オーストラリアメタルプログレ
   Metal & Prog in Austraria



オーストラリアのバンドといえば、まず多くの人が思い浮かべるのは、AC/DCだろう。
70年代から活動を続けるこの大ベテランの存在は、欧米の名だたるバンドと同じくらいに世界的に認知され、いまなおリスペクトされている。
プログレの方で有名なのは、おそらくは、Sebastian Hardieくらいで、よほど音楽に詳しくなければ豪州産のバンドを知る機会はあまりない。
ロック界において、これまで辺境の地といった認識であったオーストラリアだが、21世紀に入ると、少しずつその数を増やしてゆく。
1996年にデビューした正統派メタルの、DUNGEONを筆頭に、BLACK MAJESTY、Vanishing Pointといったバンドたちが、
欧米のバンドにも負けない質の高い作品を発表しだすと、やがてその存在は日本にいる我々の知るところとなる。
近年では70年代スタイルのハードロックを聴かせる、WolfmotherやAirbourneといったバンドたちも現れてくるなど、
いまでは音楽シーンにおいて豪州は決してあなどれない国になっている。ここでは、そんなオーストラリアのバンドたちを紹介してみたい。

                                                          緑川 とうせい



◆豪州のメロディックメタル

Black Majesty 「Sands of Time
オーストラリアのメロパワバンド、ブラック・マジェスティの1st。2003年作
このジャケからしてファンタジックなB級メロスピを想像したのだが、
実際にサウンドの方はなかなかまとまったパワフルな疾走メロパワです。
キャッチーな歌メロにツインギターのフレーズはドラマティックで好感が持てるし、
キーボードの味付けもうるさくならない程度で効果的に使われている。
全体的にメロディアスさとパワフルさのバランスが良いのでとても聴きやすく、
並みのバンドのデビュー作以上の質の高さを持っている。
メロディアス度・・8 疾走度・・8 パワフル度・・8 総合・・8
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Black Majesty 「In Your Honour
オーストラリアのメロパワバンド、ブラック・マジェスティの2010年作
2003年にデビューしてから、そのパワフルかつメロディックな正統派のサウンドで、
DUNGEONなき今となっては、名実共に豪州のメロパワシーンを代表するバンドとなった。
4作目となる本作も、メロディアスなツインギターの旋律で力強く疾走する質の高い
サウンドは変わらず。ヴォーカルの歌声にもこれまで以上に堂々たる説得力が備わった。
正直、新鮮なものはこれといってないのだが、どこをきってもメロパワの王道という
その潔いまでのお約束具合に、ついにやにやしてしまう。これを嫌いなメタラーなどはいまい。
メロディアス度・・8 疾走度・・8 正統派メロパワ度・・9 総合・・8
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BLACK MAJESTY 「Stargazer」
オーストラリアのメロパワバンド、ブラック・マジェスティの2012年作
5作目となる本作も、メロディックかつパワフルな、質の高いメタルサウンドを聴かせてくれる。
かつてのジャーマンメタル的なクサめのメロディとハイトーンヴォーカルで、じつに正統派の耳心地。
疾走する曲は多くないのだが、今回はいつになくクサキャッチーなギターフレーズが随所に効いていて、
聴いていて思わずニンマリしてしまう。GAMMA RAYFREEDOM CALLなどがお好きな方もぜひ。
ドラマティック度・・8 パワフル度・・8 クサキャッチー度・・8 総合・・8
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DUNGEON 「ONE STEP BEYOND」
オーストラリアのメロパワバンド、ダンジョンの4th。2004年作
正統派のパワーメタルでありながら、しっかりとメロディアスである点がまず素晴らしい。
昨今のメロスピ系バンドのように疾走に頼ることなく、メタル魂を感じさせるギターリフの重ねと、
歌メロの絶品のメロディを見事に融合させパワフルさとメロディの煽情力の両立を成し遂げている。
ときおり聴かせる泣きのギターソロも効果的で、全体のクオリティにおいても
DREAM EVILなどの欧州産バンドにも決してひけをとらない出来だ。
メロディアス度・・8 疾走度・・7 これぞメロパワ度・・9 総合・・8
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DUNGEON 「RESURRECTION」
オーストラリアのメロディックメタルバンド、ダンジョンの2005年作
