プログレ傑作コンセプトアルバム 30


〜コンセプチュアルなドラマティックプログレ作品を厳選しました by 緑川とうせい


The Who「Tommy」
ザ・フーの1969年作

LP2枚組のロックオペラとして作られた本作は、少年の頃の事件をきっかけに
なにも見えず、聴こえず、話せなくなってしまったトミーという名の若者が
苦難のはてに、やがて心の自由を得るまでを描いた壮大なコンセプト作。
基本は牧歌的な温かみのある古き良きメロディックロックの質感でありながら、
曲間をつなげるプログレ的な構成で、壮大なストーリーを感じさせる作りが見事。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 ドラマティック度・・8 総合・・8
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JETHRO TULL「Thick As A Brick」
ジェスロ・タルの5th。1972年作
邦題は「ジェラルドの汚れなき世界」。20分以上の大曲が2曲というコンセプトアルバム。
アコースティックギターとともに、イアン・アンダーソンのフルートの音色がしっとりと美しい。
案外ヘヴィなベースと時にハードなギターが合わさり、曲はドラマティックに進行してゆく。
ピアノやハモンドも効果的に使われていて、ヴォーカルメロディの叙情性を助長しつつ、
アコギとフルートによるフォーキーなパートでは牧歌的なやわらかみが耳に心地よい。
初期のアルバムよりもずっとプログレしていて、まさにバンドの代表作と呼ぶにふさわしい出来だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 フルート度・・8 総合・・8 
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Genesis「The Lamb Lies Down on Broadway
ジェネシスの6th。1974年作
ストーリーに基づいたCD2枚組のコンセプト作で、ファンの間では意外と評価の分かれるアルバム。
バンド自体も黄金期の終焉を思わせるゴタゴタがあったらしい。ともあれ、シアトリカルなドラマ性とともに
ガブリエルの歌声がもっとも生き生きとして、また、1曲ごとはコンパクトなので、聴きやすくキャッチーな作品と言えるだろう。
じつのところ、このアルバムは歌ものメインの長尺なイメージであまり好きではなかったのだが、
シンセとギターを中心とした楽曲アレンジの細かさに注目すると、プログレ作品としてちゃんと楽しめる。
じっくりと聴き込めば感動的なラストが待っている。やはりこれも名作といってよいですな。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 ドラマティック度・・8 総合・・8.5
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CAMELThe Snow Goose」
キャメルの3rd。1975年作
ポール・ギャリコの小説「白雁」をテーマにした美しきコンセプト作品の大傑作。
雁たちの鳴き声から静かに始まり、ピアノをバックに美しいフルートがメロディを奏で出す。
インストの小曲を連ねて情景を描き出し聴かせてゆくという手法ながら、メロディを大切にした作りなので
難解さはまったく感じられない。アンディ・ラティマーのやわらかなギターメロディも素晴らしい。
2nd「Mirage」のような躍動感は薄いが、その分丁寧にまとめられたアルバムともいえる。これはまさに聴く小説作品だ。
メロディアス度・・9 プログレ度・・7 繊細度・・10 総合・・8.5 

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PINK FLOYD
 「The Wall」
ピンク・フロイドの1979年作
「狂気」のブレイクにより、しだいにバンド内での立場を強めたロジャー・ウォーターズが
自身の考えたコンセプトに基づいて作り上げた2枚組のロックオペラ作品。
薄暗い叙情の好作「Animals」に続くアルバムとしては妥当な内容だと思うが、
初期のフロイドが好きな人間には、評価の微妙なアルバムのようである。
「聴衆との間に存在する壁」という、コンセプトとしては難解なテーマかもしれないが、
曲単位で聴けばむしろメロディアスな小曲の連続として、叙情的なサウンドが楽しめる。
重厚なシリアスさと、アコースティカルな素朴さを同居させた楽曲は、
決して派手なものではないが、ゆるやかなギターフレーズの泣きのメロウさや、
うっすらとしたシンセ、オルガンに包まれて、メッセージ的な歌声がやわらかに響く。
メロウ度・・8 壮大度・・9 コンセプト度・・9 総合・・8.5
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GONG「YOU」
ゴングの5th。1974年作
ラジオ・ノーム・インヴィジブル三部作の完結編で、初期GONGを代表する傑作。
優雅なフルートの音色と、物語を語るようなナレーションで幕を開ける本作は、
サウンド面でのメリハリがいっそうついて、サイケなストーリーものでありながら
