き直してみると、そのなんと美しいこと。
前作まではムーグシンセをメインにしたいわゆるエレクトロ系のサウンドだったが、
今作からはしっとりとしたピアノを中心に聴かせる、自然体の音へと変化している。
ゆるやかなピアノに神秘的な女性Voが絡み、そこに巧みにギターの音色を配した楽曲は
宗教的な荘厳さを秘めながらも、とても耳馴染みがよく、まどろむようにして聴ける。
ジャーマンロックのバンドたちの中でもひときわ異彩で、はかないほど繊細で美しい音だ。
ロック度・・2 崇高度・・9 神秘度・・8 幻想度・・8.5
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◆イタリアの幻想ジャケ

OPUS AVANTRA
 「Introspezione」
イタリアンロックの輝ける芸術、オパス・アヴァントラの1st。1974作
アヴァンギャルドな感性と気高さ、繊細かつ張りつめたような美意識、
ピアノの一音さえもが空気を描きだすような意志をもっている。
そして、歌姫ドネラ・デル・モナコの崇高な歌声が胸を打つ。
クラシックを基盤にしつつ、ここまで革新的な音楽をいったい誰が創造できるだろう。
この時代、この国からでしか決して生まれえなかった音楽である。
プログレッシブロックを芸術とするのなら、本作こそまさにそれを体現した作品だ。
続く2nd「Lord Cromwell」とともに、イタリアの奇跡ともいうべき名作である。
クラシカル度・・9 アヴァンギャル度・・9 芸術度・・10 幻想度・・8.5
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LE ORME「FELONA E SORONA」
イタリアのプログレバンド、レ・オルメの5th。1973作
オルメの最高傑作とされているアルバム。結成は古く1976年。初期は普通のロックバンドだったらしいが、
3rdあたりからクラシカルな要素を取り入れ、やがてイタリアを代表する叙情派キーボードプログレバンドとなる。
PFMBANCOなどに比べて、やや輪郭のぼやけたサウンドはテクニカルというよりも
ジャケ同様の幻想的なイメージで、スペイシーなシンセがゆったりとした曲調の中メロディをつむぎ、
そこにやわらかなヴォーカルメロディが乗るというスタイルで、ゆったりしっとりと聴ける。
祭日的な熱情の一方で、こうしたくぐもった薄暗さもイタリアのもう一つの顔である。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 ゆったり繊細度・・8 幻想度・・8
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GoblinIl Fantastico Viaggio del Bagarozzo Mark
イタリアンロックバンド、ゴブリンのアルバム。1978作
「マークの幻想の旅」というタイトルで知られる本作は、
ゴブリンの作品中でも、最もシンフォニックで一番好きなアルバムだ。
美しい色彩のジャケのイメージ通り、幻想的なコンセプト作となっていて、
ムーグシンセの音色にメロディアスなギターが重なり、物語を歌いあげるかのようなヴォーカルとともに、
叙情たっぷりに聴かせる。「サスペリア」や「ゾンビ」といったサントラ作品が有名なこのバンドだが、
そうしたインスト曲を作る方法論も本作中に活かされており、
ヴォーカル曲の合間に小曲をはさむことで、物語的な世界観を演出している。
メロディアス度・・8 幻想度・・9 イタリア度・・9 幻想度・・8
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MUSEO ROSENBACH「ZARATHUSTRA」
イタリアのヘヴィ・シンフォニックロックバンド、ムゼオ・ローゼンバッハのアルバム。1973作
70年代に彼らが残したこの唯一のアルバムは、イタリアンヘヴィプログレの名盤として語られている。
ニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」をテーマにした、哲学的かつ壮大な内容で、
メロトロンとギターによる重厚なサウンドは、プログレ好きのメタラーにも聴きやすいだろう。
組曲の完成度はもちろん、音に内包されたミステリアスな雰囲気が素晴らしい。
リマスター日本盤も出るようなので、プログレを聴く人間であれば、
せめてPFMの「友よ」とこの作品くらいはチェックすべきだろう。
シンフォニック度・・8 重厚度・・8 完成度・・9 幻想度・・8
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JACULA「Tardo Pede in Magiam Versus