1999年発表の2ndをリレコーディングしたアルバムで、サウンド的にもぐっと迫力が増している。、
基本はHELLOWEENタイプのジャーマンスタイルでドコドコ疾走しつつも、ツインギターの絡みがなかなか美しい。
歌メロもけっこう魅力的だし、力強いリフワークと同時に、しっかりとメロディも弾けるギターの実力もかなりのもので、
DREAM EVILなどの欧州のメロパワバンドにもなんら引けをとっていない。楽曲の充実ぶりも素晴らしく、
古き良きスタイルを踏襲しているという点でも、ここ最近の中では貴重なバンドのひとつだろう。
メロディアス度・・8 疾走度・・8 王道ジャーマンスタイル度・・9 総合・・8
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DUNGEON 「Final Chapter」
オーストラリアのメロパワバンド、ダンジョンの5th。2007年作
名実共に豪州最強のメタルバンドである彼らだが、今作を最後に解散の道をたどることになった。
バワフルなリフワークとメロディアスな歌メロはアルバム毎に質を高め、
今作もまさに漢のメロパワというにふさわしい内容で濃密に聴かせてくれる。
メロディアスなツインギターを中心に、新鮮味はないもののそれを上回るピュアな信念と
今どき珍しいほどの正統派の勢いでたたみかけるメタルサウンドが実に爽快だ。
スローな曲においても哀愁を感じさせるメロディは実に日本人好みで、
10分を超えるタイトル曲でのドラマティックな構成にも気合が入っている。
メロディアス度・・8 疾走度・・7 正統派メロパワ度・・9 総合・・8
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LORD 「ASCENDENCE」
オーストラリアのメロバワバンド、ロードのアルバム。2007年作
先に解散したDUNGEONのVo、ロード・ティムを中心としたバンドで、
サウンドの方もそれを受け継ぐような正統派のメロディックメタルスタイル。
ただ、あくまでメイデンや初期ハロウィンスタイルを要求された前バンドから解き放たれたように、
スピーティな疾走曲から、キャッチーでやや軽めのハードロック曲などもあり、
あくまで自由にやりたいことをやってゆきたい、というバンドとしてのおおらかさが感じ取れる。
これまでの漢メタルとしての立ち位置から、メロディにこだわったヨーロピアンな質感をまとったこのバンドを
今後とも注目してゆきたい。日本盤ボーナスにはX JAPANの名曲“Silent Jealousy”を収録。
メロディアス度・・8 疾走度・・7 バワフル度・・7 総合・・8

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LORD Set In Stone」
オーストラリアのメロパワバンド、ロードの2009年作
DUNGEONのロード・ティムを中心に、前作も正統派のメロディックメタルを聴かせてくれたが、
本作もツインギターのメロディでパワフルに疾走する1曲目から、じつに気合が入っている。
キャッチーなミドルテンポ曲などを織りまぜつつ、あくまでメロディアスさにこだわった正統派のスタイルながら、
古き良きメタルの熱さと、現代的な聴き心地を両立させている点も、心憎いアレンジセンスである。
かつてのDUNGEONを、より普遍的なハードロック、メタルへと昇華させた高品質なアルバムだ。ゲストに、
クレイグ・ゴールディ(DIO)、ピート・レスペランス(HAREM SCAREM)、グレン・ドローバー(元MEGADETH)らが参加
メロディアス度・・8 疾走度・・7 パワフル度・・8 総合・・8
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VANISHING POINT 「Embrace the Silence」
オーストラリアのメロディックメタルバンド、ヴァニシング・ポイントの3rd。2005年作
シンフォニックなシンセに適度な疾走感、そしてドラマティックな雰囲気はいわゆるプログレパワー系の質感。
2ndから比べ音の説得力がずいぶんと増して、劇的に盛り上がるわけでもないのだが
じっくりと聴けるだけのクオリティになってきた。楽曲は5〜7分台とやや長めで、
それが13曲も入っているので合計80分近くもあるのだが、ツインギターとシンセによる美しさと
メロディに気を配った作風は、いくぶんのメロディアスハード風味とともに耳疲れしない。
これで決め手になる曲があれば文句なく傑作と言えただろう。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 楽曲・・7 総合・・8
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VANISHING POINT 「THE FOURTH SEASON」
オーストラリアのメロディックメタルバンド、ヴァニシング・ポイントの4th。2007年作