音楽作品としての完成度がぐっと高まった。中近東的なテイストで聴かせる
サイケプログレとしてのノリはOZRIC TENTACLESの原型ともいえるだろう。
そして壮大な(?)ストーリーの完結となる10分を超えるラストの2曲は圧巻だ。
プログレ度・・8 サイケ度・・9 ゆる度・・8 総合・・8.5
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LATTE E MIELE「PAPILLON」
イタリアのプログレバンド、ラッテ・エ・ミエーレの2nd。1973年作
ラッテといえば、荘厳な雰囲気のトータル作「受難劇」が有名であるが
ノンフィクション小説をテーマにした7部構成の“組曲:パピヨン”を含む本作は、トータル的な完成度ではむしろ上をゆく。
ELPばりに鳴り響くオルガンの音色にイタリアらしいやわらかでクラシカルなメロディが合わさって、
映画的な語りやアコースティカルなパートを含めて、ドラマティックに楽曲は展開してゆく。
むしろ「受難劇」よりも、このバンド本来のやわらかな繊細さが味わえる傑作だ。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・9 繊細叙情度・・9 総合・・8.5
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Tito Schipa Jr. 「Orfeo9」
イタリアのカンタゥトーレ、ティト・スキッパ・ジュニアの1973年作
ギリシア神話をテーマにしたCD2枚組のロックオペラで、オーケストラ入りの壮麗さに
男女複数のヴォーカルが歌を乗せる、演劇的な展開で聴かせる壮大な作風。
エキセントリックな妖しさと優雅な叙情が交差する楽曲は、メリハリに富んだ構成で
ブラスやストリングスのアレンジを含ませた、イタリアらしいじつに濃密な聴き心地だ。
女性ヴォーカルの歌声も美しく、ときにアシッドフォーク風味の牧歌的な雰囲気もまじえつつ
シアトリカルな世界観を描いてゆく。プログレとして聴くには長尺な感じもあるが、異色の力作であると思う。
ドラマティック度・・9 プログレ度・・7 壮大度・・9 総合・・8
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MAGAMA「.M.D.K.」
フランスのプログレッシブロックバンド、マグマの1973年作
正式なタイトルは「Mekanik Destructiw Kommandoh」。邦題は「呪われし地球人たちへ」
壮大なコンセプトストーリー「トゥーザムターク」の第三楽章で、マグマの最高作といえば本作だろう。
ジャズロックを基盤にしながらも、コバイヤ語による呪術的なヴォーカルと男女コーラスが、
宇宙的で異色の世界観を形成し、脅迫的に盛り上がってゆくそのサウンドには圧倒される。
多くのバンドにも影響を与えたであろう、ブラスの使い方などもサウンドに壮大な効果を与えていて、
いわゆる後のチェンバーロック系バンドのようなクラシカルな質感も有している。
文字にして解説のしようがない音楽であり、その芸術的な音のうねりに触れていただくのが一番だろう。
個人的には代表作である「ライブ」よりも、こちらの方がコンセプトとしての凄さが分かりやすい。
ジャズロック度・・8 アンサンブル度・・8 壮大度・・10 総合・・9
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Rigoni/Schoenherz「Victor」
ドイツのミュージシャン、マニュエル・リゴーニと、リチャード・ショーンヘルツによる作品。1975年作
スペイシーなシンセワークに、ハードめのギター、どこかくぐもったような緊張感を描き出すイントロからただごとでない。
本作は「シンフォニック・ポエム」とも題された壮大なコンセプト作品で、たとえばThe WHOの「トミー」などにも通じる
いわばロックサイドからのプログレへのアプローチである。鳴り響くオルガンにロック的な輪郭のギターワーク、
随所にオーケストラも導入した極端なまでのスケール感は、この時代においては異色の大作と言えるだろう。
ドラマ性の中に英国的なロック風味を含ませつつ、シリアスな空間的な広がりに包み込んだ、4部構成の74分。大変な傑作だ。
ドラマティック度・・9 プログレ度・・7 壮大度・・9 総合・・8.5
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PULSAR「Halloween」
フランスのプログレバンド、ピュルサーの3rd。1977年作
女性Voによる“ダニーボーイ”で幕を開ける本作は、フランスプログレ史上においても5指に入るべき名作。
美しいフルートに幽玄なメロトロンの響き、アコースティックギターのつまびきに包まれて、
ゆったりと曲は進んでゆく、ヘヴィーなギターが加わりダイナミックなリズムとともに、
薄暗い叙情とエクセントリックな夢見心地の狂気のようなものが交差してゆく。
メロウなギターワークとメロトロンの重なりは絶品で、たとえば初期のGENESISの叙情をフランス的な
アートな感性で仕立て上げたという感じか。A、B面をいっぱいに使った全2曲の構成も思い切っているが、
