ブラジルメタル&プログレ10選
〜2016年リオ・オリンピック開催記念〜


◆メタル系傑作10選

VIPER「Theatre of Fate」
ブラジルのメロディックメタルバンド、ヴァイパーの2nd。1991年作
後にANGRAを結成することになるアンドレ・マトスの在籍したバンドだが、なにせ当時ブラジルのメタルといえば
SEPULTURAくらいしかいなかったわけで、当然ながらこのアルバムでの成功なくしてはANGRAは生まれなかっただろう。
そして繊細で美しいイントロに続く、クラシカルなメロディで疾走するそのサウンドには
HELLOWEENよりもメロディアスで美麗なメタルがあったのかと、大変な衝撃を受けた記憶がある。
演奏技術的には、今のANGRAを基準にするといかにもつたないが、シンフォニックメタルという言葉すら
なかったこの当時に、ここまでのクラシカルな旋律を疾走サウンドに取り込んだバンドはいなかったし、
若々しいアンドレ・マトスのハイトーンも含めて、すべてが日本人好みのスタイルであった。
QUEEN的なコーラスとキャッチーなメロディの“Prelude to Oblivion”、ドラマティックな名曲“Theatre of Fate”、
そしてベートーベンの月光をモチーフにした“Moonlight”まで、まさに全曲捨て曲なしの美旋律が楽しめる名作だ。
メロディアス度・・9 疾走度・・8 クラシカル度・・9 総合・・8.5
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ANGRA「TEMPLE OF THE SHADOWS」
ブラジルのメロディックメタルバンド、アングラの5th。2004年作
前作「RIBIRTH」は、新Voエドゥ・ファラスキの加入も含めて、「傑作たること」を余儀なくされた作品だった。
続く本作は、十字軍の騎士をテーマにしたシリアスなコンセプトアルバムとなっている。
イントロに続く疾走曲はお約束として、3曲め以降の楽曲にこそむしろ聞きどころが満載。
相変わらずのシンフォニックな疾走感に加え、今回はインスト部のアレンジにプログレ的要素が多く、
彼らの知的な部分がサウンドに現れている。キコ・ルーレイロの巧みなギターワークを中心に、
演奏のレベルは実に高く、確かな実力で曲ごとに表現力をそなえたエドゥの歌声も素晴らしい。
楽曲はメタリックなヘヴィなものから、民族色のあるシンフォバラードまで幅が広く、パーカッションや
弦楽器の使用などアレンジも巧みで細やか。アルバム全体に隙がなく名実ともに「傑作」に値する出来だ。
メロディアス度・・8 疾走度・・8 楽曲クオリティ度・・9 総合・・8.5
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AQUARIA「LUXAETERNA」
ブラジルのシンフォニックメタルバンド、アクアリアの2005年作
シンフォニックな美麗さとクラシカルな旋律を乗せて疾走、耳に残るキャッチーな歌メロもよい感じで、
メロスピ、シンフォメタルファンは1曲目でノックアウトだろう。やはり同郷のANGRAを手本にしているのが色濃く出ているが
よりメロディックな部分にこだわっていて、とくにキーボードのアレンジはRHAPSODYなどのシンフォニックメタルからも影響を受けており、
クラシカルで壮麗である。曲展開にも、小曲やインストでのつなぎなどにはプログレッシブなものが感じられ
楽曲を連ねて物語としてのコンセプトを描く構築力は、デビュー作とは思えないほどのクオリティと密度がある。
ヴォーカルの歌声はアンドレ・マトスとエドゥ・ファラスキの中間のような雰囲気で、高音はのびやかだが優しく歌いあげる部分には
優雅なやわらかみがあって女性受けもしそう。疾走、メロディ、音の厚さ、演奏、どれをとっても新人離れしたクオリティの傑作だ。
メロディアス度・・8 疾走度・・8 新人離れ度・・9 総合・・8.5
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EYES OF SHIVA「EYES OF SOUL」
ブラジルのメロディックメタルバンド、アイズ・オブ・シヴァの1st。2004年作
ツインギターの5人組で、イントロからプログレッシブなセンスを覗かせる。
基本はANGRA路線で疾走するメロディアスなメタルだが、曲の節々に南米特有の民族調のアレンジと
ダンサブルな雰囲気が感じられ、その知的なアレンジセンスには若手とは思えない新しさもある。
Voのハイトーンもどこかアンドレ・マトス風で、シンセなどの導入の仕方もANGRA的なのだが、
厳密に言うと、メリハリのついた曲の展開はこちらの方がプログレ的であるだろう。
ラストの素晴らしい疾走曲は同郷のWIZARDSを思い出した。ANGRAのキコ・ルーレイロがゲスト参加。
メロディアス度・・8 疾走度・・8 新人離れ度・・9 総合・・8.5
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WIZARDS「THE KINGDOM」