前作は長尺ながらも相当の力作であったが、続く本作も基本的には同路線。
ドラマティックな重厚さと、ときにメロディアスハード的な聴きやすさを併せ持ったサウンドだ。
ときにメタリックに、ときに繊細にと、曲ごとのアレンジもいっそう巧みになり、
4、5分台と前作よりも楽曲がコンパクトになったせいか聴き疲れもしない。
ほのかに薄暗いドラマ性はKAMELOTなどのリスナーにも受けそうだ。
モダンさも取り入れたシンセもほどよく効いていて、堂々たる完成度の作品だ。
メロディアス度・・7 ドラマティック度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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VOYAGER 「UNIVERS」
オーストラリアのメロディックメタルバンド、ヴォイジャーの2nd。2007年作
GとBが女性で、KeyとVoが男性という、珍しい編成の5人組。
前作もProgMetal風味のテクニカルさと、ドラマティックなシンフォニックメタルを合わせた
なかなかクオリティの高いアルバムであったが、本作も音のセンスの良さが素晴らしい。
適度にモダンなシンセアレンジに、知的な展開を聴かせる楽曲と、マイルドなヴォーカルの歌声も
表現力がずっと増している。派手な大仰さや、テクニカルな技巧を見せつけるわけではなく、
自然体の構築性で、耳触りのよいサウンドを作り上げている点が見事。
ややタイプは違うがPAIN OF SALVATIONあたりと同等のセンスを感じる。
知性ある奥深いドラマ性で聴かせる、豪州の隠れた傑作。これは要チェックだ!
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 知的センス度・・9 総合・・8.5
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VOYAGER 「I am the Revolution」
オーストラリアのメロディックメタルバンド、ヴォイジャーの3rd。2009年作
前作「Univers」はプログレッシブなセンスが絶妙の傑作であったが、
本作もシンセ入りのシンフォニックメタルの質感と、知的な展開力で聴かせる
見事なサウンドを構築している。今作ではアレンジによりモダンさが感じられ、
この軽妙なメタリックさはある種、お洒落ですらあるが、生粋のメタルファンからすると
いくんぶん軟弱に感じられるかもしれない。バンド名のような挑戦精神が窺える作品だと思う。
シンフォニック度・・7 知的構築度・・8 モダンアレンジ度・・9 総合・・8
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DIVINE ASCENSION 「As The Truth Appears」
オーストラリアの女性Voシンフォメタル、ディヴァイン・アセンションの2011年作
ツインギターにシンセ、女性Voを含む6人編成で、シンフォニックな音の厚みと
メゾソプラノくらいの女性ヴォーカルの歌声、適度にモダンなアレンジで聴かせるサウンド。
ヨーロッパのバンドのような翳りはあまりなく、ゴシック方面へゆきそうで行かない雰囲気は
どちらかというとアメリカ系のバンドに近い感触。男性コーラスやテクニカルなギターも入り、
全体的な聴き心地は悪くないのだが、楽曲やメロディにこれといった魅力がないのが惜しい。
シンフォニック度・・8 女性Vo度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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Awaken Solace 「In Nightfall's Embrace」
オーストラリアのシンフォニックメタル、アウェイクン・ソラスの2012年作
女性Voに女性ギタリストを擁する5人編成で、美麗なシンセアレンジと
はかなげな女性ヴォーカルの歌声で疾走する、メロスピ風味も含んだフィメール・シンフォニックメタル。
楽曲アレンジや演奏力には垢抜けない野暮ったさがあるのだが、そのつたなさも辺境的に魅力になっていて、
疾走しながらギターがクサメロを奏でるところは、むしろマイナーなクサメタラー受けしそうなサウンドである。
優美な世界観はけっこう好みであるが、コンセプト的な流れがあるのか、全14曲70分はちょっと長い気もするが。
シンフォニック度・・8 むしろクサメタ度・・8 女性Vo度・・8 総合・8
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◆豪州のハードロック系


WOLFMOTHER 「Cosmic Egg」
オーストラリアのハードロックバンド、ウルフマザーの2009年作
前作はツェッペリンやサバスなどを思わせる古き良き感触のHRであったが、