イタリアの暗黒プログレバンド、ヤクラのアルバム。1973作
荘厳なチャーチオルガンの音色から始まり、典雅なチェンバロの響きに
艶めいた女性ヴォーカルの歌声が乗る。ロック色はほぼ皆無で
全編にわたって秘教的な妖しさを漂わせた異色のサウンド。
呪文を唱えるかのような女性のスキャットに身震いするか、あるいは笑うかで
この闇の幻想音楽を楽しめるかどうかが決まるだろう。フルートの音色に乗る
女性声の美しさはOPUS AVANTRAに匹敵する。まさにイタリアンロック異端の一作。
荘厳度・・8 ロック度・・1 妖しさ度・・10 幻想度・・8.5
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ERIS PLUVIA「Rings of Earthly Lights」
イタリアのシンフォニックロックバンド、エリス・プルーヴァのアルバム。1991作
指輪物語をコンセプトにした繊細な作品で、美しいフルートの音色にサックスが合わさり
メロウなギターに、しっとりとしたピアノ、シンセなどでゆったりと聴かせるサウンドは、まさに夢見心地。
美しいジャケのセンスも素晴らしいが、優しい音作りでこれだけ世界観を表現できるというのもまた素晴らしい。
GANDALFなどを思わせる自然派のヒーリング感覚と、アコースティカルな美意識にもうっとりだ。
やわらかシンフォ度・・9 繊細度・・9 イタリア度・・7 幻想度・・8
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MONTEFELTORO「Il Tempo Di Far La Fantasia」
イタリアのシンフォニックプログレバンド、モンテフェルトロの1st。1992作
まずはこの美しいジャケに心惹かれるが、内容もイメージ通りの繊細なシンフォ作。
のっけから22分の組曲で始まるが、まったく押しつけがましいところがなく
ゆるやかなシンセを中心に、初期GENESISを思わせる幻想性でしっとりと聴かせる。
これだという盛り上がりを期待するのではなく、この夢見心地の世界観に
うっとりと浸れる方にお勧め。ヴォーカルの存在感の薄さもむしろよいのではないか。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・6 夢見度・・9 幻想度・・8
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Barrock 「oxian」
イタリアのシンフォニックバンド、バッロックの2nd。1994作
確か1stは「錬金術師」というタイトルで日本盤が出ていたと思ったが、
今作はジャケがぐっとファンタジックになっていたので、思わず購入。
クラシカルなシンセワークにフルートが絡むイントロからしてなにやら引き込まれる。
イタリア語の女性ヴォーカルも加わってオペラティックに歌いあげ、ストーリー的に
世界観を構築してゆく。録音、演奏のレベルはアマチュアに毛が生えた程度だが、
マイナーなシンフォニック特有の純粋な音楽への愛情が感じられるのがよろしい。
シンフォニック度・・8 スリリング度・・5 イタリア度・・8 幻想度・・8

FINISTERRE PROJECT「HOSTSONATEN」
イタリアのシンフォニックロックバンド、フィニステッレ・プロジェクトの1st。1996作
FINISTERREの方ははジャズロック色などの多様さもあったバンドだか、
今回はジャケットのギュスターブ・モローの絵画が示す通り、
ヨーロピアンなほの暗い情緒をかもしだすしっとり系のシンフォニックロックとなった。
たおやかなフルート、ピアノ、メロトロンといった懐古主義的なシンフォニック性は
メロウなギターフレーズと相まって、耳にしっとりとやさしく響く。
古めかしいだけでなく、メロデイそのものにも魅力があるので、41分の組曲を含め
全体的にリリカルかつ幻想的な叙情美を満喫できる作品となっている。
シンフォニック度・・8 テクニカル度・・3 たおやか情緒度・・9 幻想度・・8


◆フランス、オランダ、スペイン、北欧のお気に入りジャケ

TAI PHONG「Windows」
フランスのメロディックロックバンド、タイ・フォンの2nd。1976作
このバンドの1st「恐るべき静寂」は、日本の武士をデザインした美しいジャケのインパクトとともに、
絶品の叙情とメロディにあふれた名盤として知られるが、2ndとなる本作もまた素晴らしい。
1曲目の“憧憬と失意の季節”でのダイナミックな叙情へのメロディアスな展開美は、
個人的にはタイ・フォンの曲の中でももっとも好きなものだ。センスあるギターワークとシンセが絡み、
そこに哀愁を感じさせるヴォーカルが重なると、プログレうんぬんというよりも絶品のメロディックロックとして