カッチリとした展開というものではなく、むしろ広がりのある幻想的感性を楽しむ作品だと思う。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 幻想度・・9 総合・・8.5
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Klaus Schulze「Dune」
ドイツのシンセ奏者、クラウス・シュルツェの1979年作
70年代シュルツェの作品はどれも素晴らしい名作ばかりであるが、本作もまた然り。
「砂の惑星」の名で知られる小説「デューン」をコンセプトにした作品で、30分のタイトル曲は
想像力をかきたてるSEのような音の連なりから、シンセの重ねによる荘厳で神秘的な
いつものシュルツェサウンドが広がってゆく。ストリングスなどの響きなどクラシカルな要素と
コンセプトのおかげだろうか、よりダイナミックに展開してゆくサウンドがまた素晴らしい。
26分の2曲目にはThe Crazy WorldKingdom Comeのアーサー・ブラウンが参加、
シーケンサーによるリズムパターンとチェロの音色をバックに即興ぎみの歌を聴かせる。
前作「X」に勝るとも劣らぬ傑作といえるだろう。ボーナスに23分のライブテイクを収録。
荘厳度・・9 幻想度・・8 シンセ度・・9 総合・・8.5
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■90年代〜

MARILLION「Brave」
マリリオンの7th。1994年作
前作「Holidays in Eden」でのポップな路線から一転、本作は壮大なコンセプト作となった。
うっすらとしたシンセワークに、メロウなギタートーン、そしてスティーブ・ホガースの
もの悲しくも優しい歌声で聴かせる、しっとりとした叙情サウンドは、プログレというよりは
今で言う薄暗系ロックの先駆けでもあり、たとえば、同時期のDREAM THEATERにおける
テクニカルなドラマ性とは対照的な構築の仕方である。おそらくは後のARENAなどにも
大きな影響を与えたであろう、このモダン志向の叙情ロックのスタイルは、ひとつの金字塔である。
しっとりメロウ度・・9 プログレ度・・7 薄暗叙情度・・9 総合・・8
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CAMEL「HARBOUR OF TEARS」
キャメルの1996年作
「港町コーヴの物語」と題された本作は、アイルランドの歴史における英国からの侵略と
移民へと旅立つ人々たちの悲哀に包まれたストーリーにしたコンセプトアルバム。
美しい女性による歌声から始まり、アイリッシュなメロディを奏でるギターと
うっすらとしたシンセが合わさり、もの悲しくも叙情的なサウンドを描いてゆく。
インスト主体であるが、人間的な情感を感じさせる優しいメロディとともに、
ゆるやかに哀愁のドラマを構築してゆくセンスは絶品である。後期の最高傑作。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 繊細度・・9 総合・・8.5
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HAWKWIND「Alien 4」
イギリスのサイケロック、ホークウインドの1995年作
タイトル通り、いかにもベタなSFストーリーをコンセプトにした作品で、
ヴォーカルにロン・トゥリーを迎えた本作は、適度なモダンさの中にも
往年のダイナミズムとサイケハードとしての浮遊感をしっかり表現している。
うっすらとしたシンセアレンジに、メロディックなギターフレーズが重なって、
スペイシーな世界観とともに、重厚かつドラマティックな聴き心地の力作だ。
ドラマティック度・・8 サイケ度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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IQ「SUBTERRANEA THE CONCERT」
イギリスのシンフォニック・ロックバンド、アイキューのライブアルバム。1999年作
2枚組の大作「SUBTERRANEA」を完全再現したライブ作品(こちらも当然CD2枚組)。
スタジオ版は、「壮大でシンフォニックだがやや長尺感のある作品」という印象だったのだが、こうしてライブでの演奏を聴くと
彼らの実力の確かさがあらためて分かる。演奏はスタジオ版よりもよりダイナミックで、楽曲には重厚なメリハリが感じられる。
ドラムの生音や、引きと押しを明確にしたアンサンブルにはバンドの一体感と表現するべきサウンドの明瞭さがダイレクトに伝わってくる。
ピーター・ニコルズの歌の表現力も素晴らしく、コンセプト作のライブ再現という点ではDREAM THEATERの「METROPOLIS PT2」を思い起こさせる。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・8 ライブ演奏・・8 総合・・・8.5
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SOLARIS「Nostradamus-Book of Prophecies」