本作もアナログ感たっぷりに聴かせる、70年代スタイルのハードロックが楽しめる。
サイケ的な浮遊感が前に出たサウンドは、むしろストーナーロックに近い感触で
バンドとしてより自然体のユルさというか、ロックとしての自由度が感じられる。
メロディック度・・7 古き良き度・・9 むしろストーナー度・・8 総合・・8
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AIRBOURNE 「No Guts No Glory」
オーストラリアのハードロックバンド、エアボーンの2nd。2010年作
かつてのAC/DCを思わせる勢いあるロックサウンドでデビューしたこのバンド、
2作目となる本作も、古き良きハードロック魂が炸裂の力作だ。
いくぶんダーティでワイルドなヴォーカルに、アナログ感たっぷりのギター、
時代錯誤なまでにロックンロールの熱さを追求したノリノリの1枚である。
メロディアス度・・7 古き良き度・・9 AC/DC度・・9 総合・・8
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◆豪州のプログレメタル系

Hemina 「Synthetic」
オーストラリアのプログレメタル、ヘミナの2012年作
ツインギターにシンセ、女性ベーシストを含む5人編成で、
美しいシンセを盛り込んだ幻想的な構築美で、シンフォニックに聴かせるProgMetal。
ツインギターの奏でるメロディックなギターフレーズも耳心地がよく、
パワフルでないヴォーカルの歌声は、むしろエモのような叙情性もかもしだしている。
いくぶん煮え切らない楽曲の盛り上がりなど、どことなくひと昔前のバンドのような
垢抜けなさもあって、その微妙さも魅力といえば魅力になっている気もする。
10分超の大曲が3曲もあり、中盤はややタダレるのだが、充分にセンスは感じる力作だ。
ドラマティック度・・8 シンフォニック度・・8 構築度・・8 総合・・7.5
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XTREME MEASURES
オーストラリアのプログレメタル、エクストリーム・メジャースの2004年作
G、B、Dr、Keyという4人編成で、インストによるテクニカルなプログレメタルを聴かせる。
スペイなシンセに、メロディックなギター、変拍子リズムが合わさった軽やかなサウンドは、
PLANET Xなどを思わせるメタルフュージョン的な聴き心地。楽曲は4、5分台が中心で、
テクニカル性とメロディアスさが硬質すぎないバランスで構築されている。
嫌いではないのだが、全体的には、スリリングさやこれだというインパクトが足りないか。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 メタルフュージョン度・・8 総合・・7.5
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EVEFEAR 「9 Elements of Inner Vision
オーストラリアのプログレメタル、イヴフィアーの2005年作
シンセを含む5人編成で、適度にヘヴィなギターリフとテクニカルな感触に、
うっすらとしたシンセアレンジとハイトーンヴォーカルで聴かせるサウンド。
随所に正統派メロパワ的な疾走感もありつつ、リズムチェンジを多用したメリハリのある展開は
90年代のマイナー系プログレメタルを思い出すようなイメージ。これというインパクトはないのだが、
随所にメロディックなフックもあって、全体的にもじっくり楽しめる好作であると思う。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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ALARUM 「Natural Causes
オーストラリアのテクニカルメタル、アラルムの2011年作
ギター、ベース&ヴォーカル、ドラムの3人組で、変則リズムを多用したテクニカルなサウンド。
モダンな硬質感とともに、ダミ声入りのヴォーカルで疾走するメタルコア的な激しさもありながら、
むしろ軽やかなフュージョンメタル風味や、ギターシンセなどを使用したメロディアスさも覗かせる。
ヘンタイ一歩手前というくらいの複雑な楽曲と、巧みなフレーズを聴かせるギタリストのセンスも含め、
テクニカルかつクールなアンサンブルはなかなか見事なものだ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 フュージョンメタル度・・7 総合・・8
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◆豪州のゴシック系

CHALICE 「CHRONICLES OF DYSPHORIA」
オーストラリアのゴシックメタルバンド、シャリスの1st。2000年作