ブラジルのメロディックメタルバンド、ウィザーズの4th。2002年作
このバンド、実はデビューは95年と古く、ブラジルではVIPER、ANGRAに次ぐ期待のバンドだった。
3rdアルバム以降バンドは解散状態で音沙汰がなかったが、ここにきてなんと復活。
1stの頃からキーボードを効果的に使用した、プログレッシブな部分と、ANGRA的メロディアスさに
疾走感を兼ね揃えていたセンスの良いバンドであった。今作では、1曲目こそパッとしないものの、
徐々に疾走感とツボをつくメロディの曲が続いてゆき、アルバムを聴き終えるころには
「これは傑作だぁ」と彼らを改めて見直すことになる。STRATOVARIOUS的疾走メロディに加え、
このバンドにはメンバー自身も影響されたというQUEEN的なピアノ、ヴォーカルハーモニーが感じられる。
ボーナスの11曲目がまさにそれで、繊細なタッチのピアノから始まり、クイーン的な歌メロ、
そして華麗に疾走という流れは圧巻。1stの裏名曲“ROCK'N ROLL FOREVER”を思い出した。
メロディアス度・・8 疾走度・・8 楽曲・・8 総合・・8
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HIBRIA「The Skull Collectors」
ブラジルのメロパワバンド、ヒブリアの2nd。2008年作
前作は今どき珍しいほどの正統派ピュアメタルサウンドが評判を呼んだが、
今作ではアレンジにメロスピ風のモダンさも取り入れてきて、充実の力作となった。
パワフルな疾走感覚と、しっかりした演奏、歌唱力に支えられたサウンドは
2作目にしてすでに説得力も充分で、JUDAS PRIEST好きのオールドなメタルファンから
DRAGONFORCEなどを好む若者リスナーまで、幅広く楽しめるだろう。
「新世代のピュアメタルはこれだ!」という、強力な勢いに溢れた好作だ。
メロディアス度・・8 疾走度・・8 パワフル度・・8 総合・・8
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SHAMAN「Origns」
ブラジルのメロディックメタルバンド、シャーマンの2010年作
アンドレ・マトスが脱退してから2作目となるアルバムで、史上最初のシャーマンの故郷とされる
シベリアを舞台にしたコンセプト作となっている。のっけからANGRAばりの疾走曲でにんまり。
マトスがいたころのような民族色は薄まっているが、厚みのあるシンフォニックなアレンジで聴かせつつ、
モダンなサウンドの随所に素朴な叙情的パートを配したりと、一本調子ではないプログレッシブな香りと
コンセプチュアルなドラマ性を感じさせる。あるいは「Holy Land」の頃のANGRAに近い感触もあり、
前作以上の力作に仕上がっている。日本盤ボーナスには、X JAPANの“紅”のカヴァーを収録。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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THESSERA「Fooled Eyes」
ブラジルのプログレメタルバンド、セセーラの2006年作
南米のProg Metalの中でも、このバンドはメロディアスさテクニカルさともになかなかの出来。
ヴォーカルの弱さや、レコーディング面の迫力の足らなさを差し引いても、
キーボードの美しいメロディへのこだわりや、楽曲展開の美意識などは充分鑑賞に耐えうる。
あまりメタルメタルしておらず、ときに軽やかなタッチでフュージョン風に聴かせるアレンジは
スペインのSTRAMONIOあたりにも通じる質感で、センスの良さを感じさせる。
きらきらとしたシンフォプログレ的なキーボードワークと、テクニックのあるギターとの掛け合いも
インスト部での大きな聴かせ所になっていて、新鋭バンドとしては相当のクオリティといってよい。
メロディアス度・・8 プログレメタル度・・8 楽曲・・7 総合・・8
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KHALLICE「The Journey」
ブラジルのプログレメタル、カリスの2007年作
シンセを含む5人編成で、DREAM THEATERを思わせる正統派のProgMetal。
いかにもプログレ的なシンセの音色とテクニカルなアンサンブルが合わさり、適度な重厚さとともに
楽曲は知的に構築されてゆく。ラブリエのようなヴォーカルの歌声もなかなかハマっていて、
初期のDTが好きな方にはたまらないだろう。ドラマティックな展開美と確かな演奏力、
遊び心も含んだ聞きどころの多い作品である。これはなかなかの掘り出しものだ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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CARAVELLUS「KNOWLEDGE MACHINE」