一般の方にも大いに楽しめるはず。しっとりとしたピアノなど、やわらかで繊細な叙情も胸をうつ。
なお、紙ジャケリマスター盤ではこのジャケがエンボス仕様でさらに美しくなっているのも素晴らしい。
メロディアス度・・9 フランス度・・7 叙情美度・・9 幻想度・・8
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TAURUS「Illusions of a Night」
オランダのプログレバンド、タウラスのアルバム。1981作
軽めのリズムにメロディアスなギターフレーズとキャッチーなヴォーカルが乗るサウンドは
KAYAKなどと同様に難解なところのない、ポップなメロディックロックという感触でもある。
バックに鳴るうっすらとしたシンセも控えめで、いかにもオランダらしいソフトなサウンドだ。
鮮やかな蝶の化石のジャケも美しい。正規アルバムとしては本作が唯一の作品だが、
未発集「Works 1976-1981」の出来もいい。メロディアス系愛好者ならオススメできるバンドです。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 キャッチー度・・8 幻想度・・7.5
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CODA 「Sounds of Passion」
オランダのシンフォニックロックバンド、コーダのアルバム。1986作
80年代を代表するシンフォニックロックの傑作。自主制作同然ながらサウンドの質の高さにまず驚かされる。
それから効果音の取り入れ方…風の音やシンセによる効果音、それに語りなどが、有機的に曲の一部として機能している。
タイトル曲である29分の組曲の構成も、インストによる演奏をメインとしながら、起伏に富んでいて、
聴き込むごとにじわじわと世界観が感じ取れ、プログレとしての細やかなこだわりが随所に感じ取れる。
繊細なピアノに、美しいフルートなど、アコースティカルな部分もとても耳に優しい。
おそらくメンバーたちのマニアックな気質と、シンフォニックロックへの愛情が生み出した奇跡的な作品なのだと思う。
淡く美しいジャケのような、決して押しつけがましくない、大仰すぎないセンスもまた良しだ。
シンフォニック度・・8 繊細度・・9 構成度・・9 幻想度・・8.5
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GUALBERTOVericuetos
スペインのアーティスト、グアルベルトの2nd。1976作
スパニッシュプログレの名作の一枚に数えられるアルバム。
全編インストで基本はジャズロック的なサウンドなのだが、
ヴァイオリン入りのクラシカルなアンサンブルが素晴らしく、
即興的でありながらも、優雅で芸術的な構築性も感じられる。
異国的なシタールの音色、シンセと絡むヴァイオリン、フルートにも独自の美学が見える。
30分ほどの短いアルバムながら、たおやかさと音楽の芸術が詰まった作品だ。
メロディアス度・・8 ジャズロック度・・8 クラシカル度・・8 幻想度・・8
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DICE「The Four Riders of the Apocalypse」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、ダイスのアルバム。1978作
「北欧の夢」と題された1st以前に録音されたマテリアルで、 「黙示録の四人の御使い達」というタイトル通り
“戦い”、“疾患”、“貪欲”、“死”というテーマにそった、オールインストの組曲を作り上げている。
北欧らしい叙情を聴かせるギターフレーズと、オルガンやメロトロンなどのシンセワーク
そして軽やかに展開する楽曲構成は、土着的なKAIPAに比べて、YESやELPに近い感触だろうか。
緩急を織りまぜた演奏の中に、涼やかメロディとファンタジックな雰囲気が楽しめる好作だ。
ちなみに、このジャケのせいだろうか、かつてメタルコーナーの中古でジャケ買いした作品です。笑
ドラマティック度・・8 ファンタジック度・・8 北欧度・・8 幻想度・・8
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◆アメリカ、カナダのお気に入り

KANSAS「Leftoverture」
カンサスの4th。邦題は「永遠の序曲」。1976作
1曲目の“Carry On Wayward Son”は誰もが口ずさめるメロディで印象に残る1曲、
そして2曲目の“The Wall”は、泣きのヴァイオリンにギターとシンセが合わさり
感動的に聴かせる、バンド史上でも美しさの点では最高の名曲だ。