美しいヴァイオリンが鳴り響きつつ、全体的に重厚さもあるので、
いかにも正統派ゴシックメタルの耽美な雰囲気が嬉しい。
キーボードも手がけるシラリー嬢の美声は、はかなげでありながらひとつ芯が通った印象で
この手に重要な説得力が歌声に感じられるのが高ポイント。曲調は総じてゆったりめだが、
暗すぎず典雅な雰囲気で、時折ヘヴィなギターパートも現れるなど、意外にメリハリが付いている。
シンフォニック度・・8 ゴシックメタル度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8
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CHALICE 「AUGMENTED」
オーストラリアのゴシックメタルバンド、シャリスの3rd。2003年作
女性Voに女性フルートを擁するこのバンド、1st、2nd共にしっとりとした
耽美派の女性声ゴシックメタルアルバムで、実に琴線に触れるサウンドだった。
今作も基本的には同路線だが、曲のアレンジや演奏がぐっとこなれてきた印象で
前作までややあったB級感が消え、マイルド&アンビエント色のある美しい作品に仕上がっている。
シラリー嬢の美声の歌声は相変わらず素敵で、メロウなギターリフに絡むフルートもなかなか効果的。
デス色の無い、しっとり系ゴシックメタルが聴きたかったらぜひ。
メロディアス度・・8 女性Vo度・・8 しっとり度・・8 総合・・8 
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AVRIGUS
 「THE SECRET KINGDOM」

オーストラリアのゴシックメタルバンド、アブリグスの2001年作
女性Voジュディお姉さんとギター、ベース、ドラム、キーボードをこなすシモン氏の二人組。
のっけから荘厳なキーボード、ミステリアスな女性の歌声、曲が始まるとヘヴィなギター、と
これだけでも音の説得力は抜群。ジャケット内の画像も含めて叙情的な闇を表現している。
曲間に入るSEやシンセの音色は本気系ゴシックのそれで、二人組とは思えない重厚な世界観だ。
ドゥーム色に加え、ある種の教会的な宗教色も感じる崇高さもあり、
女性Voも無論だが、声を重ねた合唱パートなどは身震いするほど美しい。
たとえばELENDなどよりは曲やアルバム的にメリハリが効いていて聴きやすいのも良い。
シンフォニック度・・8 耽美重厚度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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CRYPTAL DARKNESS 「CHAPTER U THE FALLEN」
オーストラリアのゴシックメタルバンド、クリプタル・ダークネスの2nd。2001年作
ゆったりとしたドゥーム系のゴシックサウンドで、MY DYING BRIDEとPARADISE LOSTの中間という感じ。
暗く、沈む込むようなサウンドに乗るメロウなギターの音色にゆるやかなキーボード、
そして元MY DYING BRIDEのメンバーが奏でるもの悲しいヴァイオリンの旋律は絶品。
ヴァイオリンだけでなく彼の弾くピアノ、キーボードもこの悲哀音楽にシンフォニックな味付けをしている。
昨今主流の女性声は入らないが、たまにはこういうダークで濃密な「純野郎ゴシック」もいいかも。
ドゥーミーなヘヴィさがありながら、美しいメロディのおかげで意外と聴きやすい。
シンフォニック度・・8 ドゥームゴシック度・・9 暗黒度・・8 総合・・8
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the Eternal 「kartika」
オーストラリアのゴシックメタルバンド、ジ・エターナルの2010年作
Cryptal DarknessのMark Kelson(Vo/G)率いるバンドで、これが3作目となる。
中期のPARADISE LOSTを思わせる、ややモダンなゴシックメタルサウンドで、
キャッチーかつマイルドなヴォーカルはHIMあたりに通じる聴きやすさがある。
適度なヘヴィさと程良いシンセワークにより音の厚みもしっかりとあって、
ときにメロウなギターフレーズを聴かせながら、ピアノやアコースティックギターなどで
もの悲しい叙情を描き出すところは、さすがに経験値のあるメンバーである。
フィンランド的なメランコリックさがこの手のバンドを好むリスナーにはたまらないだろう。
日本盤はプロモやライブ映像を収録したエンハンズド仕様となっている。
メロディアス度・・8 叙情度・・8 モダンゴシック度・・8 総合・・8
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◆豪州のデス、ブラック系

PSYCROPTIC 「Ob (Servant)」
オーストラリアのテクニカル・デスメタルバンド、サイクロプティックの4th。2008年作