ブラジルのシンフォニック・プログレメタル、カラヴェルスの2010年作
シンセを含む5人編成で、テクニカルな展開力で聴かせるプログレッシブなサウンド。
きらびやかなシンセアレンジとモダンなヘヴィさに、随所に軽やかな優雅さも覗かせる作風で、
テクニカルで流麗なギターフレーズや語りの入ったシアトリカルな雰囲気とともに、
SYMPHONY X
KAMELOTSERENITYあたりにも通じるでドラマティックな世界観だ。
ヴォーカルの歌声もなかなか力強く、全体的にマイナー臭さはほとんど感じられない。
ラストの15分の大曲も含めて、シンフォニックで知的な構築センスの備わった高品質な作品です。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 構築センス・・8 総合・・8
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◆プログレ系傑作10選

MARCO ANTONIO ARAUJO「INFLUENCIAS」
ブラジルのアーティスト、マルコ・アントニオ・アラウージョの1st。1982年作
彼が80年代に残した4枚のアルバムは、どれも南米シンフォの傑作に数えられる。
艶やかなアコースティックギターにたおやかなフルート、いかにも南米らしい優しげな叙情に満ちあふれたサウンドで、
エレキギターとシンセが入っても決して押しつけがましくならず、大仰さよりは繊細さと素朴さが音を通して心地よく感じられる。
曲としてのメロディのつなぎ方も自然なアレンジで素晴らしく、アントニオ・アラウージョのコンポーサーとしてのセンスの高さが伺える。
フルートにうっとり、優しくおだやかな叙情シンフォの名作である。
メロディアス度・・9 プログレ度・・7 南米的叙情度・・10 総合・・8.5
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BACAMARTE「DEPOIS DO FIM」
ブラジルのプログレバンド、バカマルテの1983年作
80年代の南米シンフォニックシーンは、SAGRADOとMARCO ANTONIO ARAUJOを除くと、ワールドレベルのバンドはあまりいなかったのだが、
その例外となるのがPabloと本作である。スパニッシュ風の素朴なギターから始まり、美しいシンセが加わってのダイナミズムは筆舌に尽くしがたい素晴らしさ。
南米的なやわらかな叙情と躍動感と、フルートなども入ったフォルクローレ風味のロマンティシズム、そして情熱的な女性ヴォーカルも加わって、
雄大で鮮やかなシンフォニックロックを聴かせる。一方では土臭い人懐こさもあって、そこがえもいわれぬ魅力となっている。必聴傑作。
シンフォニック度・・8 叙情度・・9 南米度・・9 総合・・8.5
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SAGRADO CORACAO DA TERRA
ブラジルのシンフォニックロックバンド、サグラドの1st。1985年作
80年代の南米を代表する世界基準のシンフォニックロックバンド、それがサグラドだ。
リーダーでヴァイオリニストのマルクス・ヴィアナの艶やかなヴァイオリンの音色と
美しいピアノやシンセワーク、そしてポルトガル語によるヴォーカルが合わさって、
「地球の聖なる心」というバンドなのように、大自然に溶け込むような雄大さと、
繊細で優雅な聴き心地のサウンドを構築してゆく。辺境的なマイナー臭さは皆無で、
キャッチーなメジャー性すら感じさせるアレンジセンスと、ときに壮大なサントラのようなスケール感が素晴らしい。
メロディアス度・・9シンフォニック度・・8 雄大度・・9 総合・・8.5
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BLEZQI ZATSAZ (FAVIO RIBEIRO)「RISE AND FALL OF PASSIONAL SANITY」
ブラジルのシンフォニックロックバンド、V MILENIOのキーボード奏者、ファビオ・リベイロのソロ作。1990年作
トレ・ミレニオ自体も濃密かつシアトリカルなシンフォニックサウンドであるが、
本作はそれ以上に大仰かつドラマティックなキーボードシンフォニックが全開。
きらびやかなシンセの重なりでオーケストラルな華麗さを描き出しつつ、怒濤のように盛り上げてゆく様は、
まさにラテン系の熱き魂か。キーボードシンフォとしては世界最高レベルの派手さ。こりゃすごいです。
メロディアス度・・9 シンフォニック度・・10 ドラマティック度・・9 総合・・8.5
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MARCUS VIANA「TRILHAS & TEMAS」
SAGRADOのリーダー、マルクス・ヴィアナのソロアルバム。1992年作