ラストの“Magnum Opus”はプログレ的な大曲だが、全体的には明るめのキャッチーさと
ドラマ性とのバランスがとれたアルバムだ。スタジオアルバムでどれか1枚となると、
やはり本作ということになるだろう。この物語的なジャケのイメージもお気に入り。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・8 ドラマティック度・・8 幻想度・・8
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ETHOS「ARDOUR」
アメリカのプログレバンド、イーソスのアルバム。1975作
70年代に2枚のアルバムを残して消えたバンドだが、この1stは美しいジャケもあって、
アメリカンプログレの隠れた逸品として語られてきた。サウンドにマイナーくささはなく、
むしろスケールの大きな叙情性は、ときにKANSASを凌ぐかという気もする。
決して前に出過ぎないがシンセは実にいい仕事をしており、他の各パートもあくまでもアンサンブル重視で、
楽曲をしっかりと構築している。マイナー系にありがちな歌の弱さもなく、たとえばSTARCASTLEのように
YESや有名バンドからのあからさまな影響も感じさせない。あえていえばKING CRIMSON的な硬質感と
叙情との均衡の妙が聴ける。演奏陣の実力の高さとともに、センスの良さとスケールの大きさで聴かせる傑作だ。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 楽曲センス・・8 幻想度・・8
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REALM「The Path」
アメリカのシンフォニックロックバンド、レルムのアルバム。1992作
Key奏者のスティーブ・ヴェイルを中心としたバンドで、
1983年にVAIL名義でデビュー作となる「Time Tales」を発表している。
濃密なキーボードサウンドで聴かせた前作に比べ、こちらはもっと牧歌的で
Yesを思わせるキャッチーなヴォーカルハーモニーが耳に心地よい。
もちろん美しいシンセワークもなかなかのもので、録音面などには素人臭さもあるが、
ジャケのイメージのようにやわらかみのあるメロディアスシンフォニックの好作である。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 ゆったり度・・8 幻想度・・7.5
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MAGELLAN「Hour of Restoration」
アメリカのネオプログレバンド、マジェランの1st。1991作
80年代も終わり、プログレッシブロックが死に絶えたと思われていた90年代初頭に
突如としてアルリカからネオプログレ復興の旗手が現れた。マイク・ヴァーニーによる
その名もMagna Cartaレーベルからデビューしたこのバンドは、偉大な航海者マゼランの名を冠し、
まるでYesの「こわれもの」のジャケにでも飛んでいそうなレトロな宇宙船を描いたジャケからしても、
ワクワクするようなロマンに満ちているではないか。サウンドの方もかつてのプログレッシブ・ロックを
ルーツにしながらも、それをモダンなアレンジと融合、1曲目から14分の大曲を構築させる力作で、
ハードなシンフォニックロックともいうべき作風は、少年のような冒険心ときらびやかさに溢れている。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 ロマン度・・9 総合・・8
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◆現代形シンフォのジャケ

PENDRAGON「Masquerade Overture」
イギリスのシンフォニックロックバンド、ペンドラゴンのアルバム。1996作
1991年の3rd「THE WORLD」以降、よりダイナミックなサウンドで、かつてのポンプロック路線を
現代版のシンフォニックロックへと昇華してきたこのバンド。本作はまさに決定打というべき傑作となった。
ロマンの香りに満ちたジャケットアートと、「仮面舞踏への序曲」という幻想的なタイトルにも胸踊るが、
厳かな混声合唱の入ったイントロから、ゆるやかに楽曲が始まると、壮大なスケール感に叙情の加わった
シンフォニックロックが炸裂。ニック・パレットの流麗なギターメロディと、ニック・バレットの美しいシンセワーク、
繊細さとダイナミズムが交差しながら、盛り上がりでの泣きのメロウさは尋常ではない。
ロマンと幻想の美に彩られた90年代を代表するシンフォニックロック作品の一枚である。