タスマニア出身のバンドで、なかなかクオリティの高いブルータルデスメタルをやっている。
ブラストビートで強烈に疾走しながら、テクニカルな切り返しやブレイクを多用し、
オールドデスメタルの質感と、ある程度のモダンな感覚をバランスよく取り入れてて、
これがなかなか格好よい。ギターリフも往年のバンドをよく研究しているような感触で、
コア系のモダンさに逃げないセンスがよろしい。久々にいいデスメタルが聴けた。
ドラマティック度・・7 ブルータル度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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Claim the Throne 「Triump & Beyond」
オーストラリアのペイガンブラック、クライム・ザ・ソーンの2010年作
女性シンセ奏者を含む5人編成で、シンフォニックなアレンジと勇壮な世界観で聴かせる、
ヴァイキングメタルサウンド。フォーキーなメロディも含んだ美麗なシンセワークに、
クサメロ入りのギター、女性コーラスも入って激しく疾走する様はENSIFERUMなどを思わせる。
楽曲の質も高く、豪州産とは思えない、本格的ヴァイキング/フォークメタルの力作である。
シンフォニック度・・8 疾走度・・8 ヴァイキング度・・8 総合・・8
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Be'Lakor
 「Of Breath & Bone」
オーストラリアのメロデスバンド、ビー'ラカーの2012年作
叙情的なツインギターで聴かせる、ヨーロピアンなスタイルのメロデスサウンド。
随所にプログレッシブなリズムチェンジや展開美を聴かせるセンスもなかなかで、
豪州のバンドだと知らなければ、北欧のメロデスだと思いそうな涼やかな雰囲気である。
ヴォーカルは低音デスヴォイスであるが、全体的に暴虐さよりも叙情が前に出ていて
ギターはリフよりも、むしろメロディアスなフレーズを弾いている方が多いという。
これでもかという、クサめのギターメロに悶絶することしきりで、初期IN FLAMES以上に叙情的。
疾走する激しさはあまりないのだが、とにかくメロメロなメロデ好きっ子は必聴の作品デスね。
メロディアス度・・9 暴虐度・・6 アレンジセンス・・8 総合・・8.5
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Ne Obliviscaris
「Portal of I」
オーストラリアのプログレ・ブラック、ネ・オブリヴィスカリスの2012年作
のっけから激しいブラストビートが炸裂、ツインギターのリフを乗せてたたみかけ
デスヴォイスとノーマルヴォイスか絡む、重厚なサウンドに圧倒される。
美しいヴァイオリンが鳴り響いたり、メロディックな叙情パートも含んだ極端なまでに
緩急のついた楽曲展開と、ミクスチャーメタル的でもあるモダンなセンスとともに、
知的な構築力を見せつける。そういう点では、Between The Buried And Meなどにも
通じる感触もあるかもしれない。全7曲中、6曲が9分以上という大作志向で聴き応え充分。
ドラマティック度・・8 モダンセンス度・・9 プログレブラック度・・8 総合・・8
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◆豪州のプログレ


Rainbow Theatre 「Armada」
オーストラリアのプログレ、レンイボウ・シアターの1975年作
2nd「Fantasy Horseと」の方が有名だが、こちらの1stの方も10分以上の大曲を中心にした
なかなかドラマティックなサウンド。トランペット、トロンボーン、サックスなどの管楽器を大胆に取り入れ、
そこにオルガンが加わると、とても個性的なプログレになる。随所にオペラ風味の歌パートや、
男女の合唱隊も入った壮大さもあり、メリハリのある展開力という点ではむしろ本作の方が上だろう。
ラスト曲などは、ほとんどクラシックばりの美しさ。ブラス入り、オーケストラ・プログレとでもいうべき力作。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 管楽器度・・8 総合・・8
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ALEPH 「SURFACE TENTION」
オーストラリアのプログレ、アレフの1977年作
二人の女性シンセ奏者を含む6人編成で、これが唯一の作品。
ピアノやオルガン、メロトロンを含む美しいシンセワークと、ロック的なギターが絡み、
中性的なヴォーカルが繊細な歌声を乗せる、本格派のシンフォニックロックスタイル。
RENAISSANCEを思わせるようなクラシカルなピアノのセンスもなかなかで、サウンドにB級臭さはほとんどない。