ハンガリーのプログレバンド、ソラリスの1999年作
1983年に発表された「火星年代記」は、ハンガリーのプログレシーンにおいて、
EASTとともに同国を代表する存在として知られることとなった名作であるが、
本作は「1990」に続く3作目ということになる。タイトル通り、予言者として知られる
ノストラダムスをテーマにしたコンセプト作で、荘厳なチャントにフルートの音色が重なり
中世を思わせる幻想性と、異国的な雰囲気を漂わせたシンフォニックロックが構築される。
硬質感のあるギターはいかにも東欧的であるが、むしろ本作では男女コーラスの歌声を軸に
包み込むようなシンセワーク、そしてフルートこそが楽曲のイメージを豊かなものにしている。
シンフォニック度・・7 幻想度・・8 荘厳度・・8 総合・・8
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SHAKARY 「ALYA」
スイスのシンフォニックロック、シャカリーの2000年作
元CLEPSYDRAのメンバーを中心としたバンドで、CD2枚組のコンセプト大作。
ヴァイオリンが鳴り響くイントロから、なにやらただごとではない雰囲気だが、
物語的なSEを含ませながら進んでゆくシアトリカルな雰囲気と、90年代以降のポンプロック的な感触が
音質面も含めて高いクオリティで合わさったことで、とても迫力あるサウンドを生み出している。
荘厳なシンセアレンジにメロウなギターがかぶさり、重厚なインストパートを描き出しながら、
この手のシンフォとしては珍しくヴォーカルの表現力も加わって、長尺ながら最後まで飽きさせない。
ダイナミックかつ壮麗なるドラマティック・シンフォニックロックの一大傑作というべき内容だ。
シンフォニック度・・9 ドラマティック度・・10 壮大度・・9 総合・・8.5
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DOUZE ALFONSO「Claude Monet, Vol.1 1883-1889」
フランスのシンフォニックロックバンド、ドゥーゾ・アルフォンソの2001年作
印象派を代表する画家、クロード・モネの生涯をテーマにしたコンセプト作。
ゆるやかなアコーディオンとフランス語の語りで始まる、ロマンティックな美しさに包まれた作品。
クラシカルなピアノ、12弦ギターのアコースティックな響き、ゲストも含めた男女ヴォーカルの歌声、
どれもがしっとりと優雅な雰囲気で、フランスからしか出て来ないやわらかなサウンドを描いている。
ハープやフルートも美しい。エスプリの効いた洒落た味わいが、繊細なシンフォニックと絶妙に融合された傑作だ。
モネの絵画をたっぷりとあしらったブックレットも素晴らしい。2005年には続編となるアルバムを出している
シンフォニック度・・8 フランス度・・9 しっとり繊細度・・9 総合・・8.5
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SPOCK'S BEARD「SNOW」
アメリカのプログレバンド、スポックス・ビアードの6th。2002年作
先天性色素欠乏症のため「SNOW」とあだ名をつけられた男の人生を描いたコンセプトアルム。
2枚組という構成やシリアスなテーマなどからGENESISの「魅惑のプロードウェイ」と比較される通り、
この作品も歌詞が重要なテーマを構築するという、歌もの的な部分が大きい。
もちろんメロトロンなどのキーボードワーク、コーラスなどにより従来の心地よいシンフォニック性も健在だが、
前作あたりに比べるとプログレというよりもギターのエッジが効いた「ロック的」な色合いの曲が目立つ。
我々日本人からすると、歌詞やテーマうんぬんよりも、まずは楽曲という聴き方をしてしまうのであるが、
あまりプログレということを意識しなければ、気持ちよく聴けるサウンドであることは間違いない。
尚、このアルバムを最後にニール・モーズは脱退。ソロ活動を開始する。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 総合・・8
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AFTER CRYING「SHOW」
ハンガリーのシンフォニックロックバンド、アフター・クライングの7th。2003年作
90年代以降の東欧を代表するシリアス系シンフォニックの代表格というべき存在のバンドだが、
今作はメッセージ性の強いコンセプト作となっていて、歌パートの重要性がずいぶん増した傑作。
「巨大帝国アメリカ」への批判を根幹のテーマにしながら、サウンドの方はやはり
彼ららしい重厚なシンフォニックロックで、挿入されるクラシック名曲のメロディもとても効果的だ。
クラシックのみならずファンクやラップ的な要素も世界観を失わない程度に折り込まれており、
その自然なミクスチャーセンスすらも、このバンドのアカデミックな側面を強調するように見事である。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・8 重厚度・・9 総合・・8.5