シンフォニック度・・9 繊細度・・9 幻想とロマン度・・10 幻想度・・9
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CLIVE NORAN & OLIVER WAKEMAN「Jabberwocky」
クライブ・ノーラン(ARENA、PENDRAGON)、オリバー・ウェイクマンによるユニット作。1999作
「不思議の国のアリス」に出てくる怪物、「ジャバーウォック」をテーマにしたコンセプト作で、
クライブ、オリバーの他、PENDRAGONやSHADOWLANDの現メンバーなどに加え、
ヴォーカルにはボブ・カトレイ(MAGNUM)、トレイシー・ヒッチングス(LANDMARQ)らが参加。
リックの息子であるオリバー・ウェイクマンは、さすがに親譲りのクラシカルなプレイを聴かせ、
ベテランのクライブとともに、これぞ英国シンフォニックというサウンドを構築している。
ボブ・カトレイとトレイシー・ヒッチングスの男女ヴォーカルもストーリーによくマッチしていて、
ゆるやかに盛り上がる楽曲とともに、ジャケ通りのファンタジックなイメージで壮麗に聴かせてくれる。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 ファンタジック度・・9 幻想度・・8
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CAAMORA 「SHE」
ARENAPENDRAGONで活躍するクライブ・ノーランと、ポーランド人女性歌手、
アグネイスカ・スウィタ嬢を中心にしたユニット、カーモラのアルバム。2008作。
冒険小説「She-洞窟の女王」をコンセプトにした2枚組の大作で、ゲストにPALLASのアラン・リード、
MAGENTAクリスティーナ嬢、その他のメンバーを迎え、4人のVoが物語的に配役を担うという構成だ。
壮麗なシンセワークに美声の女性ヴォーカル、そしてファンタジックなストーリーと、
この手の好きなリスナーにはたまらない要素が揃っているが、楽曲そのものはPALLASなどを思わせる、
しごく正統派のシンフォサウンド。ロックオペラ的な歌ものが主体なこともあり、曲自体の新鮮味は薄いが、
豪華なブックレットを眺めつつ物語を思い浮かべながら楽しめる作品だ。
シンフォニック度・・8 ファンタジック度・・9 物語度・・9 幻想度・・8
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MOSTLY AUTUMN「THE LAST BRIGHT LIGHT」
イギリスのシンフォニックロックバンド、モストリー・オータムの3rd。2001作
1stの時点ではまだイモ臭い印象だったが、この3rdではアレンジに吹っ切れが見られ、
曲の盛り上げ方がより大胆に、全体として引き締まったクオリティに仕上がった。
アコースティック楽器をほどよく取り入れ、民族色も嘘臭くない程度の導入でバランスがよい。
個人的にはこの田舎のあんちゃん的な声質のVoよりは、女性Voの方をメインにして欲しいが、
美しいジャケのイメージも含めて、現代形シンフォニックロックの傑作と言い切れる出来だ。
メロディアス度・・9 シンフォニック度・・8 民族度・・5 幻想度・・8
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COLLAGE「Moonshine」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、コラージュの2nd。1994作
90年代シンフォニックを代表する傑作アルバム。重厚かつシンフォニックな雰囲気に、
東欧らしいうす暗い翳りをともなったサウンドは今でいうオルタナシンフォ系にも通じるものがあり、
ARENA
や、あるいはPORCUPINE TREEあたりのファンにもぜひ聴いて欲しい。
美しいメロディの洪水とメロウなギター、湿りけのある叙情に浸れる一枚です。
ちなみにこのダークな幻想ジャケはポーランドの画家、ベクシンスキーによるもの。
シンフォニック度・・9 メロディアス度・・8 うす暗度・・9 幻想度・・8.5
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TURQUOISE
ポーランドのシンフォニックロックバンド、タークォイスの1st。2001作
ポーランドの女性ヴォーカルシンフォといえば、QUIDAMがまず挙げられるが、
このバンドも非常に有望なニューカマーだ。ファンタジックなジャケ絵に負けず、
音の方もしっとりとしたやわらかみのある作りで、母国語で歌う美声の女性Voをメインに、