確かな演奏力とともにロックとしてのダイナミズムをしっかり有していて、14分の大曲を構築する力量も含めて
ドラマティックな聴き応えが素晴らしい。70年代オーストラリアのプログレ系作品では最高の1枚といえるだろう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ダイナミック度・・8 総合・・8
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SEBASTIAN HARDIE 「Four Moments」
オーストラリアのプログレバンド、セバスチャン・ハーディーの1st。1975年作
「哀愁の南十字星」と題された本作は、オーストラリアの70年代作品では屈指の叙情傑作だ。
マリオ・ミーロの奏でる甘美なギタートーンと、うっすらとした美しいシンセワークを中心に
じつに繊細なメロディックロックを聴かせる。泣きのメロディがたまらない名曲“Rosanna”をはじめ、
CAMELを思わせるようなゆるやかな叙情美にうっとりだ。2ndWindchaseも同等の傑作。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 泣きの叙情度・・9 総合・・8
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Sebastian Hardie 「Windchase
セバスチャン・ハーディーの2nd。1976作
豪州随一のメロディアス系バンドとして、彼らの残した2枚のアルバムは、世界的に見ても名作の名に値するだろう。
有名なのは1stの方だろうが、本作も負けていないばかりか、内容としてはむしろそれ以上の出来だ。
とくに20分を超えるタイトル曲はマリオ・ミーロの泣きの叙情ギターをふんだんに楽しめるメロディアスな大曲だ。
技術的にはCAMELFOCUSなどには及ばないものの、泣きの哀愁メロディにおいては
引けをとらないばかりか、雄大な自然を感じさせるゆるやかな叙情は何物にも代えがたい。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 泣きの叙情度・・9 総合・・8
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SEBASTIAN HARDIE 「BLUEPRINT」
セバスチャン・ハーディの2012年作
70年代に「哀愁の南十字星」「ウインドチェイス」といった傑作を残したこのバンドであるが
1994年にアメリカのPROGFESTで復活、その後、ライブ音源を出したものの音沙汰がなかったが
まさかのスタジオ新作が登場。マリオ・ミーロのメロウなギターワークを中心に聴かせる、
メロディックなサウンドは、かつてのままで、うっすらとしたシンセアレンジも含めて
古き良きプログレ/シンフォニックロックの感触がある。哀愁を漂わせた大人の叙情と
おおらかな雄大さ、そしてCAMELのアンディ・ラティマーばりの泣きの旋律にうっとりだ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8
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UNITOPIA 「The Garden」
オーストラリアのシンフォニックロック、ユニトピアの2nd。2008年作
基本は前作同様キャッチーでモダンなシンフォニックロックだが、
今作はCD2枚組の大作で、ドラマティックな壮大さが増している。
美しいシンセワークに、かつてのGENESIS的なロマンティシズムを聴かせつつ、
NEAL MORSE風のメロディアスさと楽曲展開のダイナミズムが光る。
CD1には22分、CD2には16分という大曲を収録し、合計100分というボリューム。
バンドとしての自信に溢れた現在形シンフォニックロックの力作だ。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 総合・・8
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Anubis 「Tower of Silence」
オーストラリアのシンフォニックロック、アヌビスの2011年作
ツインギターにシンセを含む6人編成による、重厚なシンフォニックロックサウンド。
いきなり17分の大曲で幕を開け、ツインギターとシンセによる音の厚みと
いくぶんダークな叙情性を含んだ、ARENAあたりに通じる雰囲気である。
ゆったりとした聴き心地なのでどうしても長尺感はあるのだが、メロウな叙情性と
ドラマティックな雰囲気で、PALLASなどのハードシンフォのファンにも楽しめるだろう。
ドラマティック度・・8 メロディック度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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◆豪州の女性Vo/ケルト/トラッド