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LITTLE TRAGEDIES「NEW FAUST」
ロシアのシンフォニックバンド、リトル・トラジェディーズの4作目。2006年作
毎回、「超」がつくほどのド級のシンフォニック作を聴かせてくれるこのバンド、
本作はタイトル通り、ゲーテの「ファウスト」を新解釈したコンセプト作で、
クラシックのメロディや古典の文献からの引用など、気合の入った大がかりなCD2枚組となった。
弾きまくりのキーボード、クラシカルかつ優雅なメロディ、むせび泣くギターに怒濤の盛り上がり。
どこを切っても、手抜きなしの濃密シンフォニックサウンドで大変気合入ってます。
そして、物語的に進んでゆく楽曲構成は、2枚組み作品としての流れも見事にかみ合っていて
まるで壮麗な古典絵巻を聴いているかのよう。血湧き肉躍るメロディの大洪水に顔がにやけっぱなし。
シンフォニック度・・9 プログレ度・・8 ドラマティック度・・10 総合・・9
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SAGA「The Chapters Live」
カナダのプログレハードバンド、サーガのライブアルバム。2005年作
1978年のデビュー作から2003年の「Marathon」まで、断片的に収録されたきた
“Chapter”シリーズ1〜16までの楽曲を、順番に並べて再現したライブアルバム。
繊細かつキャッチーなメロディに、ドラマティックなストーリー性が加わった、
ベテランに作れないやわらかなサウンドはじつに耳心地が良く、
曲ごとに作られた年代が違うにも関わらず、通して聴いてもまったく違和感がない。
25年にも渡る長い長いコンセプトの完成形が楽しめるのというのは、ある意味感動的だ。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 チャプター完成度・・10 総合・・8
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MATTHEW PARMENTERHorror Express
アメリカのプログレバンドDisciplineマテュウ・パーメンターのソロ。2008年作
SF的なストーリーに基づいたコンセプト作で、ピーター・ハミルばりの歌声を中心に、
美しいシンセアやストリングスアレンジなどでシアトリカルに聴かせるサウンド。
繊細なピアノをバックに哀愁ただよう歌声を響かせる、その表現力はなかなか素晴らしく、
プログレとして聴くにはやや物足りないが、叙情的な歌もの系作品としては異色の力作である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 ヴォーカル度・・9 総合・・8
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NATHAN MAHL「EXODUS」
カナダのシンフォニックロックバンド、ネイサン・マールの2008年作
1982年にデビュー、シンセ奏者のギー・ルブランを中心としたキーボードプログレで、
3部作の濃密なシンフォニックロック大作、「HERETIK」シリーズを完成させるなど、コアなファンの間では評価も高い。
本作は5年ぶりとなるアルバムで、タイトル通り、旧約聖書の「出エジプト記」をコンセプトにしている。
のっけからドラマティックな雰囲気で幕を開け、NEAL MORSEばりのキャッチーな歌メロに、
メロディックなギタープレイに重なるヴァイオリンなどはKANSASを思わせるような雰囲気もある。
テクニカルに押すだけではなく、これまでになく余裕のある大人のアンサンブルが加わっていて、
軽妙なノリが耳心地よく、なおかつドラマティックな部分での叙情も味がある。これは見事な傑作。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 軽妙度・・8 総合・・8
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DIRECTION 「VA」
カナダのプログレバンド、ディレクションの4th。2011年作
CD2枚を「V」と「A」サイドに分けた2枚組のコンセプト大作で、ムーグやメロトロンなどを含んだシンセアレンジと
フランス語によるキャッチーな歌メロで聴かせる、前作からの流れでメロディックなサウンド。
曲間ごとににドラマ的なパートを挿入しながら、コンセプトストーリーを進行させてゆくやり方は、
知的な構成を好むカナダのバンドらしい。やわらかな叙情と内的な繊細さも感じさせる楽曲は、
決して押しつけがましさはなく、プログレハード的な明快さもあってとても聴きやすい。
カナダのシンフォニック系としてはトップクラスといえるバンドだと思う。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 ドラマティック度・・8 総合・・8



HOSTSONATEN「The Rime of The Ancient Mariner - Chapter One
イタリアのシンフォニックロック、ホストソナテンの2012年作
イタリアンシンフォ界の重鎮、ファビオ・ズッファンティ率いるこのバンド、「四季」の四部作に続く本作も、