メロウなギターと幻想的なKEYが一体となった、女性声シンフォの王道といえるサウンドである。
アコースティックや静寂パートを効果的に設けるなど、アレンジ面でも気を使っていて
デビュー作としはてはクイダムの1stに匹敵するくらいの出来だと思う。
ギターのメロディフレーズにもセンスが感じられ、決してただの歌モノになっていないところが良い。
 メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 女性Vo度・・9 幻想度・・8

Quaterna Requiem「Quasimodo」
ブラジルのシンフォニックロックバンド、カテルナ・レクイエムの2nd。1994作
1st「Velha Gravura」はヴァイオリン、フルート入りのシンフォニックロック力作であったが、
続く本作はも38分の組曲入りのド級のシンフォ大作。イントロの荘厳さからして
ドラマティックなプレリュードというように胸踊る。今作にはヴァイオリン奏者は参加していないが、
まるで南米のPAR LINDHかというようにクラシカルに弾きまくる女性シンセ奏者を中心に、
壮麗きわまりないコテコテのクラシカル・シンフォニックロックを展開。そしてラストの大曲は
グレゴリアンチャントまで入った悶絶級の出来。90年代の南米シンフォを代表する濃密傑作だ。
シンフォニック度・・9 クラシカル度・・8 キーボー度・・9 幻想度・・8


◆日本のプログレはロマンの宝庫

NOVELA魅惑劇
日本のプログレハードロックバンド、ノヴェラの1st。1980作
五十嵐久勝の独特のハイトーンヴォーカルに、平山照継の流麗なギターワーク
後にGERARDを立ち上げる永川敏郎のきらびやかなシンセと、ヴィジュアル的な側面だけでなく、
演奏陣の実力もしっかりとともなっていた。1曲めの“イリュージョン”はまさにロマン派ハードロックたる
彼らの代表曲。“レティシア”に代表されるその物語的な歌詞世界やジャケを含めての美意識は、
プログレというよりも美麗なロックを愛するリスナーと多くの女性ファンを惹きつけた。
大曲である“少年期〜時の崖”などはまさに圧巻のドラマティックなファンタジーロックである。
ともかくもこのバンドがなければ80年代の日本のプログレシーンの盛り上がりはなかったであろう。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 ドラマティック度・・8 幻想度・・8
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GERARD「Empty Lie,Empty Dream/虚実の城」
日本のプログレバンド、ジェラルドの2nd。1985作
NOVELAを脱退した永川敏郎はいよいよ自身のバンドであるGERARDに本腰を入れ始める。
ミレイの絵画をあしらったジャケも美しい本作は、よりインストパートのアンサンブルに
力を入れた作風で、テクニカルさに磨きがかかった楽曲を聴かせてくれる。
永川氏のシンセワークも前作以上に音の厚みを増し、ギターとの絡みで美麗なメロディを響かせる。
ロマンにあふれた世界観が日本のプログレバンドにフィットすることを証明するようなアルバムだ。
今作の後、永川氏はハードロックバンドのEarthshakerに参加、その名をいっそう広めてゆくことになる。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 キーボー度・・8幻想度・・8
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OUTER LIMITS「ペール・ブルーの情景」
日本のシンフォニックロックバンド、アウター・リミッツの3rd。1987作
ヴァイオリン入りの本格シンフォニックロックバンドとして、フランスなどでも
かなりの人気を博した彼らだが、こうして再発を機にぜひ再評価していただきたい。
前作「少年の不思議な角笛」の方がトータルコンセプト作としての人気があるようだが、
自分としては、このアルバムの旧B面を全てついやした大曲“The Scene of Pale Blue”の
ロマンティシズムに強く惹かれた。クラシカルなヴァイオリンとシンセが絡まり、
ゆるやかに盛り上がっていく様はまさに感動的だ。まだアウター未聴の方もぜひ聴いて欲しい。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 ロマンティック度・・9 幻想度・・8
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AIN SOPH「妖精の森」
日本のプログレバンド、アイン・ソフの1st。1980作
幻想的なジャケのこのアルバムは、ジャズロックとしてはメロディアスで適度にシンフォニックでいいですね。