MARA! 「RUINO VINO」
オーストラリアのトラッドバンド、マーラの1997作
のっけからエキセントリックなマーラ嬢の歌声で幕を開け、硬派なトラッド質感とともに、サックスやブズーキが鳴り響く。
曲のアレンジやリズムにおけるハネ具合はある意味現代的であり、たとえばハンガリーのKOLINDAあたりを
さらに激しくしたという雰囲気もある。東欧のバルカン風味のトラッドサウンドは、愛想はあまりよくないが
アコースティカル音楽としての深みと、異国情緒が気に入れば大いに楽しめるだろう。
アコースティカル度・・9 プログレ度・・7 硬派トラッ度・・8 総合・・8
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Mara! 「Sorella」
マーラの2005年作
1st「RUINO VINO」は本格派のスケール感をもった見事なトラッドサウンドだったが、
本作はのっけから、サックスやクラリネットが軽やかに鳴り響く優雅な作風。
一方ではアコースティカルな土着性もしっかりとあって、静かな緊張感のなか
深みと美しさを備えた
マーラ嬢の歌声が神秘的に響きわたる。
伝統的なトラッドの重みと、現代的なアンサンブルの妙を融合させた力作。
アコースティカル度・・9 プログレ度・・7 トラッ度・・8 総合・・8
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michelle tumes 「listen」
オーストラリア出身の女性Vo、ミッシェル・トゥームスの1st。1998作
美しい女性ヴォーカルを聴かせる絶品のコンテンポラリー・ケルト作品。
雄大なオーケストレーションによるシンフォニックな感触もあって、
メロディアスなケルティック・ポップとしても楽しめるステキな内容だ。
シンフォニック度・・8 ケルティック度・・7 女性Vo度・・9 総合・・8
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Michelle TUMES 「Center Of My Universe」
ミッシェル・トゥームスの2nd。2000作
1st「Listen」でも素晴らしい歌声を聴かせてくれた彼女だが、この2ndも快心の出来。
壮麗なオーケストレーションをバックに、優しい歌声と天上のコーラスがハーモニーを奏で、
シンフォニックな雄大さとともに、聴きやすいメジャー感を両立させているのが見事。
曲におけるシンセなどのアレンジも抜群で、ほのかなケルト風味を織りまぜつつも、
変にコンテンポラリーになりすぎず、決してうす暗くならない陽性の雰囲気が心地よい。
ポツプな感覚でも聴ける、万人受けするシンフォニック・ヒーリング・フィメール作品だ。
シンフォニック度・・8 ケルティック度・・7 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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RUA
オーストラリアの女性Voケルティックユニット、ルアの1st。2001作
女性ヴォーカリストLIZ MADDENとGLORIA MULHALLの二人によるユニットで、
美しいストリングス、ピアノをバックに、彼女たちがしっとりとした歌声を乗せる。
ハープ、パイプ、ホイッスル、フレンチ・ホルン、等の楽器もケルティックにサウンドを彩り、
キーボードも含めたシンフォニックな音の重ねがゆるやかに盛り上げる。
女性ヴォーカル、ケルト音楽好きの方は要チェック。オフィシャルサイトにて試聴できます。
シンフォニック度・・7 ケルティック度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8

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RUA 「DREAM-TELLER」
ルアの2nd。2003作
このジャケを見たらもう…これも買わざるを得んでしょう(笑)内容の方も1s以上に素晴らしい出来。
アコースティックギター、ピアノ、ヴァイオリンをバックに、二人がしっとりとした美声を聴かせてくれる。
たおやかなフルートや、ここぞとばかりに盛り上げるストリングスオーケトラもたまらない。
また、単なるコンテンポラリーケルトではなく、キーボードの使用による音の広がりも感じさせ、
ケルト初心者の女性ヴォーカル好きにも対応。聴いてうっとり、じわじわ…じーんという傑作。
シンフォニック度・・8 ケルティック度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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