ストーリー的なコンセプトに基づいた作品で10分以上の大曲を3曲含む優美なシンフォニックロック。
美しいシンセワークに繊細なフルートの調べ、優雅なヴァイオリンが鳴り響く、うっとりとするような聴き心地。
一方では、勢いあるギターのフレーズとともにドラマティックに盛り上げる部分もあって、
メリハリの効いた展開が楽しめる。ヴォーカルが入るととたんにGENESISっぽくなるが、
ヨーロピアンなテイストのシンフォが好きな方にはたまらないだろう。ラスト曲には女性Voも登場し、
冒険の旅を思わせるフォルクローレ風味とともに次作への期待も広がる。ロマンにあふれた傑作です。
ドラマティック度・・8 優美度・・9 イタリア度・・9 総合・・8.5
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SYNDONE
La Bella E La Bestia
イタリアのプログレバンド、シンドーネの2012年作
17年ぶりの復活作となった前作に続く復活2作目で、「美女と野獣」をテーマにしたコンセプト作。
オルガンの音色が鳴り響くヴィンテージな感触に、ジャズタッチのピアノなどをまじえながら、
イタリア語によるヴォーカルとともに、ミステリアスかつドラマティックな雰囲気が広がってゆく。
突如舞い込むサックスの響きなど、エキセントリックな迷宮感覚と演劇的な濃密さに彩られた
芸術的なまでの聴き心地が味わえる。ピアノにかぶさる艶やかなチェロの響き、オペラを思わせる
クラシカルな美意識…ある意味、DEVIL DOLLから毒を薄めてより優雅にしたような、素晴らしい傑作。
クラシカル度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・8.5
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RanestRane「A Space Odyssey Part One-Monolith」
イタリアのシンフォニックロックオペラ、ラネストラーネの2013年作
過去2作も「吸血鬼ノスフェラトゥ」、「シャイニング」といった映画をテーマにした大作であったが、
本作もまた、スタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」をコンセプトにした内容になっている。
1曲目の18分を超える大曲は、宇宙を感じさせる神秘的なスケール感を漂わせて始まり、
やわなかなピアノにシンセワークにマイルドなヴォーカル、メロウなギターとともに、
PINK FLOYD的な浮遊感も含んだ雄大なシンフォニック、プログレサウンドが楽しめる。
薄暗い叙情という点では、Marillionなどにも通じる雰囲気もありつつ、随所にゆるやかな盛り上がりを見せる
ドラマティックな流れに浸ることができる。Marillionのスティーブ・ホガース、スティーブ・ロザリーがゲスト参加。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・7 総合・・8
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ARJEN ANTHONY LUCASSEN'S Lost in the New Real
AYREON、STAR ONEのアルイエン・アンソニー・ルカッセンによる2012年作
エイリオンのシリーズに一区切りをつけたルカッセン、2010年のスター・ワン名義以来の作品で
本作はSF映画的なコンセプトとなっている。俳優、ルトガー・ハウアーによるナレーションから、
ストーリー的な流れとともに楽曲は始まってゆく。初期のAYREONにも近いゆるやかな聴き心地で、
キャッチーなヴォーカルメロディとプログレ的なシンセアレンジ、フルートやヴァイオリンなどの
アコースティカルな牧歌性も含みつつ、映画的なドラマ性とともに繊細に世界観を構築してゆく。
ドラマティック度・・8 壮大度・・8 繊細度・・8 総合・・8
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ARS NOVA 「BIOGENESIS PROJECT」
日本のプログレバンド、アルス・ノヴァの2003年作。
シンセ奏者の熊谷桂子を中心に、アルイエン・ルカッセン(AYREON)、ジャンニ・レオーネ(IL BALLETTO DI BRONZO)
クラウディオ・シモネッティ(DAEMONIA)、ルシオ・ファビッリ(PFM)といった豪華なゲストが参加した、
本作はまさにAYREONばりの壮大なSFストーリーが展開される濃密作になっている。
華麗に鳴り響くキーボードに、ギター、ヴァイオリン、そして配役ごとのヴォーカルが「これでもか!」といわんばかりに、

大仰かつシンフォニック
にサウンドを盛り上げてゆく。いかにもエセSF的なナレーションなどにはやや失笑ものだが、
それを上回る音の迫力には、痛快なスペースオペラを見るような濃密さがあり、シンフォニックプログレとしても素晴らしい傑作だ。
シンフォニック度・・9 プログレ度・・8 豪華メンツ度・・9 総合・・8.5
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