のっけから軽やかに、テクニカルにギターとキーボードが応酬してます。
Bなどはジャズ風の軽やかなピアノタッチがとてもいい感じだし、アコースティックギターの音色といい、
どこか素朴な美しさを感じる曲。やはり最大の聴きどころは18分の「組曲:妖精の森」でしょう。
このバンドにしては異色な、シンフォニックでクラシカルな触感もある美しい大曲。
静寂パートとテクニカルパートを上手く配し、ハープシコードのメロディがどこかイタリアっぽかったり、
プログレファンにとってはなかなか美味しい曲でありますよね。
シンフォニック度・・7 ジャズロック度・・8 実はテクニカル度・・9 幻想度・・8
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MR.SIRIUS 「DIRGE」
日本のシンフォニックロックバンド、ミスター・シリウスの2nd。1990作
彼らの残した2枚のアルバムは、日本シンフォニックロック界の金字塔であるが、
本作の突き抜けたダイナミズムは、シンフォニックという言葉だけではとても言い尽くせない。
大木理沙の伸びやかで表現力に満ちた歌声と、ブラスアレンジを取り入れた分厚いサウンド、
たたみかけるリズムとダイナミックで華麗な楽曲展開は、もはや日本のプログレというイメージを
完全に超越したレベルにある。日本のバンドが最も世界の頂点に接近した作品といえるだろう。
メロディアス度・・9 プログレ度・・8 女性Vo度・・8 幻想度・・8.5
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KENSO「夢の丘」
日本のプログレバンド、ケンソーの5th。
これを聴くまで一番好きなのは「セカンド」でしたが、本作の完成度の前には、これこそが最高傑作と思えます。
初期のマニアのためのプログレから完全に脱却。ここにあるのは普遍的宇宙です。
ジャケットからしてそうで、音にある自然さとさりげなさ、そしてその美しさを見事に表している気がします。
シンフォニック、メロディック、ジャズ、あるいはトラッドといったあらゆる要素が詰め込まれ、
それを空気のように自然に取り入れた演奏は素晴らしく、全篇インストであるのにまったく飽きさせません。
じつに自然な音響のためさらっと聴きながせもしますが、深く聴くとやはり驚愕の演奏と緻密さです。
これが10年前の作品とは…信じられませんな。全プログレファンのマストアイテム。
メロディアス度・・8 プログレ度・・9 演奏・・9 幻想度・・8.5
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平山照継「ノイの城」
テルズ・シンフォニアで活動する平山照継のアルバム。1983作
NOVELAのギタリストだった平山照継がノヴェラからテルシンに活動を移行する時期に、
自身のファンタジックな世界観をコンセプトストーリーにした作品。
女性Voを含め、後のテルシンを感じさせる部分が大きいが、リズム隊がNOVELAなので
音的にはノヴェラのアルバム「最終戦争伝説U」からの流れでも聴ける。
ジャケットや歌詞などには童話的な可愛らしさ、コミカルさもあり、
それらを敬遠するような人には向かないがドリーミーなシンフォ作として良質な作品。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 ファンタジック度・・8 幻想度・・8.5
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STARLESS「銀の翼
日本のプログレ・ハードロックバンド、スターレスの1st。
このバンドを一言で言うと、シンフォニック性のあるハードロックに歌謡曲のキャッチーさを合わせたサウンドで、
歌謡曲的なポップさを堪能できつつ、しかもハードロックでプログレという、意外とありそうでない方向性なのです。
ノヴェラとも少し違う。こちらの方が女性Voの分ロマンティシズムの情感、情念が強いのです。
天野喜孝によるジャケも当時はインパクトが大きかった。CDを手に入れるのに非常に苦労した思い出のアルバムでもあります。
ライブアルバム「UNPUBLISHED LIVE SERECTION」での、より激しい情感を感じさせるジュラの歌声も必聴。
メロディアス度・・8 プログレ度・・6 歌謡HR度・・9 幻想度・・8
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*ジャケ買いしそうな美麗メタルジャケ特集
*ジャケットアートに見る西洋絵画
*大曲、大作、組曲プログレ特集
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