こちらはサントラではなく音楽として純粋な彼のソロで、サグラドの静かな叙情美をそのまま取り出したようなサウンド。
クラシカルで格調高いが、どこか優しさを感じるヴィアナのヴァイオリンがたっぷり堪能できる。室内楽的でありながら、
自然体でシンフォニック。ヴァイオリンはもちろん、彼自ら弾くピアノも実に美しい。サグラドファンも満足の大傑作。
クラシカル度・・9 シンフォニック度・・9 たおやか度・・10 総合・・9
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Quaterna Requiem「Quasimodo」
ブラジルのシンフォニックロックバンド、カテルナ・レクイエムの2nd。1994年作
1st「Velha Gravura」はヴァイオリン、フルート入りのシンフォニックロック力作であったが、
続く本作は、なんと38分の組曲入りというド級のシンフォ大作となった。イントロの荘厳さからしてすでに
ドラマティックなプレリュードというように胸踊る。今作にはヴァイオリン奏者は参加していないが、
まるで南米のPAR LINDHかというようにクラシカルに弾きまくる女性シンセ奏者を中心に、
壮麗きわまりないコテコテのクラシカル・シンフォニックロックを展開。そしてラストの大曲は
グレゴリアンチャントまで入った悶絶級の出来。90年代の南米シンフォを代表する濃密傑作だ。
シンフォニック度・・9 クラシカル度・・8 キーボー度・・9 総合・・9
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DOGMA「TWIN SUNRISE」
ブラジルのシンフォニックロックバンド、ドグマの2nd。1995年作
美しいピアノとシンフォニックなシンセ、そこに叙情的なギターワークが合わさって
まるでSAGRADOを思わせるような雄大かつ繊細なサウンドが現れる。
楽曲は主にインスト中心でありながら、この引き込まれるような器の大きさ…
そして絶品のメロディと叙情美。女性ヴォーカルの歌声もいいアクセントになっている。
90年代の南米シンフォを代表する1枚と言っていい内容だろう。
シンフォニック度・・8 叙情度・・9 繊細度・・9 総合・・8.5
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TEMPUS FUGITTales from a Forgotten World
ブラジルのシンフォニックロックバンド、テンパス・フュージットの1st。1997年作
SAGRADO
の登場以降、90年代の南米にはにわかにシンフォニックバンドが増えていったが、
このバンドもDOGMAQUATERNA REQUIEMと並ぶ質の高いアルバムを残した。
これぞシンフォプログレといわんばかりのシンセワークに、メロウなギターフレーズが重なり、
南米的なやわらかみに包まれて、GENESISを思わせるロマンティシズムが溢れだす。
シンフォニック度・・8 メロウなロマン度・・9 南米度・・8 総合・・8
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SLEEPWALKER SUN
プラジルのハードシンフォニックバンド、スリープウォーカー・サンの2006年作
SAGRADOのマルクス・ヴィアナが参加ということで、てっきり南米シンフォ系かとおもいきや、
男女Voのゴシックメタル風のサウンド。しかもプログレメタリックなリズムの質感もあり、これは良いです。
ヴィアナの艶やかなヴァイオリンはもちろん、キーボーディストのセンスも素晴らしく、
プログレ的な匂いをかもしだしつつ、ときにクラシカルなピアノも奏でています。
そして、そこに女性ヴォーカルが乗ると、楽曲は薄暗い叙情美に満ちあふれて
南米というよりはむしろポーランドあたりの質感を感じます。なかなかの傑作。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 ゴシック度・・8 総合・・8
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UNITRI「Minas Cantos E Quintais」
ブラジルのプログレバンド、ウニトリの2012年作
いわゆる「ミナス派」と呼ばれるアーティストの中でもプログレ寄りのバンド、オ・テルソの
セルジョ・インズがプロデュースするバンドで、優美なストリングスとシンセのアレンジ、、
ポルトガル語のやわらかなヴォーカルとともに、繊細な叙情を描くじつに優しいサウンド。
随所にシンフォニックな美しさとメロウな泣きのギター、アコースティカルな素朴さも含んだ、
いかにも南米らしいシンフォニックロックが楽しめる。とにかくメロディアスな感触は、
MOON SAFARIを南米風にしたというような雰囲気もある。たおやか系の傑作。
メロディック度・・9 プログレ度・・7 繊細な叙情度・・9 総合・・8
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